2009.07.10

「危険なカーブ放置問う JR西社長在宅起訴」←妥当性が認められない。

◆記事1:尼崎脱線事故、JR西社長を在宅起訴 神戸地検「対策怠る」(NIKKEI NET)(07:00)

107人が死亡した2005年4月のJR福知山線脱線事故で、神戸地検は8日、JR西日本の山崎正夫社長(66)を業務上過失致死傷罪で在宅起訴した。

安全対策の最高責任者の鉄道本部長(常務)時代、事故が起きる可能性を予見できたのに、

現場カーブに新型の自動列車停止装置(ATS)の設置を怠った過失があると判断した。

起訴を受け大阪市北区の本社で記者会見した山崎社長は「会社を円滑に運営するためには辞任すべきだと考えた」と辞意を表明。

後任人事については今後詰めるとした。

鉄道事故を巡って鉄道会社の当時の経営陣が起訴されるのも、現職社長が起訴されるのも極めて異例。

山崎社長はこれまで事故は予見できず過失はないと主張、会見でも「裁判所の判断を仰ぎたい」と述べ、

JR史上最悪の被害となった事故の刑事責任は裁判で争われることになる。


記事2:危険なカーブ放置問う JR西社長在宅起訴--JR福知山線脱線事故 (NIKKEI NET)(07:00)

乗客106人が犠牲になったJR福知山線脱線事故から4年余り。事故をめぐる捜査は8日、

異例の山崎正夫・JR西日本社長(66)の在宅起訴で一つの区切りを迎えた。

多くの人命を預かる公共交通機関ゆえに高い安全性が求められる中、危険を放置したとして

刑事責任を問われることになったトップ。遺族らからは1人だけの起訴に終わったことなどへの不満の声が目立った。

事故当時、自動列車停止装置(ATS)の設置義務はなく、

現場カーブでは脱線事故が起こるまで約60万本の電車が一度の事故もなく通過している。


「カーブ手前に新型ATSが整備されていれば事故は防げた」と指摘した国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(当時)も

「JR西が整備に緊急性があると認識するのは容易でなかった」とした。(注:色文字は引用者による)


◆コメント:事故発生直後の記憶。

この事件は大変良く覚えている。本件起訴とは直接関係ないが、あまりにも鮮明に覚えていることを記す。

日記・ブログでも、何度も取りあげたが、当初ブロガーの間では、マスコミのJR西日本に対する「吊し上げ」があまりにひどく、

JRへの非難よりも、むしろ、マスコミの態度の悪さに非難が集中したことを覚えている。

確かに、一度に106人もの生命が失われた大事故には違いないが、事故が起き直後に明らかだったのは、

平成17年4月25日午前9時18分ごろ、兵庫県尼崎市のJR福知山線塚口-尼崎間で、快速電車が脱線。

マンションに衝突し、乗客106人と運転士が死亡、562人が重軽傷を負った。

という、「事実」だけであり、その「原因」が何か。更にその原因が人的なものだとして、責任の所在はどこにあるのか、

などは、当然のことながら、事故調査委員会の報告を待つべきだった。

ところが、マスコミのJR西日本での態度の悪さは殆どヤクザ並で、最初からJR西日本の幹部を罪人扱いし、

中でも、あまりにも態度の悪いのが読売新聞大阪本社の記者だとわかり、読売新聞大阪社会部長名で謝罪文を掲載したほどだ。

日記に書いた。

2005年05月13日(金) 不適切発言でおわび…読売・大阪本社 ←本当に反省しとるんかい!! ココログ

また、この事故直後から、事故とは全く関係の無い、JR西日本職員が嫌がらせや暴行を受ける事件が多発した。

ひどい例では、他の路線の女性運転手が、一般人に蹴られて、線路に転落しそうになり、

その後、恐怖のあまり暫く電車の運転が出来なくなった、という事実も伝えられたのを覚えている。

これも、日記に書いた。

2005年05月10日(火) ◆JR西乗務員へ嫌がらせ120件 脱線事故後に相次ぐ 心理学的考察 ココログ


◆事故が起きるまで約60万本の電車が一度の事故もなく通過したカーブですよ?予見可能性あるの?

それはさておき、JR西日本の山崎正夫社長は、事故当時、安全対策の最高責任者の鉄道本部長で、

事故が起きる可能性が予見できたのに、事故現場のカーブにATSの設置を怠った、という理由で起訴された。

これ、少し、酷ではなかろうか。事故予見可能性があったというが、記事2に書いてあるとおり、

この事故が起きるまで、約60万本の列車が一度も事故を起こさずに通過しているのである。

これで、「事故を予見出来た」とするのは、やや強引な気がする。

そして、百歩譲って、事故予見可能であったとしても、ATSを設置していなかった責任が、当時の鉄道本部長1人の責任になるのであろうか?

ATSを設置するとしたらJR西日本でしょ?鉄道本部長がポケットマネーで、ATS工事費用を負担するわけでじゃないでしょ?

山崎氏1人だけ起訴という、法的措置は妥当なのだろうか?

この事故の最終報告書は平成19(2007)年6月28日に提出された、

「鉄道事故調査報告書」西日本旅客鉄道株式会社福知山線塚口駅~ 尼崎駅間列車脱線事故である。

PDFで275ページになる。全部を読むことは出来ないがATSの箇所を読んでみた。

3.10.1 同社における曲線速照機能のあるATS整備に関する解析

書類本文でいうと228ページ。PDFでは多分、239ページになると思う。

結論を要約すると次のようになる。

もし、このカーブにATSを付けていたら、事故は防げたかも知れない。けれども、以下、引用。
同社には曲線区間における速度超過による事故の危険性の認識があった可能性が考えられる。

しかし、2.20.2.1 に記述したように、同社が発足した昭和62年4月以降の曲線区間における速度超過による列車脱線事故等は

JR貨物函館線の下り勾配区間における2件の死傷者のない列車脱線事故のみであったことから、

安全推進部長が曲線区間における速度超過による脱線を具体的な危険要素とは認識していなかった旨口述している(2.13.8.4 参照)ように、

同社がその危険性を曲線速照機能の整備を急ぐことが必要な緊急性のあるものと認識することは必ずしも容易ではなかったものと考えられる。

つまり、カーブでの速度超過で事故が起きる可能性は一般論として、JR西日本は認識していたかもしれないが、

それまで同種の事故は2件しか起きておらず、死傷者も出ていなかったから、ただちにATSを設置する必要がある、

と認識することは難しかったであろう、というのだ。

しかも、当時国交省は、ATS設置を義務づけていなかった。文書では230ページ。PDFページでは、241ページ。
3.10.3 国の規制等に関する解析

2.20.2.1 に記述したように、国土交通省鉄道局は、昭和62年4月以降に発生したJR貨物の2件の曲線区間における列車脱線事故について、

同社に対しても、鉄道保安連絡会議において事故の概要、原因、対策等について情報提供するなどしたとしている。

しかし、2.13.8.8 に記述したように、国土交通省鉄道局は、ATSについて「付加的な機能については義務付けているものではない」

としており、曲線速照機能の整備を鉄道事業者に義務付けていなかった。

のである。


◆結論 当時の鉄道本部長だけを起訴することに妥当性は認められない。

新聞記事や、事故報告書を読んで、私なりに結論をまとめると次のようになる。


結果論としては、もし、現場カーブにATS(自動列車停止装置)を設置していたら、この事故は防げたかも知れない。

しかし、事故までに60万本もの列車が一度も事故を起こさずにこのカーブを通過していたこと。

それ以前に、他の鉄道路線で、カーブによる速度超過で脱線して死傷者が出た例が無かったこと。

鉄道会社の監督官庁である国土交通省の鉄道局も、ATSを「付加的な機能」と呼び、「(設置を)義務づけている物ではない」と明言していること。

に鑑み、山崎社長(事故当時鉄道本部長)だけの法的責任を問うべく起訴することに、妥当性は認められない。

以上。

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2009.07.08

「街角景気、6カ月連続改善=「下げ止まり」と判断-内閣府」←毎月書くけど、景気が好転しているわけではありません。

記事:街角景気、6カ月連続改善=「下げ止まり」と判断-内閣府(7月8日16時12分配信 時事通信)

内閣府は8日、6月の景気ウオッチャー調査を発表した。

3カ月前と比べた街角の景況感を示す現状判断DI(指数)は前月比5.5ポイント上昇の42.2と6カ月連続で改善した。

家計、企業、雇用関連すべてのDIが大幅に改善し、景気後退局面入りした2007年11月(38.8)を上回る水準に回復した。

総合判断は前月の「悪化に歯止めがかかりつつある」から「下げ止まっている」に5カ月連続で上方修正された。

家計動向関連は5.2ポイント改善し、42.4に上昇した。省エネ家電購入で付与されるエコポイント制度や

エコカー購入補助などの景気対策効果を指摘する小売店が目立った。

企業動向関連は受注や出荷の下げ止まりの動きが自動車関連以外にも広がり、5.8ポイント上昇の42.9となった。

雇用関連は7.6ポイント上昇の39.9。新規求人数などは依然として少ないが、

これ以上悪化するとの見方が減少したため、指数が改善した。


◆コメント:景気が好転しているのではなく、悪化のスピードが弱まった、ということ。

「街角景気」は俗称で、正式には内閣府の「景気ウォッチャー調査」である。

最近数ヶ月、この統計が発表される度に、同じ事を書く。

だから、読者の中には、

また、その話かよ。何度も言わなくても、分かった、分かった。

と、思っている方が、いらっしゃるかも知れない。しかし、それは、この記事を見たから思い出したのである。

こういことは繰り返し書かないと、人々の記憶に残らない。私が同じテーマを何度も繰り返し取りあげるのは、

そのためである。リマインダー(思い出させる物)としてお考え頂きたい。


メディアは「街角景気」という表現をよく使う。私どもは分かっているからいいが、

政府が正式に発表している統計としては、「景気ウォッチャー調査」である。

知らない人は「街角景気」=「景気ウォッチャー調査」であることが、分からないだろう。

正式の統計の名称を用いるべきだ。


さて、ここが内閣府のホームページである。そこから新着情報を見る。

すると、ありますね。景気ウォッチャー調査(平成21年6月)を開く。

まだ分からない。どうして役所のサイトというのは、奥の方まで、何度もリンクを辿らないと分からないようにしてあるのだろう。

経済統計である。公表資料であって、国家機密ではないのだから、もっと簡単に見られるようにして頂きたいものだ。


話がそれたが、このページの調査の結果 という文字があり、更にその下の、

統計表一覧(公表資料)のリンク先を見る。まだ分からない。

平成21年の「6月」を開くのである。それで初めて、

景気ウォッチャー調査(平成21年6月調査) 平成21年7月8日 にたどり着く。

しかし、見慣れない人は、ここまで来るだけでも大変だろう。

兎に角、次にいよいよ、数字を見ることができる。

調査結果(抜粋)(HTML形式)を見る。

そこで漸く、探していた数字を確認出来るのだ。

6月の現状判断DIは、前月比5.5ポイント上昇の42.2となり、6ヶ月連続で上昇した。

ウソではない。
1月 17.1

2月 19.4

3月 28.4

4月 34.2

5月 36.7

6月 42.2

しかし、私はここ数ヶ月、毎回書いているが、現状判断DIは50がニュートラルなのである。

50を下回っているということは、景気は変わらないまたは、悪くなっている、と考えている人の方が多いのである。

そして、内閣府自身、レポート上に書いている。
また、横ばいを示す50を27か月連続で下回った。

ね? つまり、まだ、景気は悪い。3ヶ月前と比べて、「変わらない」又は、「やや悪くなっている」「悪くなっている」と

考えている人の方が多い、という状態が2年3ヶ月続いているのだ。


白川日銀総裁などが繰り返しのべているが、昨年9月15日、リーマン・ブラザースが破綻してから、

かつて、世界中が経験したことがないほどの勢いで、世界景気は後退したが、その殆ど「フリー・フォール」(自由落下)

とも形容出来るほどの景気悪化のスピードは、やや弱まった、というだけのことである。


◆企業倒産件数過去最多。

政府は、やたらと景況感が「改善した」ことを、折に触れて強調したがるが、勿論選挙対策もあろう。

僭越だが、私がここで示したほど、「景気ウォッチャー調査」を詳しく点検する、一般国民はあまりいない。

景気ウォッチャー調査に関して言えば、街の人々の景況感が「相対的に」改善していること自体は、

「ウソ」ではないから、何とか、

「景気はよくなりつつありますよー。自民党の政策が効果があったんですよ」

という「印象」を有権者の頭の中に刷り込みたいのであろう。


だが、今日は、これも毎月一度、民間調査会社の東京商工リサーチと帝国データバンクが、前月(と今回は今年上半期)

の企業倒産件数を発表する。それに関する記事。
◆倒産、6年ぶり8000件超す=大型倒産で負債4兆円突破-09年上期--東京商工リサーチ(7月8日15時1分配信 時事通信)

東京商工リサーチが8日発表した2009年上半期(1~6月)の全国企業倒産状況(負債額1000万円以上)によると、

倒産件数は前年同期比8.2%増の8169件で、上半期としては03年以来6年ぶりに8000件を上回った

負債総額は47.3%増の4兆6853億円で、5年ぶりに4兆円を突破。商工ローンSFCGや日本綜合地所など、負債100億円を超える大型倒産の増加が目立った。

産業別では景気悪化で需要が急速に減退した製造業が30.5%増の1454件。

市況の悪化が続く不動産業も25.3%増の346件と大きく増えた。

一方、建設業は公共投資の増加もあり0.9%減の2100件となった。
上場企業の倒産は18件で、上半期では02年の22件に次ぐ高水準。東京商工リサーチは

「大企業は資金調達環境が改善しているが、中小企業はこれから正念場。倒産は緩やかな増勢局面に向かう可能性が強まっている」としている。

6月単月の倒産件数は帝国データバンクによれば、過去最多。
◆企業倒産件数が過去最多…6月 帝国データバンク(7月8日22時10分配信 レスポンス)

帝国データバンクが発表した6月の全国企業倒産集計によると、倒産件数は前年同月比21.5%増の1294件となり、

13か月連続で増加した。集計基準を変更した2005年4月以降、倒産件数は過去最多となった

資金繰り難に陥る業者が相次ぎ、建設業の倒産が372件と集計基準変更後で最多。

半導体や自動車関連など、大手メーカーの減産が影響し、製造業の倒産も大幅に増加した。

緊急保証制度の利用が進んでいるものの、中小・零細企業は厳しい資金繰りが続いている。

ご自分で確かめたい方の為にリンクを貼っておく。

【帝国データバンク】

全国企業倒産集計2009年6月報 | 帝国データバンク[TDB]

全国企業倒産集計2009年上半期報 | 帝国データバンク[TDB]



【東京商工リサーチ】

2009年(平成21年)6月度 全国企業倒産状況

2009年(平成21年)上半期(1-6月) 全国企業倒産状況



調査対象、調査方法が、帝国データバンクと東京商工リサーチでは、当然異なるから、倒産件数の絶対値は異なるが、

傾向が全く同一であることが、別の会社によって、示されている。

明日の新聞は、多分、
街角景気、6ヶ月連続改善

と、「大本営発表」をそのままつたえるだろうが、本稿で述べたとおり、それは、

「相対的な問題」であり、今なお、ニュートラルよりも景況感は悪いこと。

企業倒産が6月は過去最悪(帝国データバンク)であり、景気が回復しているのではないこと、

をわすれないで頂きたい。

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