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2005年11月

2005.11.30

「強度偽装問題で参考人質疑」←「誰も反省していない」というものすごさ

 姉歯秀次建築士による耐震強度の偽装問題で、29日、衆議院の国土交通委員会で参考人質疑が行われ、建築確認を行った民間の検査機関の社長が、外部からの情報がき っかけで今回の偽造が見つかったことを初めて明らかにし、「1年前に別の検査機関が姉歯建築士の偽造に気づいたが隠ぺいされたと聞いた」と証言しました。

衆議院の国土交通委員会は29日午後1時半から開かれました。

 このなかで、民間の検査機関「イーホームズ」の藤田東吾社長は、「外部からの情報提供をきっかけに、姉歯建築士が設計した物件を調べた結果、偽造を見つけた」と述べ、偽造発覚の経緯を初めて明らか にしました。

 そのうえで、「情報は構造設計の関係者からのもので、『1年ほど前にある審査機関が姉歯建築士による偽造を認識していたが隠ぺいされた』と聞いた」と述べ、その検査機関について「私自身は確認して いないが、日本ERIだと聞いた」と答えました。

 また、藤田社長は「問題が発覚する前の先月27日に、関係者がマンション販売会社の「ヒューザー」の本社に集まって対策を話し合った際、ヒューザーの小嶋進社長から『公表して正義を貫くことに何の 意味があるのか。それならイーホームズを徹底的にたたく』と言われ、この問題を公表しないよう圧力を受けた」と証言しました。

 これに対してヒューザーの小嶋社長は「公表するまでに、相当程度調べる時間が必要だと言っただけだ。でたらめな確認業務を行なったのに、いきなり無責任なことをやってもらっては困ると言った」と反 論しました。

 また、「イーホームズ」の藤田社長がこのときの経緯について「こちらから乗り込んで事実関係をただそうという意図で行った」と述べると、横に座っていた小嶋社長が「何言っ てんだよ。このやろう」と声を荒らげ、委員長から注意される場面もありました

 一方、建物の多くを建設した熊本県八代市にある木村建設が、姉歯建築士に鉄筋の量を減らすよう指示したとされる問題について、木村建設東京支店の篠塚明元支店長は、「そのようなことを言ったかもし れないが、当然法令を守る範囲内で減らしてほしいと言ったと認識している。何キロ減らせなどと具体的な数字はなかったと思う」と説明しました。

 また、篠塚元支店長自身が、姉歯建築士に架空の請求書を発行させて、会社の金を個人口座に振り込ませるという不正な経理操作をしていたことについて、「自分の営業経費をねん出するためだった。1、 2年前から行っていたが、金額や回数ははっきりしない」と述べました。

 マンションの住民などへの補償についてヒューザーの小嶋社長は、「資金が30億円しかないので、一度に解約に応じることはできない」と述べ、マンションを住民から買い戻すとしても、住宅ローンにつ いては会社と住民が連帯して支払う方法でしか対応できないという考えを示しました。

 また、福岡市にある販売会社「シノケン」の篠原英明社長は、「偽造を見抜く機会はあったと思うしそれを見逃したことは深く反省している。できるかぎり補償し、代金を返還をして誠意を尽くしたい」と 述べました。


◆コメント:こういうのを「万死に値する」というのだ。

 

 本日、衆議院の参考人質疑に現れた奴らは、「悪党」の見本のような連中だった。

 ヒューザーの社長ってのは、ありゃ一体、何だろうね。イーホームズも、木村建設も。

 こういう連中を、日本語では「万死(ばんし)に値する」という。

 一万回死んでも償えないぐらい、悪いことをした、という意味である。


◆参考人と証人

 

 今日、衆議院国土交通委員会で行われたのは、「参考人質疑」であり、「証人喚問」ではない

 証人喚問ならば、「議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律」という法律があり、証人喚問に呼ばれたら、拒むことが出来ない。

 また、「証人」は、はじめに真実を話します、という「宣誓」を行い、従って、嘘をついたら偽証罪に問われる。

 それでは、今日、衆議院は何故、証人喚問にしなかったのかというと、

 国会法その他で定められている、証人喚問を行うまでの手続きが、非常に面倒で、時間がかかってしまうからである。

 今日、「参考人質疑」にしたのは、とりあえず一刻も早く証言を得たいからである。

 「参考人」として呼ぶ方が、手続きが簡単なのである。

 現在は、衆議院規則第85条の2に規程があるが、以前は明文化されていなかったほどである。

 但し、「参考人」は証人と異なり、出頭は任意である。呼ばれても来ても来なくても良いのである。

 今日の参考人質疑で、問題の中心人物のひとり姉歯設計士が来ないで済んだは、そのためである。

 以下は私の想像であり、何の証拠もないが、多分、誰もが想像しているとおり、あのヒューザーの社長に脅迫されているのであろう。

 また、参考人質疑では、嘘を述べて良いわけはないが、証人喚問とことなり、嘘をついても、罰則規定がない。

 今日の参考人質疑において、どいつもこいつも、デタラメを並べたり、他人に責任をなすりつけたり、

 平然と嘘と分かることを言っていたのはこのためである。


◆同じ、「人間」という動物として認めたくない。

 

 地価が馬鹿高い首都圏で(他の地域でもそうだろうが、何せ東京の地価が異常に高いことは世界的に有名である)、

 住宅を購入するということは、大変な決断である。

 多くのサラリーマンにとって、一生のうち、最大で、最初にして最後の「買い物」である。

 人間が家を所有するということは、普通の事なのだから、本来は、現状が望ましい姿ではないが、

 住宅を購入したサラリーマンは、ローンを返済するために、つまり、一家が住む家を守るために辛くても歯を食いしばって働いている。

 今日、参考人として呼ばれた奴らは、そういう勤め人の悲哀を知りながら、騙した。

 理屈を通すならば、本当は、彼らはまだ刑事告発されてもいないのだから、罪人扱いしてはいけないのだが、

 今日の態度を見ると、さすがにそうも言っていられなくなる。

 国会に参考人として呼ばれ、その様子はテレビで全国に放送されているというのに、

 土建屋や検査屋は、お互いに責任をなすりつけ、木村建設の社長は東京支店長に責任をなすりつけた。

 ヒューザーの社長は、日本中の人間が見ているのに、検査会社「イーホームズ」の藤田社長を怒鳴りつけていた。



 要するに、全員、自分が責任から逃れることばかり考えているのはあまりにも明らかであり、被害者のことなど、頭にない。

 欠陥住宅の購入者は、何千万円というローンを組んで住宅を購入したというのに、

 それが欠陥住宅であるがために仮設住宅に引っ越さねばならない。

 プレハブの仮設住宅に住みながら、これから先、一生ローンを返済しなければならない。

 はっきり言って、部屋の広さの割にあまりにも安いマンションというのは、やはりもう少し警戒した方が良かったと思うのだが、

 騙す人間と騙される人間がいたら、まず、騙す奴が悪いに決まっている。



 ヒューザーの社長のあのふてぶてしい顔からは、反省の色は微塵もうかがえない。

 悪魔だ。

 欠陥住宅を買った人々の一生を台無しにしておいて、よくもまあ、いけしゃあしゃあと開き直れるものだ。

 ここまでの悪人になると、もはや人間とは認められない。

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2005.11.29

「探査機はやぶさ:イトカワ岩石採取」←日本から、サンパウロの5㎜のハエを打ち落とす精度だそうです。

◆記事:探査機はやぶさ:イトカワ岩石採取 「最大の山越えた」--JAXAが会見

 

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は26日、探査機「はやぶさ」について、

小惑星イトカワの岩石採取のための一連の指令が出されたことを確認したと発表した。

プロジェクトを率いる川口淳一郎・宇宙科学研究本部教授は「試料(岩石)は採取できたと考えている。一番大きな山は越えた」と述べた。

 JAXAは、はやぶさが取得したデータを解析。20日に続く2度目の着陸が確認された。

 また、岩石採取量を増やすため、残っていた金属弾2発を連続して発射した。

 はやぶさはイトカワから上昇中、姿勢制御に使うガス噴射エンジンに不具合が発生したため、

 26日午後に姿勢を安定させる安全モードに入った。毎日新聞 2005年11月27日 東京朝刊


◆コメント:地上のゴタゴタをしばし忘れて・・・

 

 ここのところ、新聞を読むと、事件、事故、犯罪、不祥事、等々が多すぎて、何から書いて良いか分からない。

 書こうとすると、うんざりします。特にここ1週間ほど、ひどい。

 仕事から疲れて帰ってきて、人間の悪行を取り上げて文章を書くのが、どうしても嫌な時があります。

 今日もそういう状態なので、明るい話題を取り上げました。


◆JAXAのサイトは面白いですよ。

 

 上の記事に出てくるJAXAのサイトを一度見て下さい。

 探査機「はやぶさ」が「イトカワ」からどのような方法を用いてサンプルを採取したのか、

 「タッチダウン」(着地)と題した動画で見ることができる。大変分かりやすい。

 また、「はやぶさ」のいちばん長い日という、この計画の責任者が書かれた一文は、

 やや専門的に詳しいことまで書かれていますけれども、日本有数の頭脳集団が、

 如何に苦心惨憺の末、この偉業(人類史上初めて、小惑星のサンプルを採取すること)を達成したのかが、窺えます(素人が簡単に「分かる」とは言えません)。

 20日、一度目の着陸に失敗した、というか、暫くはやぶさを見失ったときは、一時、「もうダメか」、という感じだったらしいのです。

 ところが、実は、はやぶさが自ら危険を察知して上昇していた、それから、技術者達の懸命の努力の結果、

 25日に再び降下して、結局サンプル採取に成功したというのです。

 現場の人たちのその間の緊張と苦労は並ではなかったようです(くどいけど、私には「ようです」としか書けない)。



 第一回目の着陸の少し前、11月18日の日記でも書きましたが、

 小惑星イトカワは、地球から3億キロ離れたところにある。

 これは、光ですら、到達するのに17分もかかる距離なのですが、3億キロとか言われてもピンときません。

 どこかに分かりやすい説明はないかと思ったら、毎日新聞が上手く説明してくれています。

 3億キロ離れたところにあるイトカワに(その他にも何万個、何十万個という小惑星があるわけです)狙いを定め、 タッチダウンするというのは、

 「東京から2万キロ離れた、つまり地球の丁度裏側のサンパウロを飛んでいる5㎜のハエを打ち落とす」ことに匹敵する精度なのだそうです。

 何だかそれでも話が壮大すぎて、頭の悪い私には良く分からない。



 ただ、これだけは、いえます。

 当たり前なのですが、日本人は、強度を偽った建物を建てて、他人様に売って平気なイカサマ野郎ばかりではない。

 信じられないほど優秀で、世界に誇る知能を持ち、真理の探究に貢献している人々もまた、日本人だ、ということです。

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2005.11.28

「悪者探しは景気悪化招く 耐震偽造問題で武部氏」←感動的なバカさ加減。

◆記事1:悪者探しは景気悪化招く 耐震偽造問題で武部氏

 

 自民党の武部勤幹事長は26日、北海道釧路市で講演し、耐震強度偽造問題に関して

 「悪者探しに終始すると、マンション業界つぶれますよ、ばたばたと。不動産業界も参ってきますよ。

 景気がこれでおかしくなるほどの大きな問題です」と述べた。

 自らが農相当時に牛海綿状脳症(BSE)問題への対処で批判されたことを引き合いに

 「対応を気を付けないといけない。寝られないでしょう、大きい地震が来たら自分のマンションがつぶれるという話ばかりされると」と指摘した。

 また、武部氏は記者団に対し、伊藤公介元国土庁長官が偽造問題発覚前に、

 マンション販売業者「ヒューザー」社長を国土交通省幹部に紹介したことについて

 「事実なら誠に不用意極まりない」と語った。(共同通信) - 11月26日19時6分更新


◆記事2:<自民政調会長>耐震偽造「建築主に全面的責任」TVで強調

 

 自民党の中川秀直政調会長は27日、フジテレビの報道番組で、耐震データ偽造問題について

「どの建設会社やどの構造計算の事務所に設計依頼するかも含め、全面的に建築主に責任がある」との認識を強調した。

 その上で「(建築確認という)公の事務がかかわっており、行政に法律上の責任がどこまで課せられているか検討する」と述べ、

 再発防止に向けて、行政側の責任も追及していく考えを示した。(毎日新聞) - 11月27日19時24分更新


◆記事3:「大記録、見事だ。おめでとう」=小泉首相、朝青龍関に杯授与

 

 小泉純一郎首相は27日午後、福岡市を訪れ、大相撲九州場所で前人未到の7連覇を達成した横綱・朝青龍関の表彰式で土俵に上がり、

 直接内閣総理大臣杯を授与した。

 型通りの表彰状を読み上げた後、首相はアドリブで「新記録、大記録、見事だ。おめでとう」とたたえ、朝青龍関も笑顔を見せた。

 この後、首相は記者団に「歴史に残る名横綱になったんじゃないですか」と絶賛。

 2001年の夏場所での横綱・貴乃花関(現親方)以来の総理大臣杯手渡しに、

 「(あれから)4年半なんだね。あのころ、朝青龍があんなに強くなるとは思ってなかったね」と振り返った。

 ただ、外国人力士の活躍ばかりが目立つことには「もう少し日本人に強くなってもらいたいね」と奮起を促した。(時事通信) - 11月27日21時0分更新


◆コメント:どいつもこいつも・・・・。

 

 武部がバカなのは、日本人の常識であるが、ここまでバカだと、こちらが気絶しそうになる。

 「悪者探しに終始するとマンション業界がつぶれる」ことのほうが、

 「マンションそのものが崩壊して、その住民の生命が失われること」よりも深刻であるらしい。

 これ以上、何も書きたくない。情けない。



 中川政調会長は一昨日日銀の金融政策の件で触れたが、

 日銀が政府の意向に沿わないようなことをするなら、日銀法を改正する、と、中央銀行の独立性を、軽んずる発言をした。

 確かに日銀法4条というのがあって、政府の基本政策と協調するように、と書いてあるのだが、

 政府が何ら有効な景気回復策をとらないから、日銀が苦労しているんじゃないか。

 国が税金の無駄遣いを減らし切れず、その責任はとらず、増税を考えている事のほうが余程問題なのだ。

 量的緩和策を続けろ、といいながら、与党は定率減税の廃止、即ち増税を決めた。

 景気回復をじゃましているのは、お前ら政治家なんだよ。バカ。

 で、その中川が、耐震データ偽造問題は全部民間の建築士の責任だという。

 何のための監督官庁なのだ?

 民間の検査機関が検査をしたというが、その検査機関が、妥当性のある検査を行っているか確かめるのは行政の責任だ。

 だから、究極的には、行政府たる内閣にも大いに責任がある。

 その行政府の長、小泉純一郎内閣総理大臣は、これだけ、世間が大騒ぎになっているときに、わざわざ九州まで飛んで、相撲見物だ。

 小泉政権はバカの集団だ。

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2005.11.27

「バイオリニストは肩が凝る」(鶴我裕子 NHK交響楽団第1バイオリン奏者 著)←面白すぎる。

◆小学生の頃からオーケストラの音楽家に憧れてきた

 

 「崇拝」に近いです。

 オーケストラの音楽にあまりに感動したため、オーケストラを構成するひとりひとりの音楽家は、

 私にとって、「神様」に等しい存在であった。今でもその思いに大きな変わりはない。

 何故か、ソリストにはあまり興味が無かった。

 とにかく、「オーケストラで演奏する音楽家」が。私にはこの世で最も偉大な存在だった。



 当時、自宅のそばの杉並公会堂という汚い、小さい会場で、東京都交響楽団(都響という)や、

 東フィル(東京フィルハーモニー交響楽団)が、ファミリーコンサートをやってくれた。

 500円で聴けた。土日のマチネー(昼間のコンサート)が多かった。

 杉並公会堂は小さい建物だから、コンサートが終わった後、裏側の道で待っていると、

 オーケストラの楽員さん(=神様 for me)が、ぞろぞろと楽屋から出てきて、帰途につく。

 クルマを停めるスペースが十分に無いし、すぐ近くが中央線の荻窪駅なので、神様たちが歩いて駅に向う。



 私は引っ込み思案の気の弱い子供だったが、どういうわけか、この時ばかりはもの凄い行動力を発揮した。

 小さいスケッチブックと、フェルトペンをあらかじめ用意しておく。

 サインをもらうのである。神様という割にはなれなれしいが、理屈ではない。

 そして楽器を持った楽員さんに片っ端から、サインしてください、とねだった。

 トランペット奏者も、コントラバス奏者も、帰りに八百屋で、大根を買って、

 バイオリンケースと一緒に持っている女性の楽員さんもいた(私はそんなことはどうでもよいが、今にして思うと、あの方はすこし、恥ずかしかっただろう。悪いことをした)。

 ただ、私にとっては、大根を持っていようがいまいが、関係ない。

 クラシックの音楽家は今でもカネが欲しくて出来る商売ではない。当時はもっとギャラが少なかっただろう。

 大抵の音楽家は(今から思うと)粗末な身なりをしていた。

 それも、私には、関係が無かった。オーケストラで演奏しているプロの音楽家から、サインが貰える。

 子供の私の胸は喜びではち切れそうであった。



 ときどき、「ついでに」などと言っては失礼なんだけど、指揮者のサインも貰った。

 ある時はコバケン(小林研一郎という、日本のクラシックのガクタイなら知らない人はいない、指揮者)にサインを貰った。

 恐縮するほど丁寧な方だった(音大では学生に厳しいので有名なのだ)。

 そして、何と、故・渡邉暁雄先生にもサインを頂戴した。

 コバケンは芸大の指揮科卒で渡邉暁雄先生の弟子。渡辺先生といったら、なにしろ、岩城宏之や、山本直純が芸大で習ったような方なのだ。

 渡辺先生は子供の私を「演奏会を聴きに来てくださったお客様」として扱ってくださった。

「サインですか?字が下手なのですがよろしいですか?」と。



 ああ。今から思うと、無礼、失礼、無恥、厚顔。恥ずかしい。 



 勿論、私も何十年も生きて、人並みに人の世の醜さを散々味わった。

 だから、ゲージュツカとて、立派な人格の持ち主とは限らないこと、それどころか、嫌な奴も多いこと。

 オーケストラの内部でも時に勢力争いとか、新人イジメなど、醜い人間の営みがあることを知っている。 

 しかし、「憧れ」は理屈ではない。

 その頃、サイン帳にした、小さなスケッチブックは、棺桶まで持ってゆくつもりだ。

 私の唯一、かつ、絶対無二の、永遠の宝物だ。


◆「バイオリニストは肩が凝る」(鶴我裕子 NHK交響楽団第1バイオリン奏者 著)

 

 N響の現役第1バイオリン奏者を30年も務めておられる鶴我さんは、そのような神様の見本のような方だ。

 N響のステージで何百回、お姿を拝見したか分からないが、これほどウィットとユーモアと、

 ロマンチシズムに満ちた文章をお書きになる方とは知らなかった。

 今回紹介するのは、バイオリニストは肩が凝る―鶴我裕子のN響日記だ。

 誤解を恐れずに言うと、これは、あたかも私のために書かれた本ではないかと思うほど、隅から隅まで面白い。

 アマチュア・オーケストラで演奏するような方は勿論、楽器が弾けない人が読んでも、オーケストラに少し興味がある人、

 最近、興味が出てきた人、あんまりクラシックって聴いたことが無いんだけど、という人が読んでも、多分、面白い。



 N響の第1バイオリンというのは、日本のオーケストラバイオリンプレーヤーで一番上手い人たちであると考えてください。

 第1バイオリンはオーケストラの心臓部です。

 そこで30年間もの間、現役プレーヤーとして弾いて来られた鶴我さんは、オーケストラの酸いも甘いも、ウラも表も知り尽くした大ベテランだ。



 若い指揮者が初めてN響を振るときなど、これほど怖い人はいないだろう。

 経験の無い指揮者などよりも、実際に音を出す奏者の方が、殆どの曲に関して、よく知っている。

 若手に限らず、初めてN響を振る指揮者が来たときに、オーケストラが思うのは

「頼むから、せめて(演奏の)邪魔をしないでくれよな」ということだそうだ。

 下手にいじらないで欲しい。そうすりゃ、上手く弾いてやるから、ということだ。

 そういう、オーケストラの音楽家の本音が書かれていて、私には、ちょっと危ないほど面白い。

 この本を読んでいる最中に火災が発生しても、焼死するまで気がつかずに読み続けそうな気がする。


◆一部抜粋(ご容赦!)「譜読みを楽しむ方法ってある?」より

 

 「譜読み」

 知らない曲や新作を、リハーサルの前に家でおさらいすることを「譜読み」といい、オーケストラ人生の大部分は、これでつぶれる。

 「練習」というのは、もう知っている曲のホコリを払ったり、みがきをかけていくことなので、「譜読み」ではない。

 バイオリン・パートの譜読みは特に大変で、いつも細かい音符を弾かされっぱなし、

 そのうえ音域が高いので目立つし、大曲になると50~60ページもある。

 それを、始めの音から手探りで弾けるようにしていくのだ。もうイヤンなっちゃう。おもしろくもナーンともないですよ。

 たとえ、通して弾けるようになったって、それは全体の一部分でしかないので、美しくもカッコよくもナーンともない。

 だから、表紙をめくる前からたいていのプレーヤーは「あーあ」とため息をつく。

 最後のページにたどりつくまで、いったいどのくらいかかるやら。

 そのうえ、こんなヘンな曲、もう2度とやらないかもしれないのに、やれやれ・・・。

 仲間に「譜読みを楽しむ方法ってある?」と聞いても、「ないっ」「あるわけねーだろ」と、返事は決まっている。

 そうだよな。どうして無理に楽しもうとするんだろう。例の「ポジティヴ思考」ってやつね。

 あれは二重に自分を疲れさせないだろうか。「笑う介護」とか、「おいしいダイエット」とか。

 友よ(オー・フロインデ)、おもしろくなければ、「おもろなーい」とわめくべし(ニヒト・ディーゼテーネ)。



 で、だいぶ前から、私の譜読みは、以下のスタイルに落ちつきました。

 まず、近所の公園をひと回りして、よその犬などをなでて帰り、おいしいお茶を飲む。

 次に自室のタタミベッドの上にコタツをセットしてスイッチを入れ、上にバイオリン・ケースを置いて楽譜をたてかける。

 むこうのカベにあるテレビをオンにする。テレビは相撲が一番都合がいいけれど、

 アニメ「ルパン三世」や、ワイドショーでも可。音はしぼってコタツに足をつっ込み、うしろのボードにもたれて楽器をアゴにはさむ。

 大声で「あ~あ」と言ってから、最後のページの始めの音から、切りくずしていくのだ。

 フレーズも速さも無視する。とにかく、その音に指がいくようになったら、ひとつ前のページへ。

 途中、相撲が時間いっぱいになったら、弓を持ったまま口をあけて取組を見る。

 そうやって2時間もたつと、アラ不ふしぎ、表紙が見えてくるではないか。

 もちろん、まだ弾けちゃいませんよ。でも、きょうはこれでいいのだ。

 「1日の苦労は1日にて足れり」と、イエス様もおっしゃった。

 目は疲れたけど心は疲れていないし、筋肉もまあまあだ。立派な音をたてていないので、近所迷惑にもならない。

 おまけに相撲の勝敗まで知っている。

 え?楽屋でサインをもらう気がなくなった?そうでしょ。ウラなんて、こんなもんです。美化するのはやめましょう。


◆コメント:ハハハハハ・・・・

 

 これは、読む人の音楽的体験によって随分受け取り方が違うでしょうね。

 真面目な方は、「なんたる怠惰な」と思われるでしょうが、違うんですねえ。

 まず、譜読みと言っても、音楽家は子供の頃からソルフェージュといって、楽譜を読む訓練をしているし、

 絶対音感があるから、譜面を見れば、楽器で音を出さなくても、

 自分のパートが出す音(メロディーのこともあるし、タタタタタ・・・という「刻み」の時もある)は、ほぼ完全に頭の中で鳴らせるのです。

 音を出してみなくてはどんな曲か分からないというような人は素人なら構わないけど、プロには絶対になれません。

 ただ、音は分かっても、その通りの音を自分の楽器で出すためには、バイオリンならどの指でどの弦を押さえるか。

 この音では、右手の弓の速さはどの程度にするか。というような「動作記憶」にしなければならない。

 それが面倒くさいのです。



 これは、しかし、みんないうのです。

 私のような素人が譜読みを面倒だと感じるのは、才能がないから当たり前だけど、散々訓練を積んだプロでも面倒なのね。

 以前、ピアニストの清水和音(しみずかずね)氏が、このひとは4歳でショパンの「幻想即興曲」を弾いたと言うほどの天才なのに、

 やはり、譜読みはいやだなあ、と言っていましたね。

 もう亡くなったけど、20世紀最高のピアニストの一人に、アルトゥール・ルービンシュタインというお爺さんがいました。

 冗談ばかりいうひとですが、これほどの巨匠でも、同じ事を言う。

 「年を取ると言うことは素晴らしい。「譜読み」をしなくていい」。

 それほど、面倒なものなんですね。

 だから鶴我さんも「あーあ」と言ってからじゃないと始められない。


◆50ページの譜読みを2時間・・・ね。

 

 そうは言っても、さすがに鶴我さんは一流のプロであることがわかります。

 上の文章を読むと、要するにバイオリンパート50ページの譜読みを2時間で一通り済ませているわけです。

 素人と比べるのは失礼というものだが、アマチュアなら、一ヶ月はかかるでしょう。

 どうして鶴我さんが2時間で出来るか?

 基礎を固めた上で身につけた高度なテクニックを学生の頃に習得しているからです。

 そのために、子供の頃から毎日何時間もの、累計にしたらもの凄い量の練習をして来たからです。

 鶴我さんは、バイオリン始めたのが何と10歳なんです。

 今じゃ考えられない。3歳か4歳で始めるのが普通。

 しかも鶴我さんのご出身は山形。東京のように有名な大先生がいたわけではない。

 芸大合格までの苦労はもの凄かったと思います。



 音大に入るには、バイオリンだけ弾ければいい、というわけではないのです。

 「聴音」といって、ピアノで弾いた旋律をそのまま楽譜に書き取る。大抵2回しか弾かない。

 聴き取れなかったり、忘れたら、アウト。しかも単旋律ではない。

 バイオリンはどうなんだろ。4声の聴音かも。つまり4つのパートを同時に聴き取ってその場で譜面にする。

 少なくとも作曲科や、指揮科の試験では4声が当たり前。

「ソルフェージュ」。読譜力の試験。楽譜を渡されて、その場で歌う。

 途中で転調していたり、音部記号がト音記号から、ハ音記号とかヘ音記号に変ったり、わざと意地悪に作られている。

 「楽典」。和声進行とか、楽譜を見て調性を書けとか。

 調性なんて簡単そうだが、2つの調性のどちらにも取れそうなのがある。それを、前後から推論して特定せよ、という。

「ピアノ」。音大に入る人は、何の楽器を専攻していても(声楽でも)、ソナチネ(ソナタの簡単な奴)程度は弾けなければいけない。

 バイエルでOKというわけにはいきません。たとえ、打楽器専攻でもね。


◆とにかく面白いです。おすすめCD

 

 きりがないから、この辺にします。

 折角だからおすすめCDですが、鶴我さんはオーケストラプレーヤーだから、ソロレコーディングはしていないです。

 私は昨年10月8日に、ベルリンフィルのコンサートマスター、安永徹さんが如何にすごいかと言う話をかきましたが、

 鶴我さんが同じ事を書いている。

 

「コンマス(コンサートマスター)と言えば、何がすごいって、日本人がベルリン・フィルのコンマスになったぐらいすごいことはない。」

 プロから見てもすごいんですよ。

 その安永さんが奥さんのピアニスト、市野あゆみさんと録音しているCDが何枚もあります。

 デュオ・コンサーって、これ、4週間か。

 品切れじゃないと良いのですが。

 私はバイオリンのソロっていろんな人の聴きましたが、安永さんが一番好きです。

 もの凄い美音。溢れる音楽性。

 冒頭のコレルリのソナタなんて、地味な曲だと思っていたけれど、

 安永さんの手にかかると、生まれ変わったように美しい。これぞ、芸術家の真骨頂。本当に名人。

 誰も、なかなか分かってくれないので悔しいのだけど、安永さんがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターを22年も務めているということは、

 間違いなく、日本の誇りなんです。これだけでも、日本人で良かったと思います。

 このCDに収められているのは、間違いなく、超一流の音楽家による、超一流の演奏です。

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2005.11.26

「消費者物価マイナス脱す 量的緩和、解除へ一歩」←日銀の「解除条件」を良く読め。

◆記事1:消費者物価マイナス脱す 量的緩和、解除へ一歩(共同通信) - 11月25日13時19分更新

 

 総務省が25日発表した10月の全国消費者物価指数(2000年=100、生鮮食品を除く)は、原油高などを反映して98・2と前年同月と同じ水準に並び、上昇率は0・0%と5カ月ぶりにマイナスを脱した。

 同指数は11月にもプラス転換することが見込まれ、長らく続いたデフレからの脱却が現実味を帯びてきた。日銀が続けている量的金融緩和策の解除にも一歩近づいた。

 日銀はこれまで量的緩和策について物価動向など条件が整い次第、政策変更に踏み切る意向を示しているが、政府・与党幹部は、日銀の早期解除をけん制する発言を繰り返している。

 25日午前も、安倍晋三官房長官らが「消費者物価のデフレ基調は依然として継続している」などと指摘した。

 日銀は量的緩和策解除の重要な要件のひとつとして、消費者物価の前年比上昇率が「数カ月ならして0%以上」になることを挙げており、今回の指数に注目が集まっていた。


◆記事2:<全国消費者物価指数>総合指数、5カ月ぶりマイナス圏脱出(毎日新聞) - 11月25日16時47分更新

 

 総務省が25日発表した10月の全国消費者物価指数(00年=100)によると、価格変動の激しい生鮮食品を除く総合指数は前年同月比横ばいの98.2となり、5カ月ぶりにマイナス圏から脱した。(中略)

 一方、同時発表された11月の東京都区部の同指数(中旬速報値)は97.0で、同0.3%の下落で、99年10月以降、6年2カ月連続で前年水準を下回った。


◆記事3:<中川政調会長>量的緩和解除目指す日銀の動きをけん制(毎日新聞) - 11月13日22時7分更新

 

 自民党の中川政調会長は13日、日銀による金融量的緩和政策の解除について「日銀は政策目標での独立性はなく、政権と合致させる責任がある」と指摘。

 そのうえで「どうしたらデフレを脱却できるかを考えて量的緩和の議論をすべきだ」と述べ、量的緩和解除を目指す動きをけん制した。


◆記事4(日本銀行のサイト):金融政策の透明性の強化について(抜粋)[2003年10月10日 日本銀行]

 

 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、

 金融政策の透明性を強化する観点から、以下の施策を行うことを決定した(全員一致)。

 1.経済・物価情勢に関する日本銀行の判断についての説明の充実 (略)

 2.量的緩和政策継続のコミットメントの明確化

 日本銀行は、金融政策面から日本経済の持続的な経済成長のための基盤を整備するため、

 消費者物価指数(全国、除く生鮮食品。以下略)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで、量的緩和政策を 継続することを約束している。

 日本銀行としては、このコミットメントについては以下のように考えている。

 第1に、直近公表の消費者物価指数の前年比上昇率が、単月でゼロ%以上となるだけでなく、

 基調的な動きとしてゼロ%以上であると判断できることが必要である(具体的には数か月均してみて確認する)。

 第2に、消費者物価指数の前年比上昇率が、先行き再びマイナスとなると見込まれないことが必要である。

 この点は、「展望レポート」における記述や政策委員の見通し等により、明らかにしていくこととする。具体的には、政策委員の多くが、見通し期間において、消費者物価指数の前年比上昇率がゼロ%を超える見通しを有していることが必要である。

 こうした条件は必要条件であって、これが満たされたとしても、経済・物価情勢によっては、量的緩和政策を継続することが適当であると判断する場合も考えられる。


◆解説:何を騒いでいるのか?

 

 11月13日に自民党の中川政調会長が、日銀に対して恫喝的な発言をしました。

 要するに、今の金融緩和政策、ゼロ金利政策を変更したら、承知しないぞ、というのです。

 何故、そんなに怒るかというと、日銀が金融政策を変えて、少しでも金利をプラスにしたら、景気が失速するかも知れない、株が暴落する。

 即ち、政権政党である自民党が責任を問われ、次の選挙でヤバい。という、党利党略から出た発言です。

 こんな奴、放っておけばいいんです。バカですから。


◆金融政策

 

 日銀は2001年3月から、金融政策の目標を変えました。

 中学の社会科の授業で「オープン・マーケット・オペレーション」(公開市場操作)というのを習ったと思います。

 これは、市中銀行同士がお金の貸し借りをする短期金利市場においてオーバーナイト金利というのがあるのです。

 たった、1日だけ貸し借りをして翌日には返す。一晩だから、オーバーナイト金利といいます。

 金融関係者はしばしば「O/N(金利)」と書きます。

 伝統的な日銀の金融政策は毎日のO/N金利を見て、手形を買って資金を放出したり、逆に手形を売って、資金を市場から吸収することでした。

 これをオープン・マーケット・オペレーションといいました。それは今も同じですが、目標が違うのです。以前は金利水準。今は量です。


◆量的緩和

 

 デフレがあまりにも、長く続くので、日銀は2001年3月19日に、金融政策の目標を、金利水準ではなくて、

 市中銀行(東京三菱とか、みずほとか、ですよ)が日銀に置いている当座預金(日銀当座預金)の金額に変更したのです。

 方法としては、公開市場操作で市場に資金をジャブジャブと供給します。結果的に日銀当座預金が増える。

 日銀当座預金は今、30兆円から35兆円の範囲に収めることにしている。

 それは、毎月日銀が政策決定会合というのを開いて、日銀総裁の福井さんを筆頭に、理事と呼ばれる政策委員会のメンバーが集まります。

 そして、あらゆる面から経済の実体を検討して、これから先、一ヶ月の金融政策を決める。

 一番最近では、11月18日に「現状維持」と言っています。


◆どうして、そういうことをするのか。

 

 今、書いたとおり、現在の金融政策の目標は金利水準ではなくて、日銀当座預金量を増やすことなのです。

 何故かというと、バブルのあと、日本は世界のどこの国も経験したことがないぐらい、ずーっとデフレが続いているからです。

 デフレというのは、物価が下がり続けることです。



 経済学は、諸説あって、常に正しいものはありませんが、

 貨幣数量説といって、通貨供給量が物価を決める、という考え方(マネタリストいいます。これに反対するのがケインジアン、ケインズ派の人たちです)があります。

 この学説に従えば、日本に出回るお金の量を増やせば、デフレは止まるはずです。

 日銀の量的緩和は大雑把に分類するならば、このマネタリストの立場に立っている。

 量的緩和を始めたのが2001年3月で、今の福井総裁が就任したのが2003年3月です。

 4年半量的緩和を続けていますが、先月まで常に、前年同月比、マイナスでした。

 今日、マスコミが騒いでいるのは、「10月の全国消費者物価指数(2000年=100、生鮮食品を除く)は、

 原油高などを反映して98・2と前年同月と同じ水準に並び、上昇率は0・0%と5カ月ぶりにマイナスを脱した。」 ということです。



 しかし、一ヶ月(一回の発表)では何も分からない。トレンド(傾向)を見なければなりません。

 全国と同時に11月の東京都区部の消費者物価指数速報が発表されました。

 記事1の共同通信は書いていないが、記事2の毎日新聞は書いているので、写しました。

 東京は、全国で一番物価が高いところですし、経済活動が活発なところなので、

 この数字のプラスマイナス、またその幅は全国の数字を予想する材料とされているのです。

 そこで、今日発表された、東京都区部の数字を見ると、

 「11月の東京都区部の同指数(中旬速報値)は97.0で、同0.3%の下落で、99年10月以降、6年2カ月連続で前年水準を下回った」とあります。

 全国消費者物価指数が単月(ひと月)「マイナスではなくなった」というだけです。

 共同通信は「量的緩和、解除へ一歩」と書いていますが、いい加減なことを書いてはいけません。

 記事4を見て下さい。日銀が量的緩和を解除する条件を2003年10月にはっきりと発表しているではありませんか。

 

第1に、直近公表の消費者物価指数の前年比上昇率が、単月でゼロ%以上となるだけでなく、基調的な動きとしてゼロ%以上であると判断できることが必要である(具体的には数か月均してみて確認する)。

第2に、消費者物価指数の前年比上昇率が、先行き再びマイナスとなると見込まれないことが必要である。

 と。

 まだ、条件の1も2にもほど遠い。 量的緩和解除するわけがない。


◆中川政調会長も、安倍官房長官も、竹中も、小泉も日銀に干渉しすぎです。

 

 どうして、中川政調会長達がカッカしているのでしょう?

 日銀の政策決定会合のメンバーは、いろいろなところへ招かれて講演を行います。

 そこでは、自分の経済観、景況観(景気の現状と今後について、どう考えているか)について、自由に話すのですが、

 過去数ヶ月、何人かが連続して、「もしも、来年あたり、消費者物価指数がプラスになって、景気回復の兆しが顕著になったら、

 現在の量的緩和策すなわちゼロ金利政策をすこし、変えるかもしれないと」いったのです。

 政治家達は、それに過剰反応しているのです。


◆中央銀行は独立性を確保するべきだ。

 

 本来、中央銀行の政策は金融政策のプロに任せるべきなのです。金融のプロじゃないですよ。
 「金融政策のプロ」です。極めて限られます。

 政治家が金融政策に口を出すのは前述のとおり、党利党略なんです。

 「景気」というテーマは、この前の異常な「郵政民営化選挙」は例外で、通常、選挙では最も世論が注目することです。

 政治家は、選挙のときに景気が上向いていないと困るのです。 それで、いろいろ言うのです。

 しかし、あいつらは不勉強ですから、経済なんか分からない。実体経済の指標を経済学的にきちんと分析できる国会議員なんていません。



 あ、そういえば、「小泉チルドレン」、マドンナ議員のお姉ちゃんで一人か二人いますが、金融政策に携わったわけではない「予想屋」です。

 福井日銀総裁は日銀生え抜きです。

 2004年2月、英国の権威ある経済雑誌、"The Economist"が「世界で最も優秀な、中央銀行総裁」と絶賛したほどの人なのです

 まもなく引退するアメリかのグリーンスパン議長などを差し置いて「世界一」と評価したのです。


◆日本銀行総裁が一番、しんどいとおもいますよ。

 

 色々な大臣とか、外局(省ではない、庁など)のトップがいますが、大臣は素人でも何とかやっています。

 環境相の小池なんて、テレビで原稿を読んでいただけの、「元・カワイコちゃん」です。

 しかし、中央銀行総裁だけは、プロじゃなければできない。

 彼の舵の取り方次第で、一国の経済が大きく左右されるのです。その重圧はもの凄いでしょう。


ゼロ金利が続いたため、国民は、もらえた筈の154兆円の利子を貰い損なっている。

 

 新聞記事を読むと、日銀が無理に金利をゼロからプラスにしようとする「悪」で、

 政治家達は景気回復を失速させかねないからといって、日銀を牽制する「正義の味方」というような書き方になっています。

 それは、違う。

 ゼロ金利が続いているから、銀行の預金も金利があがらないのです。アメリカの家計における利子所得は10パーセントぐらいある。

 しかし、日本の家計では、1パーセントにも満たない。というか、ゼロに等しい。こんな先進国は他にない。

 今年の1月28日、衆議院予算委員会で、民主党の岩國哲人議員と、政府参考人として呼ばれた福井日銀総裁との間の質疑応答は大変明解です。

○岩國委員 ゼロ金利政策がいろいろな意味で必要だということは、私もその世界におりましたからわかります。

 しかし、このゼロ金利政策が、だれに恩恵を与え、だれに負担をかけてきたかということを今こそ率直に総括し、そしてその結果を私は国民に説明しなければならないと思います。

 ゼロ金利政策の担当の日銀総裁にお伺いします。

 このゼロ金利政策の結果として、過去十年間に日本の一般家庭の貯蓄が得べかりし利子が幾ら奪われたのか、それを端的に金額で御説明ください。

○福井参考人 お答えを申し上げます。

 いろいろな計算の仕方があろうかと思いますけれども、国民所得統計で、日本の家計の受取利子というものが過去の金利の低下でどれぐらい減ったか。

 平成五年、一九九三年と比べますと、十年間ということになります、毎年の受取利子の減少額を足し合わせますれば、累計で百五十四兆円ということになります。

○岩國委員 百五十四兆円、丹念に御計算いただきまして感謝いたします。

 決して福井総裁のときからこれが始まったわけではありません。

 私は、速水日銀総裁にもここへ来ていただいて、同じことを、なぜゼロ金利政策が昨年、一昨年から始まったのかということを三年前に質問しました。

 私は速水総裁に、あなたはお金の印刷ばかりしていらっしゃるけれども、お金に生活費を払っていらっしゃいますかと聞きました。

 払っておりません。世界のどこの国がこういうことをやっていますか。

 どこの国もやっておりません。あなたはどういう御心境で仕事をしていらっしゃるんですか。

 大変心苦しい思いでございます。私は、本当に率直な答弁をしていただいたと思います。

 岩國議員が福井総裁には、敬意を払っていることがわかります。他の大臣に対する質問など、辛辣きわまりないです。


◆10%の消費税を上乗せされているのだ。

 

 本来、ゼロ金利でなければ、得られたはずの家計の金利収入が、受け取れなかったということは、所得が奪われているのです。

 別の税金を課せられているのと同じ状態だ、ということも出来ます。

 その考え方で岩國議員が計算したら、毎年20兆円を国民が貰い損ねているということは、10%の消費税を取られているのと同じ事だそうです。

 つまり、実質的には日本の消費税は15%だということですね。だから、いつまでもゼロ金利では困るのですよ。

 金融は大変難しいというわけでもないのですが、取っつきにくい。だからこそ、新聞はもっと丁寧に解説するべきです。


◆小泉・竹中、自分らの経済政策の失敗を棚に上げて、日銀に干渉するな。

 

 竹中が金融相になり、プロジェクトチームを作ったときの記者会見における質疑応答はまだ残っています。

 この中で、竹中は、銀行の不良債権がデフレの原因だから、不良債権さえ処理すれば、デフレも止まると言いました。

 不良債権は予想より早く半減し、削減目標を達成したけれど、デフレは止まらなかった。

 最近になって、ようやく、ほんの少しだけ改善してきたのは、金融プロジェクトの功績ではなく、

 日本銀行がずっと量的緩和策で支えてくれたおかげです。

 そして、福井総裁は、量的緩和策を解除するようなことはまだない、と言っているのに、

 政治家どもは無礼にも、日銀は政府の意向に沿った金融政策を採るべきで、

 政府の言うことがきけないのなら、日銀法を改正するぞなどといっています。


 だからさあ、センセーたち、そういうことを言う前に、2003年10月に日銀が発表した、量的緩和策解除条件を良く読めよ。

 竹中の政策の間違っていることは、「金融庁、主要11行に対し月内の特別検査着手を予告」←竹中のバカ。こういう余計なことをするから、景気が回復しない。と、

 「大手行への「大口与信管理態勢検査」秋も実施…金融庁」 不良債権は不況の原因ではない。結果なのだ。に詳しく書きましたので、どうぞご参照下さい。

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2005.11.25

体調不良の為、本日休みます

◆メール、コメント、ありがとうございます。

 

 ここ数日、「『イトカワ』に着陸する『はやぶさ』」の他、「ボレロ」に関して、

また昨日の稿について、リンク、ご感想のメール、コメント等、誠に有難うございます。

 未だに返信出来ず、申し訳ございません。少々、体調が悪く本日は無理ですが、

 近日中に必ず、レスをお送りいたします。

 今暫くご猶予を頂きたく、お願い申し上げます。

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2005.11.24

日本人は、ネット上のみならず、現実世界で、もう少し声をかけた方がよいのではないか。

◆バーチャル・ワールドと現実世界との最大の違い。

 

 私の「感覚」では、2年ぐらい前からちらほらと「ブログ」という言葉が日本語に定着して、その頃から、もの凄い数の日本人がブログを開設している。

 ブログにおいては、わざわざ開設するぐらいだから当たり前といってしまえばその通りだが、

 皆さん内容は千差万別だが、誠に雄弁だ。

 私は、日本人は実はこんなに世間の目に触れることを承知で、何かを主張したかったのか、ということに驚いた。

 それは、原則的には悪いことではないと思うのであるが、人間、仮名で(匿名と仮名は違う)、文字だけなら、目の前には誰もいないので、何でも言える。

 しかし、ネットの世界だけではなく、現実世界でも、もう少し日本人は、「お互いに声をかける習慣」を身につけても良いように思う。


◆実例1:電車で隣の人が落とし物をして、下車しているのを知りながら、何もしない若者。

 

 若者だけではないが、日本人は公徳心が足りないように思われる。

 以下、私が電車の中で実際に目撃した事実である。

 私の目の前に大学生と見られる若い男性と女性(互いに知り合いではない)が隣合わせで座っていた。

 男性は、ある駅で下車したのだが、その直前バッグから何かを取り出し、その拍子にハンカチか何かを床に落としたのである。

 それは、目立つ色で、周囲の人は皆、彼が物を落としたことに気がついている。

 隣の女の子も気がついている。

 私はこう言うときには、ごく普通のこととして、「何か落ちましたよ」と電車の中でも知らせる。

 特別に偉いことでも何でもなく、ごく自然なことだと思うのである。

 その時は、私が言うまでもなく、すぐ横の女の子が教えてやるだろうと思った。

 ところが、である。なんと。女の子は何も言わないのだ。

 落としたハンカチは女の子の真っ正面に落ちている。書き忘れたが、男性は特に気持ちの悪い人物、怪しげな人物ではなかった。

 女の子は気がつかないフリをして視線を水平に向けているが、気がついていることは、誰がみても明らかなのだ。

 どうして「落ちましたよ」とか、「これ、落としましたよ」ぐらいの一言が出ないのか?

 そうしている間に電車は駅に停車し、ドアが開き、男子学生は落とし物をしたことを気がつかずに降りてゆく。

 私は、あわてて、落とし物を拾って彼に渡した。

 周囲の日本人は、その一部始終を見ているのに、気まずいのだろうか?

 その一部始終すら気がつかなかったようなフリをして、雑誌など読んでいた。


◆実例2:電車が終点についたのに眠っている人は、起こしてやっても良いだろう。

 

 これに関しては、やらない言い訳を色々と考えることは出来るかも知れぬ。

 「眠っている男が実は凶暴で、起こしてやったのに、いきなり怒り出して、殴られるかも知れない」とかね。

 しかし、少なくとも、私はそういう経験をしたことが無い。



 この季節、東京はかなり寒く、電車内の暖房が使われ始めた。

 どなたもご存じのとおり、電車のあの、ほどよい揺れは、人間に眠気を催させる。

 その上、本人が仕事や学校帰りで疲れていて、電車の中が暖かいと、かなりの人が「熟睡」してしまう。

 終点に到着して車内放送があったぐらいでは、目が覚めない。 放っておけば、電車は数分以内に、逆に発進する。

 実は、私がこれを何度もやっているのだ。

 私は、帰宅するときには、会社のそばのXという駅から乗って、終点のY駅で降りるのだが、ときどき殆ど「昏倒」していて目が覚めない。

 その結果、逆に発進しても目が覚めず、なんと、XとYの中間ぐらいのところまで、逆戻りして、漸く目が覚める、というケースである。



 帰途であるから、別に帰宅時間が少々遅くなったところで、問題はない。

 無いけれども、私は、終点で目が覚めないでいる人というのは、大抵見れば明らかなのだから、

 誰か起こしてくれても良かったのではないか、不親切だな、と思った。

 それ以来、私は、終点で明らかに目が覚めず、放っておけばどこまで逆戻りするか分からないと思われる人を見かけるた場合、

 軽く揺すって、「着きましたよ」と声をかけることにした。

 大抵、というか、ほぼ100%、感謝される。

 誤解されると困るのだが、私は、感謝されるためにやるわけではない。それぐらいしてもいいじゃないか、と言いたいのだ。

 そもそも、感謝する前に大部分の人は数秒間寝ぼけているので、こちらはその間にまた眠りそうにないことを見届けて、消える。

 本人が確実に起きるまで、相手の目の前に立って待っているのは、何だか変だ。


◆こういうところは、イギリス人の方がスマートだ。

 

 以上述べたようなことを強く意識するようになったのは、英国に駐在してからである。

 あちらに住んでおられる方、住んだことがある方はよくご存じだと思うが、

 欧米人は見知らぬ者同士でも、気軽に"Thank you." と例を言い、言われた方も"No prob(lem)" "OK"と返事をする。

 例えばビルの入り口。向こうは自動ドアが意外にすくない。開けて、手を離したら元に戻る、旧式のドアが多い。

 この場合、ドアを押し開けて、手を離す前に、ちょっと後ろを見る。

 後ろから人が来ている場合は、どうせ数秒だから、ドアを開けたまま待っているのが、マナーだ。

 日本人は後ろなんか見ないで手をはなすから、すぐ後ろに人がいると、目の前でバタっとドアが閉まる。

 そういうことに敏感な人にとっては、ちょっと不愉快なものである。

 ロンドンでは、ほんの数秒ドアを開けて後続の人を待っていてあげる。後から来た人は必ず、謝意を表する。

 待っていてあげた方も、"All right"とか、"No prob"(probはproblemの略だ)と返事をする。これが完全に「社会的慣習」として定着している。

 たったこれだけのことで、世の中全体が少しばかりホンワリと柔らかいムードになるのである。

 丸の内あたりのサラリーマンが歩いているのを見ていると、すごい無愛想な顔で、今のような話をしても、多分、

 「ドアを開けて待っているなんて、そんな暇があるか、こちとら忙しいんだ。」と言いそうだ。

 しかしねえ。こう言っては失礼だが、貴方が数秒、数十秒、数分遅れたところで、世の中、何にも影響を受けないんだよ。

 ほんの少しだけ、勇気(大げさだが)を出して声をかけたり、ドアを支えて待ってみませんか?

 これによって、不愉快な気分になるということは、まずあり得ない。試して見ると分かります。

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2005.11.23

今日は、「ボレロ」が初演された日。音楽あれこれ。

◆11月22日はラベル「ボレロ」が初演された日。

 

 フランスの作曲家、モーリス・ラベルの作品は「亡き王女のためのパヴァーヌ」などの名前ぐらい何となく聞いたことがある方も多かろう。

 管弦楽の為の作品は何も「ボレロ」だけではないのだが、ボレロのクライマックスはクラシックを聞き慣れていない人にも感動を与える。

 ずっと前だが、NHKがN響を使った音楽入門番組を作り、ゲストが西田敏行であった。それまでクラシックをろくに聴いたことがない、という。

 そこで、故・山田一雄(大先生ですぞ)指揮でN響がボレロを演奏するときに、西田敏行をバイオリンセクションの中に座って聴かせた。勿論自分は音を出さない。

 演奏終了後、司会進行役のNHKアナウンサー(だったと思うが、この記憶は曖昧である)が西田氏に感想を求めると、

「自分が何も楽器を弾けないのが悔しくて・・・・」と冗談めかしたコメントを発しようとしていたが、途中で感極まって泣き出し、言葉にならなかった。

 私はそれを見て感動した。これぞ、本物の芸術のすばらしさである。


◆クラシックを聴くのはお勉強ではないし、「予習」する必要など全くない。

 

 ラベルはオーケストラの魔術師と呼ばれたほどの大天才だが、ラベルの音楽を聴くにあたって、何年に生まれ、没したとか、

 管弦楽法(オーケストレーションといいます)、和声進行の特徴とか、転調が巧みであるとか、理屈を知っている必要は全くない。

 勿論、そういうことを知りたくなって調べるなら、それはそれで結構なことだが、

 世間はいまだにクラシックを「お勉強」だと思っているが、それは、誤った先入観だ、と申し上げたいのである。

 また、皆さん、クラシックのコンサートが堅苦しいというが、それは、周りに合わせて慣れたフリをしようとするからだ。

 回りに合わせる必要は全くない。

 どこで拍手するのか分からなければ、しなければよいのだ。勿論、つまらないと思ったときも拍手する必要はない。

 ただし、拍手したいとき、演奏途中に拍手するのはダメ。原則、演奏中に音は立てない。

 ブラボー!なんて叫ぶ奴がいるが、あれは、ブラボーのためのブラボーで、あんな奴が通なのではない。

 私は30年間クラシックを聴いているが、ブラボーを叫んだのは、ほんの数回である。

 本当に感動したとき、人間は、声なんか、出せなくなるものだ。


◆クラシック・コンサートで演奏が気に入らなくて、「下手くそ!」と叫んだことがある。
 

 今から思うと、若気の至りで恥ずかしいのだが、本当なのだ。

 ある時、N響の定期演奏会で、ゲストのドイツ人オペラ歌手が、ワーグナーの楽劇から一部抜粋を歌った。

 途中、大した高音でもないのに、上りきれず、半音近く低く外れた音を出した。これは私は怒った。

 テノールの高音は勿論持って生まれた声域があるのだが、それだけではなく、練習を重ねてテクニックで出すものだ。

 これぐらいの音が出せないのは、明らかに遊んでいて練習していない証拠だ。

 この歌手は元ドイツの空挺部隊の軍人からオペラ歌手になったという変わり種で、ロックも歌うとかプロフィールに書いてあるし、

 前回、日本に来たとき、夜通し六本木で遊んでいたと言う話が有名だった。

 それでも、本番でまともな仕事をするのなら、プライベートで何をしようが構わない。

 が、曲がりなりにもカネを出して聴きに来ている客の前で歌うのに練習不足で高音が出せないのは、プロにあるまじき醜態だ。

 批判されても仕方がないのである。

 私のそのときの怒りは、ブーイングなどという甘いモノでは表現できなかった。

 当の歌手が一度ステージの袖に引っ込み、再び拍手を受けるために出てきた。

 私はすごい大声で「へったくそ!」(下手くそ、の意味ですね)と叫んだ。

 ドイツ人歌手は「ヘタクソ」の意味は分からなかっただろうが、あまり良いことを言われたわけではないのは、さすがに察しがついたであろう。

 そういうことをしても、私がつまみ出されることはないのだ。


◆クラシックコンサートは精神がリベラルなのだ。

 

 クラシックのコンサートは堅苦しい、と皆さんおっしゃるけれども、こういう、自由がある。

 これが、例えば、スマップ(あくまで、仮定上の話である)のコンサートへ行って、わたしが、「下手くそ!」と叫んだら、多分袋だたきに合うだろう。

 いつも思うのだが、ああいう芸能人とか、ロックコンサートとかは、褒める奴しか行ってはいけないような雰囲気がある。

 大げさに云えば、「プチ・ファシズム」だ。褒める奴しか行かないから、いつまで経っても下手くそなのだ。

 クラシックの音楽家を含む「芸人」は、客にもまれて、上手くなるものである。



 噺家(落語家)も同様だ。

 寄席に行ったこと、無いでしょう?落語家なんてのも大変だよ。通の客はきびしいからね。

 噺が上手くないと、「つまらねえぞ!」なんてヤジが飛ぶ。人を笑わせるのが落語である。「つまらねえぞ」は、最も厳しい批評である。 

 話がそれたが、要するに何を言いたかったかというと、

 「形式こそクラシック・コンサートのほうが堅苦しく感ずるかも知れないが、精神はリベラルだ」ということである。


 

 ◆ラベル「ボレロ」前回お薦め大変好評でしたので、もう一度。

 前回、ラベルの誕生日です。「ボレロ」って知っていますか?でお薦めした、アバド指揮、ロンドン交響楽団のCDは、その後、何人もの読者の方々から「大変良かった」というメールを頂き、大変うれしかった。

 このCDでは曲の終盤にさしかかったところで、オーケストラのメンバーが、興奮を抑えきれなくなり、思わず、「ワオッ!」と叫ぶのがいい。

 こういうクラシックのCDは大変珍しい。今回初めて、読まれた方も是非どうぞ。お薦めです。

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2005.11.21

「<東武運転士>解雇処分を正式決定」←妥当である。

◆記事:<東武運転士>解雇処分を正式決定

 

 東武鉄道の30代の運転士が長男(3)を運転室に入れたまま約4分間乗務した問題で同社は15日、運転士を懲戒解雇処分にすると正式に決定した。

 「解雇は厳し過ぎる」と電話やメール約2000件が寄せられていたが、「鉄道事業者にあってはならず、重大な服務規律違反にあたる」として当初の処分方針を貫いた。(毎日新聞) - 11月16日3時3分更新


◆コメント:東武鉄道は正しい。

 

 大衆は感情で行動する(意見を述べる、苦情メールを送るのも無論「行動」だ)ということは、先の衆議院選挙でいやというほど、思い知らされたが、今回も、あきれた。

 レールの上を走るから、そんなに堅いことをいわなくても良いではないか、と言う人は、もう福知山線の事故を忘れたのであろうか?

 あの時の事故の原因はいまだに解明されていないが、人々は、あのとき、「JR西日本の運航管理体制に問題がある」というマスコミの勝手な憶測しか根拠のない断定を利用した。

 そして、マスコミによる扇動に乗って、事故の被害者の遺族はもとより、

 関係のない一般人までが、事故と直接的には無関係のJR西日本職員に暴力を振るうという野蛮な光景が繰り広げられた。



 それが今回はどうだ?

 「運転士が公私を混同し、自分の息子が泣いたから運転室に入れる」という重大な服務規律違反を犯したのに、「可哀想だから」大目に見ろ、という。

  何を言っている。


◆JR西日本の厳罰主義と混同するな。
 

 話がそれるが、全然関係のない、「問題のすり替え」をしているブログがあった。

 

「福知山線事故の後、JRの『厳罰主義体質』が問題視されていたことをもう忘れたのか」



 というのである。 違う。全然問題が違う。

 勘違いの一つ目。

 そもそも、福知山線の事故原因はいまだに特定されていない。

 したがって、「厳罰主義と事故の因果関係」を断定するべきではない。これが一つ目の誤り。

 勘違いの二点目。

 JR西日本における厳罰主義とは、「ダイヤを守るため」の厳罰主義である。

 つまり、人命よりも、会社の収益、もうけ、を重視しすぎること」が問題だといわれているのだ。しかもそれが正しい主張か否か、断定できぬ。

 いずれにしても、今回の「厳罰」は全く正反対の理由に基づいている。

 東武鉄道の措置は、「運転士が、人命を守るための最低限の安全運転義務を守らなかった」事実に対して下される「厳罰」である。

 混同してはいけない。

 
◆結果論で論じるべきではない。

 

 気の毒だ? そういうのを「結果論」という。 たまたま事故が起らなかっただけだ。

 鉄道の運転士は常に前をまっすぐに見ていなければならないのである。

 自分の子どもだろうが、カミさんだろうが、集中力の妨げになる人なり、物体なりを運転室に入れてはならないのだ。鉄則だ。

 突然、軌道(レール)上に障害物が入る可能性は常に存在する。

 目の前ならどうしようもないが、遙か前方でクルマが踏み切りで立ち往生しているのを見つけることができれば、大惨事を免れる事が出来る。

 ところが、自分の子供に気を取られ、もしも、ほんの数秒発見が遅れただけで、大惨事が起きる可能性が高くなる。

 事故が起きてからでは遅い。

 事故が起きる可能性をあらかじめ、可能な限り排除するために、鉄道会社は厳密な服務規程を運転士に課している。

 それは、言うまでもなく、大勢の乗客の人命に直結する問題だからである。

 この運転士は、それを認識していながら、自らの意思で規程に違反した。頭にピストルを突きつけられていたわけではない。

 自分の列車は順調に運行していても、先行する列車にトラブルが起きて、突如駅と駅の間で停止信号に変るかも知れない。

 それを「見逃す可能性を生じさせる人や物」が電車の運転席に存在してはならないのだ。

 たかが子供じゃないか、というのは間違っている。

 子どものいない人は分からないだろうが、3歳児ぐらいになると、びっくりするほど強い力を出すことがある。

 運転席に入った本件運転士の子どもがはしゃいで、運転中の父親の腕にぶらさがったり、飛びついたりする危険がある。

 加速装置にしても、制動装置にしても急激な操作は厳禁だ。

 ましてや、運転士の意思とは無関係に、そのような動作をすることになったら、何が起きるか分からない。急制動により、乗客が転倒するかも知れぬ。


◆はっきり言うが、母親が一番悪い。

 

 この運転士は、仕事が終わったら家族と合流して買い物だか、食事に行く予定だったという。偶然に乗り合わせたのではない。

 運転士本人も使命感が足りない。軽率のそしりは免れない。

 しかしながら同時に、運転士の妻、子どもの母親が最も重大な、ミスを犯したと責められても、仕方がない。

 この妻は、「夫の仕事は多数の人命を預かる、誇り高い仕事だ」という意識がなく、「電車の運転士」という職業を、軽視していたとしか思えない。

 多分、妻は、運転士の服務規程のイロハのイも知らなかったのだろう。

 妻は、自分の行為が夫の職業の尊厳を貶めるものだという認識すらなかったのだ。それが悲劇だった。

 3歳児の母親は、そもそも、はじめから運転席に近づくべきではなかった。

 そして、子どもが泣き出した時点で、運転している夫の注意を削がないために、全力を尽くすべきだった。

 首に縄を付けても、ひっぱたいても、こどもを運転席から遠ざけるべきだった。

 規則を知っている知らないという問題ではない。

 鉄道運転士の妻になるからには、それぐらいのことは常識で考えて、分からなければならない。

 どうも、近頃の若い奴は幼稚だね。こんなことは、中学生でもわかりそうなものだ。


◆一回、「大目に見」たら、次に同様の事態が起きても、クビに出来なくなる。

 

 今回、問題を起こした運転士を見逃したら、次から似たようなことをする者が出る可能性が高くなる。

「少しぐらい、子どもにカッコいい自分の運転士姿を見せてやりたい」という社員が出現する可能性が大いにある。

 何せ、「クビにならない」のだから。

 今回、東武鉄道に「苦情」を寄せた人たちは、今後、「ちょっとぐらいなら、お父さんの運転席を見てもいいよ」という運転士が続出しても、抗議しないのでしょうね?

 「抗議しない。その結果事故が起きても、自分が了承した不利益だ。」

 と念書を書き、署名捺印の上、東武鉄道に提出のうえ、それでも今回の事に抗議する、というのならば、筋が通る。

 そんな人がいるわけがない。事故が起きれば、ギャーギャー文句を言うに決まっている。

 だから、今回のことは、その場の感傷で安易に論ずる問題ではないのだ。


◆クビを切る人間の辛さも考えろ。

 

 東武鉄道は、2000件にも及ぶ、「苦情」にも関わらず、規則は曲げられないといって、運転士を懲戒解雇とした。

 これは、誤解を恐れずに言えば、「立派」である。

 世間はクビを切られる運転士の事ばかりに着目するが、全国から抗議が寄せられていたにもかかわらず、

 「運転士としてあってはならぬこと」という固い信念を曲げず、服務規程をそのまま適用した東武鉄道側だって、苦しいのだ。

 直属上司は勿論、人事部や、経営陣も悩みに悩んだに決まっている。きっと何日も眠れなかったと思う。

 不況から脱していない、今の日本で、会社を「懲戒免職」になった者の再就職が如何に厳しいかということぐらい、サラリーマンなら誰でも骨の髄から承知している。

 3歳児を抱えた運転士が職を失い、これからどうなるかを考えて、多分、最終的に解雇を通知した担当者は何日も、悪夢に苦しんだに違いない。これからも苦しむだろう。

 誰も、今回問題となった若い運転士に個人的な恨みはない。 クビを切ったからといって自分の得になることは何もない。

 普通の人間は、他人から恨まれるようなことを平気で断行するような図々しい神経を持っていない。

 ただただ、公共交通機関としての判断である。

 「泣いて馬謖を斬る(規律を保つためには、愛する者をも止むを得ず処分する)」とは正にこのことだ。

 私は、東武鉄道に対して、同情を禁じ得ない。


◆「とかくに人の世は住みにくい。」

 

 冗談ではなく、私は、この騒動を知って、漱石の「草枕」の冒頭が真っ先に頭に浮かんだ。

 

 山路を登りながら、こう考えた。

 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。

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2005.11.20

「日米首脳会談 自衛隊イラク派遣延長を示唆」←どこまでバカなのだ?

◆記事1:日米首脳会談 自衛隊イラク派遣延長を示唆 同盟強化確認

 

 小泉純一郎首相は16日午前、ブッシュ米大統領と京都迎賓館で会談した。

 自衛隊と米軍の連携を強化する在日米軍再編の中間報告がまとまったのを受け、同盟協力を世界規模に拡大する方針を首脳間で確認した。

 首相は日本政府としてイラクの復興支援に継続して取り組む方針を表明。

 両首脳は会談後、共同記者会見を行い、首相は「自衛隊の活動も含め、国際社会の責任ある一員としてイラクの復興支援に何ができるか、日米同盟の重要性をよく考えながら総合的に判断したい」と、12月14日に期限を迎える自衛隊のイラク派遣を延長する意向を強く示唆した。(毎日新聞) - 11月16日17時20分更新


◆記事2:「サマワの外国軍必要ない」=最も安全な地域の1つ-イラク報道官

 【シドニー18日時事】18日のオーストラリアの国営ABC放送によると、イラクのジャファリ首相の報道官は、自衛隊が駐留するイラク南部サマワについて、「最近サマワを訪れたが、イラクの中で最も安全な地域の1つ。(外国の)軍隊は必要ない」と語った。

 サマワには現在、豪州と英国の軍隊が駐留し、自衛隊警護のほかイラク軍の訓練を行っている。(時事通信) - 11月18日11時1分更新


◆記事3:米、サマワ陸自の移動打診 新たな軍事的貢献要請

 【ワシントン19日共同】米政府が先月、日本政府に対し、イラク南部サマワに駐留する陸上自衛隊を他の地域に移動させ、地方政府の治安・行政能力の向上を目指す新規復興事業に新たな軍事的貢献ができないかどうか打診していたことが19日分かった。復興政策に携わる同盟国の複数の外交筋が明らかにした。来月の総選挙、正統政府樹立という大きな節目を控えながら、イラクでの「泥沼化」懸念をぬぐい去ることができないブッシュ政権が主要同盟国に中長期の軍事的関与を求めた動きが初めて判明した。
 日本政府は現時点での自衛隊の新規復興事業への参加について「不可能」と伝えたが、米政府は今後も同盟国の関与を模索する方針で、16日の日米首脳会談で自衛隊の派遣延長を事実上表明した小泉政権に引き続き協力を要請する可能性がある。(共同通信) - 11月19日20時0分更新


◆記事4:「予断許さない状況」=サマワ滞在中に着弾も-陸自西方総監が帰国後会見・熊本

 

 イラクに派遣された陸上自衛隊の第7次、8次復興支援群の激励を終えて帰国した林直人西部方面総監は15日、熊本市の同総監部で記者会見し、サマワ滞在中、宿営地周辺に砲弾が落ちたことを明らかにした。
 林総監は現地時間7日正午ごろから8日午前10時半ごろまで宿営地に滞在。7日夜の砲弾着弾について「(自分は)翌朝、気付いた。(部隊は)そんなに変わった様子はなく、淡々としていた」と説明。治安状況については「バグダッドとは状況が違う」と前置きした上で「すべてが安全ということではなく、予断は許さない。時々(砲弾が)落ちてくるわけだし」と話した。(時事通信) - 11月15日18時1分更新


◆コメント:GiveアンドGiveの日本

 

 勿論、日本が、である。

 日米首脳会談で、ブッシュは日本に23時間しか滞在せず、小泉首相との会談も数時間だが、上に長々と引用した記事から受ける印象は、

 ブッシュ:「イラクは長引きそうだから、まだ、自衛隊置いておいてくれ。出来ればサマワで道路工事をしているだけでなく、もう少し危ないところに行って、イラクの治安維持に協力しろ」

 小泉:「かしこまりました」

 というだけのことで、議論ではなく、ブッシュは小泉という「部下」に指示を出しに来ただけではないかと思われる。

 これに対して日本人は特に腹がたたないようだが、みんな、変っているね。

 日本はアメリカの要求に応じて、イラク復興費用、50億ドルを拠出した。

 さらに、イラクに自衛隊を派遣して、サマワには311億円の税金を使って自衛隊の宿営地を建設し、

 そこには、常時、3か月交替で、500人の自衛官が駐留して、彼らには、1日25,000円の特別手当が支給されている。

 最初から全員にこの金額が支給されていたわけではないし、途中から自衛官も増員されているから、正確な計算ではないが、

 陸上自衛隊が一番最初にサマワに到着したのが、2004年2月8日であるから、今日(2005年11月20日)で、651日目である。

 500人の自衛官に特別手当25,000円の特別手当を651日間支払ったとすると、8,137,500,000円(81億3,750万円)もの税金が使われている。

 その間、学校や道路を補修したり、給水事業を行ったというが、首相や防衛庁長官が記者会見ではっきり説明をしないので、

 サマワの自衛官派遣を延長することに(ブッシュのご機嫌を取る以外に)如何なる意味があるのかさっぱり分からぬ。


◆コメント2:サマワのイラク人は「自衛隊はいらない」と言っている。

 

 記事2でイラク政府の報道官がはっきり言っている。イラク人が、外国の軍隊は要らないといっているのに、

ブッシュ追従のおべっか小泉は、イラクへの派遣延長をもう決めているようだ。


◆コメント3:米国は自衛隊に、サマワではなくて、もっと危ないことをさせようとしている。

 

 記事3を読めば明らか。

 アメリカは日本の自衛隊にもう一歩踏み込んで、イラク復興支援して欲しいというのだが、それは、はっきり言えば、イラクの治安維持に協力しろ。軍事的に介入しろということだ。

 日本は日本国憲法により武力の行使を禁じている。

 勿論、日本本土が外国に攻められたときは、国民の平和的生存権を守るために武力を用いても構わないと思うが、

 自衛隊はそのように、日本と日本国民を守るための「最低限の実力」であり、海外でアメリカを助けて武力を行使するなど、違憲も甚だしく、絶対に認められない。


◆コメント4:帰ってきた自衛官が「予断を許さない」といっている。

 

 自衛官は政治的な発言はできないから、小泉首相の政策が正しいとか間違っているとかを記者会見の席上言うことはできないが、

 これまでに、自衛隊の宿営地には10発もロケット砲や迫撃砲が、明らかに自衛隊への威嚇として撃ち込まれている。

 自衛隊の指揮官は、極力、イラク駐留の危険性に関しては触れないように言われている筈なのに、

 先日イラクから帰国したばかりの林直人西部方面総監は「予断を許さない状況」という表現を用いている。

 これは、出来る限り控えめな言葉を使っているはずだから、実際、サマワにいる自衛官は相当な危険を感じていることが容易に推察される。


◆結論:自衛隊は引き上げろ。

 

 日米同盟が大事、と小泉首相を始め、バカの一つ覚えを繰り返す人の頭がどうなっているのかさっぱり分からない。

 米国との同盟関係が大事だから、米国の機嫌を損ねないためだ、とはっきり言う情けない若いのもいるが、よく考えてみろ。

 日本が50億を拠出し、更に自衛官をイラクに派遣までしているのに、アメリカは六カ国協議で拉致問題解決の為に、北朝鮮に大して凄みをきかせることもしてくれない。

 また、日本が国連安全保障理事会常任理事国になりたいと手を挙げたら、アメリカは何と、中国と結託してこれを妨害したのだ。

 50億ドルも、自衛隊派遣も、アメリカは何とも思っていないということがまだ分からないのか。

 アメリカは裏切り者ではないか。こんな嘘つき国家が有事の際に日本を守ると、日本国民は本気で考えているのか。おめでたい。


 小泉さん、支持率急降下のブッシュに忠誠尽くしてどうするんだ?

 アメリカでは、イラク戦争開始以来、米兵の死者数が2,000人を超えて、ブッシュ政権の支持率は急降下している。

 アメリカ人の6割はブッシュが不正直だと思っているという世論調査の結果が出たそうだが、そんなこと、今頃分かったのか。

 イラクの大量破壊兵器保有の証拠を持っているとブッシュ政権がしきりにアピールしていたのは実は嘘だった、

 ということが分かったのに再選させておいて、今頃ブッシュが嘘つきだと気がついたのか?

 アメ公は図体がでかいだけあって、頭に情報が届くまでに時間がかかるのかも知れぬ。

 今頃世論調査で「ブッシュは嘘つきだと思う」なんて答えても、遅いんだよ。バカ。

 それを支持する小泉も大バカだし、その小泉を衆院選で大勝させた日本の有権者もバカだ。


 私は2002年の暮れからアメリカのイラクに対する武力行使に反対し、イラク戦争開戦に反対し、

 それを支持すると公式に声明を出した小泉首相は間違っていると書き、イラク復興支援特別措置法の成立に反対し、

 自衛隊のイラク派遣にも反対し、今でも反対である。

 嘘だと思うなら千数百本になるが、過去の日記を読んで下さい。

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2005.11.19

「探査機はやぶさ20日着陸 世界初の岩石採取に挑戦」←「イトカワ」に着陸する「はやぶさ」

◆記事:探査機はやぶさ20日着陸 世界初の岩石採取に挑戦

 

 宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)は17日、探査機「はやぶさ」を20日早朝に小惑星イトカワに着陸させると発表した。

 日本が地球以外の天体に機器を着陸させるのは初めて。小惑星からの岩石採取は世界でも初めての挑戦となる。

 19日夜に降下を開始、20日午前5時ごろに最終的な判断を行い、同6時ごろ着陸する見通し。

 はやぶさは小惑星にレーザーを照射して精密に高度を測りながら降下。

 目印となる反射板付きボールを投下し、カメラでボールをとらえて自らの姿勢などを確認し、着陸する。

 地面に着いた瞬間に金属球を発射、舞い上がった岩石の破片をカプセルに収め、約1秒で再び上昇に転じる計画だ。(共同通信) - 11月17日17時13分更新


◆コメント:「イトカワ」と「はやぶさ」

 

 最近ニュースで「イトカワ」に小惑星探査機「はやぶさ」が・・・という情報をしばしば伝えてくるが、一般人にはピンと来ない。

 来ないけれども、かなり画期的なことである。

 太陽系の大きな星は勿論水星から冥王星までの9つだが、これは、むしろ例外的に馬鹿デカいのである。

 それ以外にもの凄い数の「星」が飛んでいる。直径100メートルぐらいから、直径100キロメートルの小さい星が太陽の回りを回っている。

 今まで約6000個の小惑星が発見されており、毎年、新たに数百個が発見されている。

 しかし、小さすぎて地球から発見できない直径1kmぐらいの小惑星は100万個以上もあるだろうと言われている。

 「イトカワ」、というのは、サツマイモのような形をした長い方の径が600メートルぐらいの大きさで、地球と火星の間で楕円軌道を描いて、それでも太陽を周回している「小惑星」である。

 それに向って飛んでいった「探査機」が「はやぶさ」である。

 イトカワの名は、日本のロケット工学の始祖、糸川英夫氏にちなんで付けられた。

 というか、発見したのはマサチューセッツ工科大学の地球近傍惑星(NEA=Near Earth Asteroid)研究チームで、命名権は彼らにあったのであるが、

 日本は、この小惑星に探査機を飛ばすことをいち早く決め、それに際して、日本で「ロケット」というものを初めて手がけた糸川氏の名前にしたい、

 とMIT(マサチューセッツ工科大学)に頼んで、申請して貰ったのである。

 ちなみに、これは、あまり意識されていないが、探査機の名前「はやぶさ」は、糸川英夫博士(1912~1999)が戦時中設計した、当時他国もびっくりするほどの高性能を誇った戦闘機「隼」に由来すると思われる。


◆地球から3億キロ離れた500メートルの小惑星に着陸する

 

 この計画は、今ひとつ「派手さ」に欠けるので、一般の注目を浴びにくいが、実は先端技術の粋を結集している。

 なにしろ、20日、はさぶさはイトカワに着陸する地点は、地球から3億キロも離れたところにある。

 これは、光でさえ、到達するのに17分もかかる(ちなみに太陽から地球に光が届くのに8分を要する。我々が見ているのは8分前の太陽である。月でさえ、光が到達するのに1.3秒かかる)ほどの距離なので、リアルタイムで地球から操作出来ない。

 そこで、結論だけ言うと、記事にもあるが、はやぶさは自律航行といって、自分で自らの位置を認識し、さらに特殊なカメラを含む高度な技術を用いてイトカワを「自分で発見」して着陸するのである。

 はやぶさが地球を離れたのは2003年5月3日である。イトカワに着くまでに2年以上かかっている。

 これほど長く飛ぶことができるのは、イオンエンジンという私には到底理解不可能の新技術が使われているためである。

 分からないことを告白したままそのまま記述すると、イオンエンジンは、「推進剤キセノンを電波の力でイオンという電気を帯びた粒子にして、その粒子から電気を取って中性プラズマとして高速噴射し、 その反作用を推進力とする」エンジンであり、クルマのエンジンのように物を燃やさずに済み、しかも従来のエンジンよりも遙かに大きな加速度を得ることが出来るのだそうだ。

 また、はやぶさは最終的には先に書いたとおり「自分でイトカワを見つけ」て、それに接近してゆくのだが、最初、はやぶさを小惑星イトカワの方向へ向けるために、日本の技術者達は、はやぶさを一旦地球を離れた後、地球ぎりぎりのところをかすめるように飛ばせて、地球の引力を用いて方向を変える、「スイング・バイ」という方法を用いた。

 どうしてこういう計算が出来て、また、その通りにはやぶさを飛ばせる事が出来るのか、私など、またまた正直に言うと、説明を読んでも、ちんぷんかんぷんであり、世の中には頭の良い人がいるものだ、と つくづく感心した。


◆何故、そういうことをするのか。

 

 つまり計画の目的であるが、イトカワの地表から数グラムのサンプル(土の標本ですね)を持ち帰ることだ。

 地球のような大惑星では、太陽系誕生時から物質が大きく変化しているが、イトカワのような小惑星は太陽系が誕生したときの状態を保っていると考えられ、その表面からサンプル(といっても、ホンの数グラムである)を持ち帰ると、太陽系誕生や地球が形成される過程に関する研究に役立つことがほぼ間違いないからである。


◆サンプルの採集方法がまた、最新技術。

 

 はやぶさは、今、3億キロ離れたところで、自分でイトカワを発見して既に画像を地球に送っているが、最終目的は今、書いた通り、イトカワの表面から「土」(というのかね?)の標本を採集して、地球 に持ち帰ることだ。

 大きな惑星ならば、その惑星の引力を用いて着陸出来るが、イトカワは何せ、500メートルの小惑星なので引力は無きに等しく、はやぶさはイトカワに長時間へばりつくことは、出来ない。

 そこで、どうするかというと、20日の未明、つまり、今夜という日曜日の未明、2時頃、はやぶさはイトカワに着陸する。

 その瞬間、金属の球をイトカワ表面に向って発射する。

 そうすると、イトカワの表面から土ぼこりが立つでしょう?それを空中でキャッチしようというのである。すごいことを考える。

 繰り返すがこれは、地球からコントロール出来ないので、はやぶさが自分で判断して行うのである。

 サンプル採集後、はやぶさはまた2年かけて地球に戻る。そして自らは戻らず、標本の入ったカプセルだけを、地球に放り投げて消える。

 カプセルは減速しないで、すさまじいスピードで大気圏に突っ込むので、最終的には表面の温度が3000度にも達し、多分オーストラリア大陸に「落ちる」。

 無論、その高温と衝撃に耐えうるカプセルを作る技術がある、ということだ。


◆こういうことを行うのは、人類史上、日本人が初めて。

 

 そう。このたび日本がやろうとしている「小惑星に探査機を飛ばして、惑星のサンプルを収集して地球に戻す」という計画は人類史上初めてのことなのである。

 日本でこういう事をしている組織、アメリカのNASAに相当するのはJAXA(Japan Aerospace Exploration Agency,宇宙航空研究開発機構)といい、2003年10月1日宇宙科学研究所(ISAS),航空宇宙技術研究所(NAL),宇宙開発事業団(NASDA)の3機関を統合して発足したものである。

 JAXAのホームページは「JAXA」で検索すれば、当然ながら一発で見つかり、そこに、はやぶさに関する詳細な説明がある。

 Flashなど動画を多用して、なるべく素人にも何となく理解出来るように作られている。

 今夜、はやぶさがイトカワに着陸する様子はネット中継されるという。

 何せ、情報が届くのに速くても17分を要するのだから、「生」中継というのかどうか。不思議な話である。

 とにかく、日本には世界に冠たる頭脳が結集しているのだ。


◆糸川英夫博士のこと。

 

 糸川英夫氏は、東大工学部を出て、前述のとおり戦前戦中は飛行機を設計する人だったが、戦後はもっぱらロケット開発を手がけ、日本で最初のロケットを飛ばした人である。

 これが、「ペンシル・ロケット」と言って、素人目にはオモチャかプラモデルにしか見えない。

 手のひらにのるほどの大きさ、重さ、のものなのだが、宇宙開発技術者達には、これに対する特別な思い入れがあるようだ。

 一番最近スペースシャトルに搭乗して見事に任務を果たした野口さんは、このペンシルロケットを「持って」宇宙へ行ってきたほどである。

 技術者、科学者としての糸川英夫氏の功績は素人が軽々しく論ずるべきではないが、とにかく専門家の間ではものすごく頭が良く、発想が卓越しており、実行力があり、人格者だということでいまだに、「神様」みたいな、兎にも角にも滅多にいないほどの優れた人だったようだ。

 糸川氏が亡くなったときに、弟子の学者・技術者達が書いた文章がここに載っているが、如何に尊敬されていた方か、分かる。

 他方、このように才能豊かな人には、ありがちだが、糸川先生は多才な方であらゆる事に興味を示した。

 音楽好きでチェロを弾いた。

 また、大正生まれの日本人男性であまりこういう人はいないと思うが、大人になってからバレエ(踊りのバレエである)の正式のレッスンを受けた。

 ご本人は大まじめなのだが、マスコミはこういう事ばかりを取り上げるので、一般庶民は「変な学者」と思っていた。

 さらに、戦後、ロケットと平行して個人的には「ストラディバリウスを超えるようなバイオリンを作りたい」と音響学的な見地から研究に研究を重ねて、晩年ついに完成した逸話があり、これは、糸川先生ご自身による、八十歳のアリア―四十五年かけてつくったバイオリン物語という本に詳しい。

 一般人向けのエッセイというか啓蒙書も山ほどある。Amazonで「糸川英夫」で検索すると、未だにすごい数の著書が売られている。

 代表作は「逆転の発想」という本である。

 糸川博士は、最初のロケット、「ペンシル・ロケット」の発射実験をする際、水平に発射した。

 それは、調べていただくと分かるが、それなりの理由があるからだが、とにかく、凡人はロケットといえば、垂直に発射することしか頭に浮かばない。

 それを「水平に」発射するという着想が、殆ど天才的である。

 「逆転の発想」は、そういう先生が書いた本だから、常識を覆すようなことに満ちあふれているが、単に奇を衒(てら)っているのではなく、一々、合理的根拠があるのだ。

 代表作と言っても、文庫本で、厚さが1センチもない。

 頭がいい人は、余計なことを書かず、要点を分かりやすく書くので、糸川先生の本は大抵これぐらいの厚さなのである。



 きりがないので、最後に一つだけ。

 糸川博士は理論性の極致であるロケット工学の科学者だが、何と、西洋占星術を本格的に研究して、本を出している。今も買える。

 人の一生で、これほどずっと様々なことに好奇心を抱き続け、本格的に実行してしまい、それなりの成果を挙げることができるのか、と感動する。

 糸川先生の生涯には、ただ驚嘆し、畏敬の念を抱かざるを得ない。

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2005.11.18

「組織的詐欺」と慰謝料も=外為証拠金業者に賠償命令-東京地裁 素人が外国為替に手を出してはいけません。

◆記事1:「組織的詐欺」と慰謝料も=外為証拠金業者に賠償命令-東京地裁

 

 少ない資金を元手に多額の外貨を売買する金融商品「外国為替証拠金取引」で損害を被ったとして、

 千葉県の女性(76)が業者の「サンユートレックス」(東京都中央区)に約183万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は14日、全額の支払いを命じた。

 原道子裁判官は「虚偽の説明で取引を開始させるなど、取引全体が会社と従業員らによる組織的詐欺で違法」と非難。

 精神的苦痛を受けたとして、女性側が求めた50万円の慰謝料も認めた。 (時事通信) - 11月14日20時1分更新


◆記事2:外為証拠金取引業 破綻急増 規制強化で今年20社

 

 少ない元手で多額の外国為替取引ができる外為証拠金取引を手掛ける業者の経営破綻(はたん)が、今年に入り二十社に上ったことが、帝国データバンクが十五日発表した調査で分かった。

 七月の金融先物取引法の改正で電話による勧誘が禁じられるなど規制が強化され、当局による監視も厳しくなったことが影響したとみられる。

 調査した平成十二年から今年十月まででは二十二社が破綻、負債総額は四百五十二億円に達した。

 帝国データバンクは「個人からお金を集めながら、実際に運用していたかどうかすら怪しい業者も散見される」として、今後も同業者の破綻は続くとしている。

 帝国データバンクの調査では、外為証拠金業者のほか商品先物業者なども含めた資産運用関連企業の破綻は、

 十二年から今年十月までに四十五社、負債総額は二千百四十億円に達した。

 形態は破産や清算が多く、投資した個人にはお金が返ってこないケースがほとんどとみられている。

 このうち負債規模で四位、今年七月に破綻したジェスチオン・プリベ・ジャポン(東京)の債権者は富裕層の個人が多かったとされており、

 帝国データは「カネ余り、資産バブルの兆しが見え始めている」と指摘している。(産経新聞) - 11月16日3時11分更新


◆コメント:要するに丁半バクチなのですよ。

 

 為替(外国為替)に限らず、株でも債券でも同様ですが、素人が相場にのめり込んではいけません。

 何故、私が偉そうなことを言えるかといえば、詳しくは書けませんが、そういう世界に十数年いたからです。

 記事に載っているようないかがわしい会社ではないです。

 東京外国為替市場という概念があります。

 概念と言ったのは、株式取引を行う東京証券取引所は実際にそういう空間、バーチャルではなくて、場所があるのに対して、

 外国為替市場というのは、専用の通信手段(一番初めの頃はテレックス、次いで、専用電話回線、

 そして、ロイターディーリングシステムというものが出来ました)で世界中に張り巡らされたネットワークの総体を指すのです。

 東京中歩き回っても、「東京外国為替市場」という建物はありません。

 そして外国為替(以下、外為(がいため)と書きます)の主な参加者は銀行、証券会社、生保、損保などの金融機関の他、

 商社、自動車会社、石油会社など、輸出入を行う事業法人などですが、24時間、世界中の国の同様の連中が相場を見ているわけです。

 巨額の資金を動かす欧米のヘッジファンドと呼ばれる投資(というか、投機会社ですね)などは、

 交替勤務で、アメリカやヨーロッパの真夜中でも、誰かが東京を見ていますから、海外からの大口注文で東京外国為替市場が大混乱することもあります。

 通貨を売り買いする人を為替ディーラーと言いますが、専門職で、ずーっと、一日中朝から晩まで、相場を見ているのです。

 帰宅してからも相場が分かるように、ポケットロイターという、相場水準をリアルタイムで見ることが出来る小さいモニターを肌身離さず持っています。

 外為は、ですから、本質的にプロの世界です。 銀行が一番活発に行うのでインターバンクマーケットといいます。

 彼らはそれぞれ、独自の「情報源」を持っていて、ヘッジファンドが巨額の売り、又は、買いをやりそうだ、とか、

 アメリカの財務長官がこんな発言をしたとか、普通の人より早く知ることが出来るのです。

 こういう事は、バクチと同様でして、向き不向きがあります。

 長くやっている人はそれなりに実績があるから、続いているわけで、損ばかりしている人は、すぐに辞めさせられます。

 日本の会社ならば、他の部署の移るだけですが、外国の銀行とか投資銀行、ヘッジファンドのディーラーはもうからないと、

 本当にクビになるのです。失業するのです。 ですから、気合いの入り方がちがう。

 そういう人たちですら、毎日利益を出せるとは限らないのです。 為替ほど予想が難しいものはないのです。

 もし、「自分はディーラーで今まで損をしたことがない」、という人物が現れたら、絶対に嘘をついていますから、信じてはいけません。

 どんな天才的ディーラーも、大損を被って真っ青になることがしばしばあるのです。

 ただ、或る期間を通して最終的には利益を出している、ということです。

 記事に出ている、外為証拠金取引は、先物市場といって、厳密に言えば別の市場ですが、現実には、今まで述べたプロのマーケットに連動しています。

 こう言うところに素人が手を出してはいけません。

 何せ、株に比べて、値動きの速さが比べものにならないぐらい速い。

 プロでさえ、ほんの数秒、注文を出すのが遅れただけで、何百万円、何千万円の損失を生ずることも全然珍しくないのです。


◆外為証拠金業者、毎日のように潰れていますよ。

 

記事1の「千葉県の76歳の女性」はついている方です。全額取り戻せた上、慰謝料まで取れたのですから。

 これは、たまたま、被告となった会社が潰れていないからです。運のいい人です。 しかし、非常に例外的です。

 記事2にも破綻例がありますが、金融庁のサイトにある報道発表のページを見て下さい。

ここ10日間だけを見ても、これだけ潰れているのです。


  • 平成17年11月17日 「株式会社ワールドサクセスに対する行政処分について」
  • 平成17年11月17日 「コスモエフエックス株式会社に対する行政処分について」
  • 平成17年11月15日 「T.A.M株式会社に対する行政処分について」
  • 平成17年11月11日 「株式会社シーズ・ファイナンスに対する行政処分について」
  • 平成17年11月9日 「ジェイテック株式会社に対する行政処分について」
  • 平成17年11月9日 「ユニバーサル・アセット・マネジメント株式会社に対する行政処分」
  • 平成17年11月8日 「IFC投資顧問株式会社に対する行政処分について」
  • 平成17年11月8日 「株式会社ネクサスに対する行政処分について」

 行政処分にも色々ありますが、これらは全部「業務停止命令」です。

 そもそも、これらの会社は既に破綻しているのです。

 お客さんから集めた「証拠金」という、いわば「元手」の資金でこの会社自身が外国為替取引=ディーリングをやって、失敗して大損。

 債務超過になり、潰れている。判を押したように同じパターンです。

 一般のお客さんは最初に「証拠金」を何十万円、何百万円という単位でこれらの会社に預けるのですが、

 潰れられたらカネは戻らないわけです。業者は債務超過で潰れているのだから、損害賠償請求しても、無駄です。

 つまり、一般の方にとっては、外国為替で自分自身が儲けること自体が難しいばかりではなく、

 外為証拠金業者が倒産することにより、証拠金も取り戻せない、という非常にショッキングな状況に追い込まれる可能性が高い。

 「俺は、しばらくやっているが、もうけてるよ」という方もおられるでしょう。稀にあります。

 しかし、続けていたら、必ず、真っ青になるような経験をすることになります。殆ど断言したいほどです。

 とにかく、止めておいた方がいいです。

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2005.11.17

「年内輸入再開の方針伝達 首相、米国産牛肉で」これは、殆ど犯罪といっていい。

◆記事:年内輸入再開の方針伝達 首相、米国産牛肉で

 

 小泉純一郎首相は16日に京都迎賓館で行われた日米首脳会談で、懸案の米国産牛肉の輸入再開問題について、

「内閣府食品安全委員会の正式な答申を受けて、政府がしかるべき措置を取る」と言明、年内輸入再開の方針を伝えた。

 ブッシュ米大統領は、中国について「今後大きなプレーヤーとなる」と分析し「日米関係が良ければ中国も対日関係、対米関係を強化しようと思うのではないか」指摘。

小泉首相は日中関係の現状について「いくつか問題があるが、自分が首相に就任してからも、いろいろな分野で強化されている」との認識を示した。

 大統領は、牛肉輸入再開問題について「議会などの関心が非常に強い」と指摘。

 首相は「できるだけ早期に日米間で双方向の牛肉貿易を再開したいと希望している」と応じ、

 食品安全委プリオン専門調査会の答申案で年内の輸入再開に道筋が付いたことを説明した。(共同通信) - 11月16日21時3分更新


◆コメント:首相には、日本国民に対する「殺人の未必の故意」がある、と思われます。

 

 あまりにも腹が立って、本気で書き出すととまらなくなりそうなので、できるだけ手短に述べます。

 アメリカ国内における、牛肉の衛生管理体制に関しては、10月30日にやや詳しく書いたので、ご参照下さい。

 アメリカの牛肉は、管理が不徹底です。

 米国は、日本が全頭検査を要求したら「非科学的だ」といい、月齢20か月未満の牛からBSE感染が発見されたことはないから、

 これは、安全だから、さっさと輸入を再開せよと言っています。

 しかし、20か月未満の牛から今までBSE感染が発見されていないから、安全だというのは、全くの偶然に過ぎないかも知れない。

 実際に、日本では生後21か月の牛の感染が発見されたことがあるのです。

 21か月が感染しているならば、19か月だって感染しているかも知れない。

 また、これは読者の方がメールで仰っていたのですが、現時点において、20か月未満の牛のBSE感染を発見する検査技術が無いだけかも知れない。

 確かにそうです。

 そして、そもそも、アメリカの牛は正確な月齢が記録されていない。

 これは、一度欧米に住んでみると分かるのですが、日本人のような几帳面さが欧米人には無いのです。いい加減なのです。

 事務作業なんか、本当に日本人は優秀だと思います。

 日本のコンビニとかドトールコーヒーでアルバイトをしている女の子の方が、イギリスの大手銀行の窓口の人間より10倍ぐらい処理が早く正確です。



 話が逸れました。

 要するに、仮に20か月未満の牛の肉は安全であるとしても、アメリカの牛の月齢が本当は分からないのです。

 肉質からなんとなく見当を付けるという恐ろしく杜撰な方法です。

 つまり、30か月の牛を「15か月だよ、安全だよ」と云うことがあり得ます。



 最後に、BSEの原因となる異常タンパク質プリオンがたまりやすい脳や脊髄を「特定危険部位」(SRM:Specified risk material)と言いますが、

 これが米国牛肉から本当に、確実に除去されているかどうか、極めて疑わしいのです。

 今年、8月15日、米国農務省は、「BSE(牛海綿状脳症)のまん延防止策の一環として実施している脳や脊髄(せきずい)など特定危険部位(SRM)の除去について、

 今年5月までの1年半の期間に手続き違反が全米で1036件も見つかった」と発表しました。

 翌日、さすがにこれはひどい、というので日本の農水省と厚生労働省は、アメリカ側に「一体どういうことだ?」と説明を求めました。

 しかし、それ以来、詳細な情報は伝わってこない。

 特定危険部位除去違反に関して、どうやらアメリカの農務省はそれを知っていながら黙認していたらしいのです。

 何故、放っておくのかというと、分かりませんけど、なにしろ彼らは肉食民族ですから、肉を食わないわけにいかない。

 「いちいち、細かい事、気にするな」という感覚のようです。


◆この状態で輸入を再開すると簡単に請け合う内閣総理大臣。

 

 あまりにもひどくないですか? どう考えても危ないですよね。

 日本の厚生労働省は、今年5月31日、「1980年から1996年の16年の間に、1日でも英国に滞在したことがある人は、献血しないでくれ」という通達を発しました。

 つまり、この期間、危ない肉骨粉を食べていた牛の肉を一度でも食べた人は、人間のプリオン病、クロイツフェルト・ヤコブ病に感染していて、

 この病気は潜伏期間が何十年もある場合があるので、これから発症するかも知れない。

 該当する人の血を他の人に輸血したら、その人もクロイツフェルト・ヤコブ病になる可能性がある、というのが理由です。

 そこまで、厳密な対応をしておきながら、一方ではアメリカから、月齢が正確に分からず、

 特定危険部位が本当に綺麗に除去しているか分からない牛肉や、牛肉加工食品の輸入を再開するという。

 プリオン委員会という専門家の委員会は9月12日まで、米国牛は危険だといっていたのに、

 10月、手のひらを返したように、「輸入を再開しても良いだろう」というレポートを出すのは、

 小泉首相が来日するブッシュに土産を渡すために、圧力をかけたとしか考えられません。


◆未必の故意

 

 「未必の故意」とは法律用語です。

 刑法では或る犯罪をわざとやったのか、うっかりやったのかを「故意」と「過失」という言葉で表現します。

 未必の故意とは、たとえば、人通りがもの凄い、渋谷の通り沿いに立っているビルの屋上から、

 煉瓦かコンクリートブロックを地面に向って投げ落としたら、人の頭を直撃して、死亡したというようなケースにおける「故意」です。

 つまり、「誰か特定の相手ではないが、これをやったら、誰かに危害が及ぶ可能性が極めて高いことを認識していながら、

 そうなっても良いと考えて、その危険な行為を実行する意思」
です。

 私が小泉首相には日本国民に対する、殺人の未必の故意があるというのは、

 首相は「米国産牛肉はBSEに感染している可能性がかなり高く、感染した肉を人間が食べれば、クロイツフェルト・ヤコブ病に罹患する可能性があること、

 そして、クロイツフェルト・ヤコブ病は現時点では、発症したら治療法がない」ことを知っているのに、

 米国産牛肉の輸入を再開して、日本人に食べさせようとしているからです。

 これは、「誰かがBSE感染牛肉を食って、クロイツフェルト・ヤコブ病になって死ぬかもしれないが、構わない」と考えていることに他ならない。

 これが、殺人の未必の故意でなくて、何でしょうか。

 恐ろしい指導者ですね。

 そして、ここで述べたぐらいのことは当然承知している大新聞、テレビ局が政府批判をしない。

 この国は全体主義国家ですか?

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2005.11.16

「美智子様は紀宮さまを抱きしめ、何度も『大丈夫よ』と繰り返した」そうです・・・。

◆記事:紀宮さまと黒田さん、ご結婚(TBS)

 

 紀宮さまと黒田慶樹さんの結婚式と披露宴が15日、東京の帝国ホテルで行われました。

 旅立ちの朝、皇后さまは紀宮さまを抱きしめ、「大丈夫よ」と繰り返したと言います。

 15日午前10時過ぎ、紀宮さまを乗せた「プリンスロイヤル」が皇居正門を出発しました。

 式に臨まれる真っ白いドレスの紀宮さま。見送りに来た人に軽く会釈をして、笑っていらっしゃいます。

 非常にすがすがしい晴れやかな表情です。

 15日朝、車の窓を開けて、何度も会釈される紀宮さま。

 出発の朝、母である皇后さまは紀宮さまを抱きしめ、何度も「大丈夫よ」と繰り返したと言います。

 また、天皇陛下は、「家族の絆は変わらないので、折々にいらっしゃい」とおっしゃったと言います。

 午後4時過ぎから開かれた披露宴。紀宮さまは、「皇后陛下がこれまで身に着けたものを着たい」と希望され、

 美智子さまの着物を着て披露宴に臨まれました。

 皇后さまは、最初、戸惑っていらっしゃったということですが、紀宮さまの希望に沿いたいと、一緒に和服を選んだと言います。

 皇族の方々のほか、学校の恩師など出席者は120人。

 その中をお二人はゆっくりと進まれました。拍手で迎える天皇・皇后両陛下。

 14日夜、皇后さまは、急に寒くなったことを心配し、紀宮さまに温かい葛湯や生姜湯を飲ませて、疲れを気遣われたと言います。

 最初の挨拶は、黒田さんが東京都職員ということで、この人から・・・。

 「慶樹さん、清子さん本当におめでとうございます。フランスの哲学者のベルクソンが、神仏を信じる信仰と結婚は本質的に似ている。

 その本質の原理は一種の『賭け』と書いている。何百万、何千万という男女から一人を選んで契りを結ぶ・・・。

 生涯の伴侶とするという選択も、また『賭け』と思います。おめでとうございます。乾杯!」(石原慎太郎 都知事)

 シャンパンで乾杯。この後、お二人はメインテーブルへ。(TBS 15日17:55)


◆コメント:実にめでたい。

 

 紀宮さまはお綺麗でした。ただ美しいと言う以上に「品格」がある。

 きょう、引用した記事は長く、話しことばなのですが、これは、Yahoo!ニュースの動画(TBS系)に載っている、

 実際に放送で読まれた原稿(スクリプトといいますね)だからです。

 長いけれども、今日の紀宮さまご結婚関連ニュースの中では一番良いと思ったのです(一部カットしてあります)。



 テレビのニュースを見たり、ブログを見ると、素直に、お二人のご結婚を祝福するコメントが多い。

 これは、良いことだと思うのです。

 皇族を敬うかどうか、という話ではなくて、とにかく今日のお二人のご結婚は「おめでたい」こと、「慶事」ですよね。

 おめでたいことを世間が冷たく無視して、邪悪な犯罪にばかり興味を示す世の中になったら、その社会はおしまいだと思います。

 そりゃ、今日、「おめでとうございます」と言っている人だって、ミーハー的な人が多いでしょう。

 それぐらいは、私も承知している。

 しかしながら、それでも、他人様の慶事を嫉まず「おめでたい」と言う人のほうが多い世の中は、健全だと思うのです。


◆本来はもっと早く挙式するはずでした。

 

 紀宮さま、清子内親王殿下と黒田さんの結婚式は、本当はもっと早く行われるはずでした。

 ご結婚が決まったのは、2004年の1月です。

「決まった」とは、黒田さんがプロポーズして、紀宮さまがそれを受けられた、という意味です。

 2004年(去年)秋、ご婚約を発表しようと言うとき、10月23日、新潟中越地震が起り、

 紀宮さまは被災者に気を遣って、婚約発表を延期なさいました。そして、2004年12月中旬に今度こそ婚約発表、というときに、

 大叔母(祖父母の姉妹、祖父母の姉なら大伯母、妹なら大叔母)さまの高松宮喜久子さまが2004年12月18日、逝去され、また婚約発表が延期になったのです。

 紀宮さまは、婚約発表しようとして、2度、延期を余儀なくされたのです。あの時は、お気の毒でした。

 だって、想像してみてください。自分の慶事を発表しようとしたら、二回続けて不幸が起きるというのは、誰だってあまり良い感じでは無いはずです。

 だれの所為でもないのですが。

 で、やっと、昨年の暮れ12月30日、正式に婚約発表だったのですね。こんなに暮れも押してからの発表だったのですね。

 今日調べて、改めて知りました。記憶というのは曖昧です。


◆だから、もう少し豪華にして差し上げても良かったかなと・・・。

 

 皇族の方は、国民の税金なのだから、と普段の生活が質素で、美智子様など、ドレスが古くなって、ほつれがあるのを、ご自分で修復して着ておられるそうです。

 ピアノがお好きなのに、ご結婚の際、実家正田家から運んできた、要するに半世紀近く前のをまだ使っておられるとか。

 無駄遣いしろ、とは云いませんが、庶民だってもう少し派手な消費生活を送っているのに、

 日本国憲法ではっきりと、「日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴」とされている天皇陛下が、そこまで切りつめなくてもいいと思います。

 今日も、紀宮さまのご希望とのことですが、披露宴で、料理が三品ですよ。三品。

 三品で4時間ぐらい披露宴やったんですよ。終わりの方、みんなワインを飲むしかなかったらしい。



 まがりなりにも、両陛下のご臨席(披露宴に両陛下が出席なさるのは初めてだそうだ)のもと、陛下のお嬢様が嫁がれるという目出度い席ですぞ。

 新婚旅行は無し。伊勢神宮参拝が実質的なハネムーンになるだろうって、そりゃそうだろうけどさ。

 仮住まいとはいえ、内親王が1LDKで新婚生活だそうですよ。

 贅沢をしろとは言わないが、いくら皇籍を離脱し、一般人になるからと言って、普通の一般人より大幅に質素にしなくてもいいのではないだろうか。

 繰り返すが、天皇陛下のお嬢様であることに変わりはないのだ。


◆美智子様の胸中を思うと・・・。

 

 今朝、美智子様は「サーヤ」を抱きしめて、「大丈夫よ」と何度も仰ったという。

 平静に見えても、皇族から一般人になることに関して、清子内親王が全く不安を抱かないわけがない。

 それを察して、我が子を励まされた美智子様の胸中を思う。親の愛情は尊い。

 すみません。こちらも泣けて、多くを語ることができません。ここまで。

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2005.11.15

清子内親王殿下、黒田さん、ご結婚おめでとうございます。

◆記事:紀宮さま「朝見の儀」で両陛下にお別れ

 紀宮さまは12日午後、皇居・宮殿「松の間」で「朝見(ちょうけん)の儀」に臨み、天皇、皇后両陛下にお別れのあいさつをされた。

 この後、両陛下と紀宮さまは、黒豆を日本酒とみりんで煮つめた煮汁の「九年酒(くねんしゅ)」でお別れの杯を交わされた。

 紀宮さまは儀式後、宮内庁を通じ、「長く親しんだ所を去ることが強く実感され、静かな寂しさも感じております」との感想を示された。

(読売新聞) - 11月12日20時58分更新


◆朝見の儀おことば

 ●清子内親王殿下 謝恩の辞(天皇陛下へ)

 今日(こんにち)までの長い間,深いご慈愛の中でお育ていただきましたことを心よりありがたく存じます。ここに謹みて御礼申し上げます。

●天皇陛下 おことば

 この度の結婚は誠に喜ばしく,心からお祝いします。

 内親王として,その務めを立派に果たし,また,家族を優しく支えてきたことを,深く感謝しています。

 結婚の上は,これまでの生活の中で培ってきたものを更に育み,二人で力を合わせて楽しい家庭を築き,

 社会人としての務めを果たしていくよう願っています。二人の幸せを祈ります。

●清子内親王殿下 謝恩の辞(皇后陛下へ)

 今日(こんにち)までの長い間,深いご慈愛の中にお育ていただきましたことを心よりありがたく存じます。ここに謹みて御礼を申し上げます。

●皇后陛下 おことば

 この度はおめでとう。

 これまで内親王として,また,家族の一員として,本当によく尽くしてくれました。

 どうか新しい生活においても,家庭を大切にしつつ,社会の良き一員となっていかれますように。

 お二人の健康と,幾久しい幸せを祈ります。


◆ニュース映像を見ていたら泣けました。

 「紀宮さま」というのは、本当は「ご幼少時のご称号」であり、正式には清子(さやこ)内親王殿下とお呼びするのが正しい。

 皇后陛下が紀宮さまを「サーヤ」という愛称で呼んでおられたのは有名だが、それは、ここから来ているのだ。



 NHKで、清子内親王殿下が、天皇・皇后両陛下にお別れを告げる映像を見た。

 上に引用した内親王殿下と両陛下のお言葉は、そのまま正確に記録されている。

 こうして文字にすると、雰囲気が分からないが、両陛下が清子さまにお言葉を述べられるときの表情は、

 天皇陛下、皇后陛下という以前の「父親」と「母親」のお顔であった。

 何とも言えず優しく、慈愛に満ちていながら、寂しさを堪えておられる様子がわかり、見ている私まで、胸がつまった。

 やんごとなき方々は、こう言うときでもセレモニーとして、品格のある言葉で意思疎通しなければならない。

 決して感情の奔流を見せてはならない、という長年のしきたりが、こう云っては失礼だが、お気の毒な気がした。



 清子内親王殿下とて、本当はこみ上げるものがあったに違い無い。

 しかし、内親王殿下の、最後までいささかも取り乱すこともなく、淡々と儀式をこなして行かれる立ち居振る舞い。

 そして、あの姿勢の良さは、さすが、天皇家に育った方だけのことはある。実に実に毅然として立派だった。

 もう日付が変っているから、今日(15日)が結婚式だ。

 ところが、折しも、同じ日にブッシュ大統領が来日する。

 気が利かない野郎だ。

 日本政府も気が利かないというか、段取りが悪すぎる。何とか他の日に調整がつかなかったのか。

 まあ、おめでたい日だから、これぐらいにしておこう。


◆末永くお幸せに・・・。

 

 清子さま、黒田さん、

 ご結婚、誠におめでとうございます。

 ご多幸、ご健勝を、お祈り申し上げます。

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2005.11.14

16年前の今日(11月13日)日本で初めての生体肝移植が行われました。

◆16年前の今日(11月13日)日本で初めての生体肝移植が行われました。

 

 初めて日本で生体肝移植が行われたのは、1989年11月13日、島根医大付属病院第二外科だった。

そのときのいきさつは、三年前、Enpituにかなり詳しく書いたので、是非読んで頂きたい。

これから書くことは、3年前と重複する部分がかなりあるが、書かずにいられない。



 1960年代に札幌医大で心臓移植が行われたが、残念ながら失敗に終わった。

 その際、ドナーが本当に脳死状態だったのか、また、レシピエント(臓器の提供を受ける患者)が本当に、移植適応だったのか、などの疑惑が生じた。

 その他恐らく「白い巨塔」の中で賛否両論があったのだろう。すったもんだの大騒ぎに発展した。

 移植の執刀医は殺人罪、業務上過失致死罪で告発されるが、結局不起訴となった。

 それ以来、30年間、日本の医学界では「移植」はタブーとなり、この分野で他国に遅れを取ったと云われる。

 その「移植=タブー」の不文律があるのに、島根医大第二外科、永末直文当時助教授が生体肝移植の実行を決断したのである。


◆「初めて」のことを手がける勇気

 

 この、「初めてやる」という決断は医療に限らず大変に勇気がいることである。

 失敗したら勿論、散々叩かれるし、成功してもやっかみで色々と云われる。それは100%の確率で起きる。

 永末医師ら島根医大のチームの上層部は失敗したら、大学を追われる覚悟でいた。

 島根医大の第二外科では、ブタを用いた肝移植の研究を行っていた。

 つまり、いずれはという気持ちは、医局員は皆抱いていたのだろうが、あまりにも突然、現実となった。

 医局員全員(ナースも含めて)を集めたミーティングの席で、手術を行うつもりだという永末助教授の言葉を聞いて、全員押し黙ってしまった。

 すると、永末医師は、

 

「我々は、肝移植を標榜している。赤ちゃんは死にかけている。家族は結果は問わないから、やってくれと云う。これで、この手術を断るぐらいなら、明日から、肝移植の研究など、全て止めよう」

 と云った。これで全員、肚をくくった。

 当時の手記では、永末医師は、失敗したら故郷の福岡に帰り、開業医になればいいと思っていた、と書いていた。

 それだけでも感激したが、後年、NHKの「プロジェクトX」に出演した折、実は医師も辞めなければならなくなるかもしれないというところまで覚悟を決めていた、と永末医師は語った。

 「私は英語が得意だから、塾で英語を教えれば食べるぐらいは何とかなるのではないかと思った」 と淡々と語る永末氏の言葉を聞いた人は多いと思う。

 あの言葉に心を動かされない人は、自分の人格に問題がある可能性を疑った方が良い。

 私の身内の者がその生体肝移植チームの一員だったので、どれほどすさまじい闘いであったか、分かるとは云わぬが、かなり知っている。

 とにかく半年ぐらい、歩いて3分のところにある自宅に帰れない。

 奥さんが着替えと弁当を持ってくる。ありとあらゆる合併症が起きる。

 それが何時起きるか勿論分からないので、24時間、緊張の連続であったという。

 いくら医師になる人材が優秀だと云っても、人間が他の人間の命を救うため、

 これ以上出来ないほどの努力を続けている姿は「神々しい」(こうごうしい)といって良いぐらいだった。

 また、永末医師は移植手術への日本社会の偏見をなくすためには、全てを明らかにするべきだといい、

 移植手術中の比較的重要ではないエラーも含めて、治療上の失敗を全て公表して、「この部分は、自分の失敗だ」と記者会見で述べた。

 とにかく、その立派さは並ではない。


◆杉本裕也ちゃんは助からなかった。

 

 ありとあらゆる努力を重ねたのに、結局裕也ちゃんは助からなかった。

 しかし、家族は、島根医大第2外科の医師、ナース、あらゆる人がどれほど、全力を尽くしたかを十二分に理解していたので、

 未練がましいことは一言も言わず、永末医師らに感謝した。

 裕也ちゃんが亡くなった後、弟が生まれた。お母さんは、永末直文の「直」と裕也の「也」を取って、「直也」と名付けた。

 島根医大のあと、京大や信州大が生体肝移植を次々と手がけて、成功した。

 私は、それは、その手術によって助かった患者さんがいるのだから、良いことなのだが、どこか、「狡いなあ」という気持ちを抑えられなかった。

 旧帝大系の大学は、結局、自分は最初にやらずに新しい大学に一例目をやらせておいて、

 その時の経過を参考にして、手柄だけ持っていったような印象を否めない。


◆この本を読むべきだ。

 

 今、Amazonで、「生体肝移植」で検索すると、自民党の河野洋平と息子の太郎の本が一番売れているようだが、これはどうでもいい。

 大学が書いた本では、岩波新書の生体肝移植―京大チームの挑戦が一番読まれているようだ。

 しかし、私は何と言っても、日本で最初にタブーとされてきた「移植手術」の突破口を開いた島根医大の勇気と努力と功績を讃えたい。

 永末先生が中心になって、他のチームメンバーも少しずつ書いたものをまとめた決断―生体肝移植の軌跡こそ、最初に読まれるべきだと確信する。

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2005.11.13

インフルエンザ薬:タミフルで異常行動死 少年2人」どの薬にも「重大な副作用」がある。

◆記事:インフルエンザ薬:タミフルで異常行動死 少年2人

 

 インフルエンザ治療薬のリン酸オセルタミビル(商品名タミフル)を飲んだ患者2人が、飲んで間もなく行動に異常をきたし、1人は車道に走り出て大型トラックにはねられ死亡、もう1人はマンションの9階から転落死していたことが11日、分かった。

 薬の添付文書には副作用として「異常行動」(自分の意思とは思えない行動)や「幻覚」などが起きる場合があると書かれているが、死亡につながったケースの判明は初めて。

 厚生労働省安全対策課も死亡例の一つを副作用として把握しており「異常行動の結果、事故死する可能性もある」としている。

 NPO法人「医薬ビジランスセンター」(大阪市)理事長の浜六郎医師が12日、津市で開催中の日本小児感染症学会で発表する。2人の遺族が浜医師に相談した。

 岐阜県の男子高校生(当時17歳)は昨年2月にインフルエンザと診断され、正午過ぎにタミフルの通常量、1カプセルを自宅で飲んだ。

 その後、家族が不在の間にパジャマ姿で素足のまま外出し、雪の中を自宅のフェンスを乗り越えて走るなどした。

 午後3時45分ごろ自宅近くでガードレールを乗り越え大型トラックに飛び込み死亡した。



 タミフルの輸入販売元の中外製薬は同年7月、「薬との因果関係が否定できない例」として厚生労働省に報告した。



 愛知県の男子中学生(当時14歳)は今年2月5日にインフルエンザと診断された。

 午後4時ごろに1カプセルを飲み、午後5時半ごろ自室に戻った。午後6時ごろ、自宅マンションの前で全身を打って倒れているのが見つかり、そのまま死亡した。

 警察によると9階の手すりに指紋が残り、手すりにぶら下がった後に落ちたとみられる。

 2人とも、薬を飲む前に精神的な異常は全くなかったという。



 この他にも10代の女性が服用後2日目に窓から飛び降りようとして母親に止められた例があり

、厚労省は昨年6月に「医薬品・医療用具等安全性情報」を出し注意を呼びかけた。添付文書に副作用として異常行動を盛り込むことも指示した。

 同省関連の独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」には、00~04年度に、服用後の幻覚や異常行動などが延べ64件報告されている。



 奥西秀樹・島根大医学部教授(薬理学)は「脳内には興奮を抑える仕組みがあるが、タミフルはこの仕組みをさらに抑え異常な興奮などを起こすのではないか」と推定する。

 未成年者や乳幼児は化学物質から脳を守る機構が弱く、特にこうした副作用を受けやすい。

 他に幼児6人が服用後に突然死しており、同様の副作用と疑われるという。

 タミフルはスイス・ロシュ社が開発した。ウイルスの増殖を妨げ熱がある期間を1日程度縮める効果がある。

 国立感染症研究所の医師によると日本での年間販売量は1500万人分で、世界の8割以上を占める。 

 毎日新聞 2005年11月12日 3時00分


◆コメント:毎日新聞は、結局どうしろというのだ?

 

 鳥インフルエンザの世界的流行の可能性があるという。

 何故、大騒ぎをしているかというと、感染した場合、死亡率が高いからである。

 中国や、東南アジアは大騒ぎだ。ベトナムでは既に42人が鳥インフルエンザで死亡している。

 今までのところは、鳥から感染した例(鳥そのものとの接触や、排泄物の処理を通じて。食べて感染という話はまだ無いはず)ばかりだが、

 WHOは「現在のウィルスが変異してヒトからヒトへ感染するような事態になれば、世界中で数百万人が死亡するだろう」とかなり深刻な警告を発している。

 あるWHOの高官は悲観的で、新型ウィルスは必ず発生するだろうという。



 渡り鳥がウィルスを運んで来るのであるが、「渡り鳥が移動する主要な八経路のうち三経路が、世界の20%あまりの家禽を養う中国の上を通っている。

 その60%が放し飼いであり、防疫難度は高い」としており、感染を完全に防ぐのは極めて難しいのだそうだ。

 その渡り鳥は日本にもくるわけだから、日本政府も珍しく早めに厚生労働省が対策本部を設置している。

 新型のウィルスが発生したときのことは、ひとまず留保する。

 現在のH5N1型ウィルスによって発症するインフルエンザには、スイスの大手製薬会社ロシュが製造する「タミフル」という薬が有効だとされている。

 発症から48時間以内に服用すれば、体内でウィルスが増殖するのを抑制する働きがあるそうだ。

 他にも同様の効果が期待出来る薬が何種類もあればいいのだが、ない。

 このため、世界中の政府からロシュ社にタミフルの注文が殺到していて、ロシュ社は薬の製造が注文に追いつかず、大変らしい。


 ◆どの薬にも副作用はあるんだから、あまり神経質になっても仕方がない。

 

 あまりにも有名なサイトなのでリンクは貼らないが、「お薬110番」という処方薬の膨大なデータベースサイトがある。

 これを見てみると、全ての薬に「重大な副作用」という項目があるのだ。

 例えば、ずーっと昔から非常に一般的に使われている抗うつ薬でアナフラニールという薬があるが、私も飲んでいたけれど、

 これには、悪性症候群、セロトニン症候群(興奮・混乱状態、もうろう状態、取り乱す、幻覚、発汗、体のぴくつき、ふるえ、けいれん、発熱。)とか、

 幻覚、せん妄、錯乱、けいれん(現実でない人や物が見えたり声が聞こえる、混乱、興奮、取り乱す、けいれん)などという、素人目には怖くなるような言葉がこの後も延々と続いている。

 アナフラニールを取り上げたのは実際に私が3年間ぐらい飲んでいたことがあるからだが、「重大な副作用」はタダの一度も起きなかった。

 また、外来で知り合った患者でそのような経験をした人はひとりもいなかった。

 他の科の薬の添付文書にもやはり、重大な副作用が必ず列挙されている。

 勿論これは、製薬会社が免責の為に載せている。

 たとえ、確率は非常に低くても、過去、実際に起きた副作用は、明記しておかないと、訴えられるからだ。

 現実には、滅多なことでは「重大な副作用」は起きない。


◆伝染病なんだから、飲んで貰わないと、周囲が迷惑だ。

 

 毎日新聞は、不必要に不安を煽っている。

 まず、確認しておかなければいけないのは、少年二人の「異常行動」とタミフルの服用との因果関係は証明されたわけではない、ということである。

 謂わば状況証拠だけなのに、この新聞記事は、既に因果関係は証明済みであるかのような印象を与える。

 ミス・リーディングな記事だ。

 H5N1型ウィルスによるインフルエンザに罹った心配性の患者が、この記事を覚えていて、

 非常に起きる確率が低い副作用を恐れて薬を飲まないことにより、体内でウイルスが増殖し、ある時変異して周囲の人に感染し、

 最悪の場合死亡する。ということになりかねない。

 インフルエンザはれっきとした伝染病であり、自分だけの問題ではないのだ。そして特に今回のウィルスはタチが悪いのである。


◆結論:鳥インフルエンザになったとき、薬の副作用と、病気そのものとどちらがより深刻か

 

 問題はそういうことだ。

 仮に、タミフルに、異常行動を起こさせる副作用があったとしても、 貴方が鳥インフルエンザに罹ったとしたら、

 異常行動で死ぬ可能性と、病気そのものにより死ぬ可能性とでは、どちらの方が大きいか?

 さほど難しい話ではないでしょう。
 とにかく、タミフル以外殆ど選択肢が無い日本人に、この薬で頭がおかしくなって飛び降りて死んでしまった人がいますよ、

 と不必要な心配材料、恐怖を与える毎日新聞の意図が分からない。


◆追加:2003~2004年、日本でタミフルを服用した人は600万人もいる。(WHO疫学週報)

 

 今、発見したが、<WHO疫学週報 Weekly Epidemiological Report>というページがある。これは小樽市地域感染症ネットワークのサイトの一部であるが、有益な情報が掲載されている。

 さて、<WHO疫学週報 Weekly Epidemiological Report>は長いページなので、Ctrl+Fでページ内を“タミフル”で検索してください。

 すると、「日本では、2003-2004に600万人がタミフル服用。」というセンテンスを見つけるだろう。

 WHOが発表する数字なので、まず信用しても良いと思う。

 冒頭の毎日新聞の記事によれば、2000年から2004年の間に、タミフル服用後の異常行動、幻覚が「延べ」64件報告されているという。

 延べ数だから、複数回の重大な副作用を経験した患者がいるわけで、実際の患者数は64人より少ないことになる。

 WHOのタミフル服用者数カウントと期間が重なっていないので科学的、統計学的につっこまれると困るが、「傾向」は分かるでしょ?

 ものすごく大雑把なことを云うと、一年間に300万人ぐらいの人がタミフルを飲んだわけです。

 一方重大な副作用は4年間で64人。

 統計学的、科学的な主張にはならないだろうが、副作用の出る確率がかなり低いと言うことは、素人なりに分かる。

 だから、あまり気にしなさんな、と言いたいのだ。

 勿論、絶対安全とは云いませんよ。

 いくら確率が低くても、運が悪い人は最初に一錠のんで、異常行動を起こすかもしれない。

 「可能性」と云ったら、それは、ありますよ。しかし、そこまでおどおど気にしても仕方がないでしょう。その時は運が悪かったと諦めるのだ。

 貴方も私も明日、クルマに轢かれて死ぬ「可能性」はゼロではない。

 だからといって、会社や学校を辞めるという人はいないでしょう。
 「可能性」を怖がっていたら、一生、一歩も外に出られない。「タミフル」も、そんなものだよ。

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2005.11.12

「7-9月、年率1・7%増 GDP、4期連続の成長」はしゃいではダメです。デフレーターマイナス連続30ヶ月。

◆記事:7-9月、年率1・7%増 GDP、4期連続の成長

 

 内閣府が11日発表した2005年7-9月期の国内総生産(GDP、季節調整値)速報値は、物価変動を除いた実質で前期(4-6月期)比0・4%増、年率換算で1・7%増となった。

 名目も0・2%増(年率換算0・7%増)で、経済成長率は実質、名目ともに4・四半期連続でプラスとなった。

 成長率に対する寄与度では内需が0・5%の押上要因となった。外需は輸入が輸出を上回り急増したことで成長率を0・1%押し下げた。

 景気をけん引してきた個人消費や設備投資が減速し一服感が出たものの依然堅調で、成長率自体は鈍ったが、

 民間需要主体の緩やかな景気回復が続いていることが確認された。

 ただ総合的な物価変動を示すGDPデフレーターは、前年同期比1・1%の下落と30期連続のマイナス。

 前期より下落幅は0・2ポイント拡大し、デフレ状態は依然続いており、

 金融緩和をめぐる今後の政府・日銀の動きが注目される。(共同通信) - 11月11日13時32分更新


◆コメント:こういう報道をするから、バブルになるんだ。

 

 今日は、四半期に一度行われるGDP(国内総生産)の発表がありました。

 GDPには、実質と名目があります。

 実質は、モノやサービスの生産量です。「量」ということを覚えておいてください。

 名目は、金額です。実際の「売上げ」だと言っていい。



 「実質」という言葉と、「名目」という言葉の印象からすると、「名目」は見せかけ、「実質」は本当の姿という感じですね。

 だから、実質成長率の方が大事に思えます。

 これが、インフレのときは、その考え方で良いのです。

 前の四半期と次の四半期と生産量が変らなくても、例えば、同じ100単位しか生産しなくても、

 物価が勝手に上昇し続けるインフレ時には、、ものの値段が仮に2倍になれば、名目GDPは2倍になる。

 これでは、経済活動の実際の状況を正しく見られない。だから物価上昇率が100%だから、それを勘案する。

 そうすると、なんだ、実質GDPつまり、生産は増えていないじゃないか、と、いう風に見るのです。


◆今はデフレですから、名目GDPに着目します。

 

 日本は長いデフレ不況にあります。モノの値段が下がり続けています。

 だから、実質、つまりモノ・サービスの生産が増えたといっても、実際の儲けが増えないのです。

 そこで、名目GDP成長率の方に着目します。

 記事によれば、7-9月の実質(「量」ですね)は4-6月比プラス0.4%。

 名目は、プラス0.2%です。

 しかし、ここで、「お、名目もプラスじゃねえか」というのは早とちりです。


◆一番見なければいけないのはGDPデフレータです。

 

 7-9月期の実質はプラス0.4パーセント。

 同じ時期の名目はプラス0.2パーセント。

 確かに名目はプラスですね。しかし、実質、つまり量は0.4%増えているのに、名目(もうけ)は0.2%しか、増えていないですね。

 何故でしょう?

 物価が下がり続けている、つまりデフレーションが継続しているからなのです。

 名目GDPを実質GDPで割った数値をGDPデフレーターというのですが、

 記事の最後に「総合的な物価変動を示すGDPデフレーターは、前年同期比1・1%の下落と30期連続のマイナス」とあります。

 これが一番気にしなくてはいけない数字です。



 GDPデフレータ=名目GDP÷実質GDP

 ですから、この数値の変化がマイナスになるということは、分子より、分母の増え方が大きいということですよね。

 言い換えれば、量が増えている割に儲けは増えていない、というときにGDPデフレーターの変化はマイナスになります。

 そのマイナス状態が何と30か月も続いているのです。


◆株式市場は、はしゃぎすぎ。

 

 今日も多分、海外のファンドが買ったのでしょう。東京証券取引所で日経平均株価は今年一番の高値(たかね)で終わりました。

 相場は、株も債権も外為も、コモディティ(商品先物取引)も原理は同じです。

 買う人が売る人より多ければ上がります。但しそれが、必ずしも経済の実態を正確に反映しているわけではないのです。

 はっきり言って、ここ数ヶ月、株式市場は経済の実態と乖離して、買われすぎです。バブルです。

 こう言うのは一旦メッキが剥がれたらすごいですよ。暴落します。

 証券会社はしきりにミニ株取引しませんか、などと働きかけてきます。

 しかし、今のように、相場が一人歩きをしているとき。言い換えれば、市場参加者が確たる根拠も持たずに買っているときは、追いかけて買わない方がいいです。

 最近は株のインターネット取引が盛んで、東証の取引量がふくれあがっていますが、それだけ素人の市場参加者が増えているということなのです。

 素人はなれていませんから、海外のファンドが利食い売りなど始めたら、狼狽売りが殺到して、株式市場が大暴落します。その危険が今は大変大きい。

 「私もネットで株をやってみようかな」という方。

 最終的には自己責任ですから自分で決めるしかありませんが、私の個人的見解では、今は止めておいた方がいいような、予感が致します。

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2005.11.10

「陸自宿営地付近に2発着弾 サドル師派の攻撃か」 早く撤退しないと手遅れになる。

◆記事1:陸自宿営地付近に2発着弾 サドル師派の攻撃か

 

 【サマワ8日共同】陸上自衛隊が駐留するイラク南部サマワで7日夜(日本時間8日未明)に起きた宿営地付近などでの連続攻撃で、

 地元のイラク警察幹部は8日、宿営地の外側に2発の迫撃弾が着弾したと語った。

 陸自側は着弾についてはいずれも未確認だが、1発目の飛行音は確認した。

 警察は陸自を占領軍とみなし反発を続けているイスラム教シーア派の反米指導者、サドル師派による攻撃の可能性が高いとみて調べを進めている。

 幹部によると、1発目は7日午後10時ごろ、さらに2発目が同11時半ごろに宿営地北方に着弾した。

 いずれもサマワ北部のサドル師派が多数居住する住宅地から発射されたとみられる。(共同通信) - 11月8日21時51分更新


◆記事2:半年以上の派遣延長必要 イラク自衛隊で政府筋

 

 政府筋は8日夜、イラクで人道復興支援などに当たっている陸上自衛隊部隊について、

 12月14日に期限切れとなる派遣期間を最低でも半年間延長する必要があるとの見解を明らかにした。

 同筋は、イラク新憲法草案が10月の国民投票で承認されたことを踏まえ、

 来年2、3月までイラク政府の状況や治安情勢を見守ることが不可欠と指摘、来春に自衛隊撤収を判断する可能性に含みを残した。

 その上で、仮にその段階で撤収する場合でも作業に約3カ月かかるため、「(派遣延長期間は)最低でも事実上半年は必要だろう」としている。

 政府は12月にイラク派遣延長やその期間を決定、イラク復興支援特措法に基づき基本計画を変更する。(共同通信) - 11月9日0時19分更新


◆参考1:イラク復興支援特別措置法第2条第3項

 

 対応措置については、我が国領域及び現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、

 かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域において実施するものとする。


◆参考2:イラク復興支援特別措置法第9条(配慮事項)

 

 内閣総理大臣及び防衛庁長官は、対応措置の実施に当たっては、その円滑かつ効果的な推進に努めるとともに、

 イラク復興支援職員及び自衛隊の部隊等の安全の確保に配慮しなければならない。


◆コメント:行政府は法律を守ってくださいね。

 

 自衛隊のイラク派遣に関しては、政府にとって都合の悪い事は書かないようにマスコミに圧力がかかっているのは、ほぼ明らかなのだが、

 それでも共同通信がはっきりと、イスラム教シーアはの反米指導者サドル師(派)は陸上自衛隊を「占領軍」と見なしていると書いている。

 多分控えめに書いているはずだから、現地は相当、危険が迫っているはず。

 参考1は、かの有名なイラク復興支援特別措置法第2条第3項で、自衛隊が活動する場所は、その期間を通じて「非戦闘地域」でなければならない、とする根拠である。

 参考2は読んでいただいたとおり、である。

 私は、どう見ても、サマワに駐屯する陸自には危険が迫っていると思うのだが、どうやら政府にはあまり危機感がなく、派遣期間を延長するそうだ。

 政治家は楽だね。自分は絶対サマワに行かないでいいもんね。絶対に自分は弾にあたらないもんな。

 これは、しかし、またアメリカの要求ですか?

 今年は、年次要望書は今年はまだ来ていないが、これは、来週ブッシュが来日するときに持ってくるんだろう。

 アメリカの要求に応じてイラクに自衛隊を派遣したが、アメリカは中国と組んで日本の国連安保理常任理事国入りを妨害しました。

 それでもまだ、小泉首相はブッシュに忠誠を誓うのか。

 とにかくアメリカが何と言おうが、イラク復興支援特別措置法第2条第3項と、第9条により、自衛隊を引き上げさせなければならないことは、明らか。

 日本は法治国家ですね?

 イラク復興支援特別措置法は、国権の最高機関である国会が制定した法律なのですから、内閣はこれにしたがわなければならないのです。

 それなのに、その当たり前のルールが当たり前のように破られようとしているのです。

 これで良いのでしょうか?

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2005.11.09

「日航が無配転落、全従業員の賃金10%カット」←給料減らせば安全性が増すのでしょうか?

◆記事1:日航が無配転落、全従業員の賃金10%カット

 

 日本航空は7日、財務体質を強化するため、2006年3月期の株主への配当(当初予定は1株あたり4円)を見送ると発表した。

 日航はこれを受けて経営合理化を進め、全従業員を対象に、賃金を平均で10%カットする。

 不採算の国際線の縮小や、燃費効率の良い中小型の航空機材の導入も進める。

 一連の合理化策は同日午後、「事業再生プラン」として正式発表する。

 日航が7日発表した05年9月中間連結決算は、原油高騰による費用増に加え、相次ぐ運航トラブルで国内線を中心に旅客離れが進み、税引き後利益が120億円の赤字になった。

 中間期の税引き後利益が赤字となるのは、03年9月期以来、2年ぶりとなる。 (読売新聞) - 11月7日12時54分更新


◆記事2:最近の航空機関連トラブル


  • ジェイエア機、主翼フラップ作動せず名古屋に引き返す - 読売新聞 - 社会 (11月8日)

  • 全日空機、右エンジンだけで25分飛行…緊急着陸(読売新聞) (6日19時59分)

  • 伊丹に緊急着陸のJAL機、循環ポンプ異常か(読売新聞) (4日6時46分)

  • <JAL機>エンジン異常 大阪空港に緊急着陸(毎日新聞) (3日0時30分)

  • 羽田行き日航機が緊急着陸 左エンジン止め(共同通信) (2日21時39分)

  • <着陸許可>管制官がJAL機に出し忘れ 大阪空港で(毎日新聞) (2日21時17分)

  • JAL系機で不具合相次ぐ 離陸中止、再出発後も異常 - 共同通信 - 社会

  • 飛行中にエンジン部品脱落 全日空機が緊急着陸(共同通信) - 10月29日(土)23時26分

  • 全日空機が引き返す 車輪格納できず。 同型機でトラブル相次ぐ 10月26日(水)


◆コメント:職員の給料を減らせば安全になるのか?

 

 日本航空というのは、何だか無茶苦茶な事になっている。

 日本の産業界の常識だが、日本航空は対外的には一つの会社なのだが、内部に労働組合が10種類もあるのだ。

 地上職、客室乗務員、パイロット、整備士、その他諸々。

 一体どうしてこうなったのかは、ややこしすぎて、正直に言うと私もすぐには、わからない。

 例えば、日本航空客室乗務員組合のサイトの中にある、

 日本航空の労働組合 というチャート(っていうのかね?)を見ると、とにかく凧糸がこんがらがったような状態であることだけは分かる。

 大きく分けて、本来の労働組合、つまり組合員の権利を守るための労組と、

 会社がこれを妨害させるために組織した会社側の「御用組合」があって、当然両者は仲が悪い。

 一つの会社の中で、同じ飛行機に乗っていてもCA(どうもこの呼称は、私どもの年代にはしっくり来ない。やはり、「スチュワーデス」と言って貰わんと・・・)と、パイロットは別の組合員だし、

 CAの中でも組合が違ったりすると、お互いに口も利かないということもあるようだ。


◆コメント:空を飛ぶ機械に人を乗せて運ぶのだから、中がゴタゴタしていては困る。

 

 CA(キャビン・アテンダント=スチュワーデス)が機嫌が悪いぐらいなら、まだしも(それだって、客商売としては失格なのだが)、

 そのようなカリカリした精神状態の人間が、空を飛ぶ飛行機を「整備」したり、「操縦」しているのでは、トラブルが続くのは無理もない。

 おまけに、6月15日に書いたように、中国の工場に機体の整備を委託していたというのだから、恐ろしくて誰も乗らなくなっても不思議はない。


◆コメント:昨日付でJALが発表した改善策に中国の工場のことが書かれていない。

 JALは11月7日付で「JALグループ 企業改革方針」を策定!というプレスリリースを発表した。

 これほど世間で中国の工場に整備させていたことが噂になっていて、日本航空の職員がそれを知らないはずがないのに、

 上層部に訴えることが出来る雰囲気ではないのだろうか。この改革方針では、中国の工場での機体整備に関する言及が全くない。


◆コメント:何でも民営化すればよいというものではない、という見本だ。

 

 日本航空はその名前から想像がつくように、元来国営企業だった。

なにしろ「日本航空法」という国の法律があって、それにしたがって運営されていたのである。

 日航123便が墜落した2年後、1987年、この法律は廃止になり、日航は完全民営化された。

 郵便と、航空会社では、提供するサービスが全く異なるけれども、衆院選のときに小泉首相は、「何でも民が出来ることは、民にやらせた方が良い。」という主張を百万回ほど繰り返していた。

 そうでしょうか?

 日本航空を見れば、必ずしもそういう単純な話ではないことが分かると思うのだが。

 民間会社になったがため、日本航空は、コストを削減するために中国の工場に機体の整備を委託したり、一番重視するべき安全対策に使う金を切りつめた。

 これが、昨年辺りからやたらと機体整備不良などによるトラブルが相次いでいることと無関係でないことは、容易に推察出来る。

 つまり、民営化すれば、出来る限り収益を上げなければならない。

 そのためには、売り上げを伸ばすか、コストを切りつめるか、その両方をするかしかない。

 売り上げを伸ばしたくても、911テロ、SARS、安い料金のエアラインの新規参入による競争の激化により、航空運賃を据え置くか下げざるを得ず、売り上げはのびない。

 残る手は、コスト削減である。

 それを、よりにもよって、航空機の整備に適用してしまったので、トラブルが続出した。

 このために、乗客は減りさらに売り上げ(乗客数)が減るという悪循環をもたらし。ついには中間決算で赤字、無配となった。

 これは会社の経営判断のミスである。

 にも関わらず日航の経営陣は、まず、全職員の給料を減らすという。

 これでは、日本航空の職員は皆、「やってられねえよ」という気分になる。殆ど目に見えている。

 会社の経営責任を従業員に押しつけているからである。

 真面目に働いても報われなければ、大抵の人間はやる気をなくす。無理からぬところだ。


◆コメント:郵政などより余程緊急事態ではないのですか?総理。

 

 郵政民営化が実現して、「燃えつき症候群」になっていると立花隆に書かれた小泉首相だが、しっかりして欲しい。

 飛行機会社は、とにかく安全性を最優先課題に置かなければならないが、民営化して売り上げが減り、安全対策費を削ってしまった。

 これを見逃した監督官庁たる国交省、ひいては、行政府たる内閣、詰まるところは、内閣を代表する小泉首相の責任はおおきい。

 日本航空は、民間会社にしておいては危ないということだ。

 街には「改革を止めるな」などという自民党のポスターがところどころに貼ってある。

 改革とは、財政支出を減らし、増税する事だろうが、改革よりまず人命であることは言うまでもない。

 飛行機が落ちて人が死んでも、「改革」の方が大切だ、という論理に納得する人は誰もいないだろう。いたら、バカだ。

 日本航空は、国有化して国の監視下に置き、採算を度外視して安全対策を講じるべきだ。

 整備コストの切りつめなど言語道断。問題外。ましてや、中国の工場に整備させてはいけないのだ。

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2005.11.08

「<フジモリ氏>チリ当局に拘束 ペルー政府が引き渡し要求」←そもそも、どうして日本に5年もいたのか。その背景

◆記事1:<フジモリ氏>チリ当局に拘束 ペルー政府が引き渡し要求

 

 東京に5年間滞在していたペルーのアルベルト・フジモリ元大統領(67)は6日午後(日本時間7日未明)、チリのサンティアゴに空路到着した。

 フジモリ氏は市内のホテルに入ったが7日未明(同7日午後)、チリ当局に拘束され、身柄を警察学校に移送された。

 ペルー政府はチリ政府に直ちに逮捕と身柄引き渡しを求めた。(毎日新聞) - 11月7日21時9分更新


◆解説:フジモリ氏は、そもそも何故日本に亡命していたのでしょう?

 

 フジモリ氏は言うまでもなく元ペルーの大統領で、国民に人気があった為政者、という漠然とした印象を持っていた日本人が多いです。

 特に、ペルー日本大使館公邸人質事件の解決の時の姿が印象的です。

 あれは、1996年12月17日に発生して、なんとテロリストグループは127日間も籠城したのですね。今調べたら、そうなっている。記憶はいい加減です。

 何故、あの「英雄」フジモリ大統領は5年も日本に亡命しなければならなかったのか。

 いろいろペルー国内の事情があるのですが、要するに日本人は人質事件の印象が強いので、「いい人」と考えていますが、

 ペルーでは結構「独裁者」で、残虐なことも許容していたらしいのです。


◆ペルー人質事件解決の真相はものすごく残虐なのだそうです軍隊が残虐だったのです。。

 

 ここから先の話は、全て日本の防衛戦略―テロ対策機密情報(テリー伊藤, 青山 繁晴 )という本からの受け売りです。

 テリー伊藤氏は好き嫌いが有るでしょうが、それはこの際我慢して貰って、重要なのは青山繁晴さんという方です。

 青山さんは元共同通信記者で、今は、独立して自分の事務所を持っている人です。

 私が見る限り、この青山さんが日本で最も「重い」情報を直接取材して知っている人みたいです。

 たけしのTVタックルなんかにでているので、軽く見ているひとも多いようですが、私はこの人の情報を特別個人会員になって欲しくて仕方がないのです。

 なかなか料金が高くて、手が出ないのが悔しい。

 尤もカネを払えば良いというものでもなく、彼のリポートには飛び上がるような重大情報も含まれているのです。

 このようなWeb日記・ブログに簡単に書かれてはたまらない。というわけで「審査」が或るそうですが、どういう審査かは知りません。



 それはさておき、この本は日本の安全保障の話を中心に分かりやすく書かれていますが、中にペルー事件に関しても書かれている。

 青山さんは最初から最後までこの事件を共同通信記者として現地で取材しただ一人の日本人記者だそうで、大変貴重な存在です。


◆日本大使館公邸を占拠していた犯人達は、ペルー軍により時間をかけて強姦・惨殺された。フジモリ氏が許可した。

 

 あのとき、ペルーの日本大使館公邸に、ペルーの特殊部隊が突入し、犯人はあっという間に全員射殺されたということに、「させられた」そうです。

 実際には、生きていたゲリラが沢山いた。

 大使館を占拠してゲリラはMRTAという集団ですが、この中には10代の少年少女が大勢いた。 

 その多くが、強行突入の後も生きていたのを、人質だった日本人が大勢見ているのです。

 その後「お上」から箝口令が敷かれ、誰も話さないから、日本人は誰も真実が分からなかったのです。

 人質の中で特に、防衛庁とか、外務省の職員だった人でその後辞めてしまった人が多いのだそうです。

 嘘をつくのに耐えられなくなったからだろうと、青山さんは書いています。



 ゲリラ集団のボスを射殺した後突入した軍隊にとって、その後の1~2時間は、ある証人の言葉によれば、「お楽しみタイムだった」そうです。

 つまり、ゆっくりと陵辱しながら惨殺してゆく(念のため書きますが、私はこういう言語表現は嫌いです。しかし、事実なのです)。

これを許したのが、何とあの好々爺ふうの外見をしたフジモリ大統領だったのです。

 テロリズムは勿論許せないが、ペルーのテロリストは最初労働運動だったのに、弾圧がひどくて、次第にテロリスト化してしまった者もいる。

 貧富の差が激しい。貧しいなかから少年少女のゲリラが現れる。

 それを軍隊がいくらテロ制圧と言ったって、レイプしてその後クビを切り落としたのですから、問題です。



 何十人も生きていたテロリストが全員1時間でレイプされて、クビ無し死体になってしまった。

 先に書いたとおり、日本人の人質には箝口令が敷かれた。人質から事実を聞いて報道したかった青山さんも同様でした。

 ここで、日本のメディアの限界に愛想が尽きたのが、青山さんが共同通信を辞めたきっかけなのだそうです。

 テレビしか情報源がない私たちには分からなかったですね。想像もつきませんでした。

 テロリスト達の死体は、フジモリ大統領が失脚するまで、まとめて埋められて、軍が見張りを立てていたから、テロリストの遺族も近寄ることが出来なかったそうです。

 土葬だから、死体を掘り返され、解剖されたら、何があったか分かってしまう。



 青山さんによれば、フジモリ大統領は、あの強行突入の時に、日本人に死人が出ることを予想してそれも仕方がないと考えたいたらしいです。

 しかし、軍のメンツがあるから突入せざるを得なかった。

 事件が一応解決した後、フジモリさんが興奮して叫んでいたのは、「日本人を殺さないで、テロリストを惨殺して、国民に見せしめとすることが出来た」という興奮状態だったようです。

 この一件が全てではありませんが、フジモリさんは、人道上、相当ひどい事もしていると見て間違いがなさそうなのです。

 青山さんの本はすごいことが書いてある。ここでは書ききれません。一読を勧めます。

 それはさておき、フジモリ政権の軍事独裁政権に対する国民の堪忍袋の緒が切れて、フジモリ氏は失脚しました。

 国内にいてはまずいというので、日本にいたのです。

 急に日本を去って、ペルーに向ったのはなぜだか分からない。彼の立場から見れば明らかにやばいと思うのですがね。

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2005.11.06

「歌手・女優の本田美奈子さん死去」←約1年前に、本田美奈子さんがクラシックを歌ったCDについて書きました。

◆記事:【訃報】歌手・女優の本田美奈子さん死去


 

ミュージカル「ミス・サイゴン」のヒロイン・キム役などで知られる歌手で女優の本田美奈子(ほんだ・みなこ、本名・工藤美奈子=くどう・みなこ)さんが6日午前4時38分、急性骨髄性白血病で亡くなった。38歳だった。

 告別式は9日午前10時から、埼玉県朝霞市大字溝沼1259の1の朝霞市斎場で。喪主は母、美枝子(みえこ)さん。

 東京都出身。1985年に「殺意のバカンス」でデビューし、その年の日本レコード大賞新人賞を受賞。ロック色の強いパワフルな歌声が人気で、「1986年のマリリン」などのヒット曲を出した。

 92年に「ミス・サイゴン」の主役となったのを機に、ミュージカル界へ活動の場を広げ、「レ・ミゼラブル」「屋根の上のヴァイオリン弾き」「王様と私」などで好演した。2003年には、日本語詞によるクラシック曲を歌ったアルバム「AVE MARIA」を出し、歌手としても新境地を開いていた。

 今年1月に急性骨髄性白血病と診断され入院。化学療法などが功を奏し、7月に退院したが、9月に再入院していた。 (読売新聞) - 11月6日15時26分更新


◆コメント:昨年、12月15日付で彼女のCDについて書きました。

 

本日は、本田美奈子さんの訃報に接し、大変残念です。これは社交辞令で述べているのではありません。

 私は、昨年12月15日に彼女が声楽家として勉強し直して録音したCDにとても感心し、一文を認めました。

 今日は、ブログで追悼の意を表している方は大勢いらっしゃいますが、

 亡くなった方の生前の功績について追悼文を書くと、どうしても割り引いて読まれがちです。

 私は、そうではなくて、生前の本田美奈子さんの演奏が本当に優れていた事を強調したいので、

 昨年書いた文章を再びここに載せて、本田さんの業績を讃えたいとおもいます。

 ENPITUの原文は本田美奈子が基礎から声楽を勉強し直して歌った、フォーレやサンサーンスが美しいのに、失礼ながら驚いた。です。


【本田美奈子が基礎から声楽を勉強し直して歌った、フォーレやサンサーンスが美しいのに、失礼ながら驚いた。】(2004年12月15日付)

◆元々はアイドル歌手だった人ですね。

 

たまには、好きな音楽の話を書きます。

口幅ったい(くちはばったい)言い方ですが、私がクラシック以外の人がクラシックを演奏(歌うことも演奏というのです)をしたのを聴いて、褒めることは、滅多に無いのです。

それは、偏見からではなくて、やはり子供の頃から基礎から積み上げてきた人たちと比較したら、大抵、全然話にならないからです。


◆歌は比較的融通が利く。

 

ピアノやヴァイオリンのプロになろうというのならば、これはもう、絶対に子供の頃からやらないと、だめです。

ソリストになるような人は、ピアノなら小学生のころから、ショパンやリストのエチュード(死ぬほど難しい)をバリバリ弾きます。

ヴァイオリニストになりたい、しかもソリストになりたいなら、同じく小学校の低学年で、メンデルスゾーンの協奏曲など弾けてあたりまえで、技術的にはもっと難しい、パガニーニの24のカプリース(発狂するほど難しい。私なんか、3000年練習しても弾けない)を弾けて当たり前。多分皆さん、例えば、そうだな。東京音大の付属音楽教室の発表会を聴いたら、気絶すると思います。全員、天才です。

ソリストとして、大成するにはそれが、最低レベルです。前提条件です。十分条件ではありません。

 それぐらい天才的でもソリストになれるのは何百人に一人です。

それに比べると、歌は遅くからはじめて良いのです。

というか、そのようにせざるを得ない。

なぜかというと、何せ身体が楽器だから、身体が成長して、できあがらないと、どこまで才能が伸びるか分からないのです。


◆本田美奈子がここまで勉強して上手くなるとは・・・。

 

先日、たまたまテレビで、聞き覚えのある、しかし、以前より遙かに良く声が出ている人がいて、誰かと思ったら、本田美奈子でした。

彼女は、アイドルを辞めて、ミュージカル「ミス・サイゴン」に出ていたけれども、あれは、まだ本当の発声ではありません。一生懸命歌っているが、声が伸びていません。

本当の発声とは、最も声が良く通る(声や音の「抜け」がいい、という表現も出来ます)歌い方です。

 クラシックの声楽というと、人々は何故か、いきんで歌っている、という印象があるらしいけれども、それはとんでもない話です。その正反対です。

上手い人ほど、喉や口周辺のみならず、全身の無駄な力が抜けているのです。

 楽器もそうですが、無駄な力が減るほど、いい音、声が出て、技術の進歩が早まります。

本当に力が抜けて正しい発声を身につけた人の歌は、驚くほど良く響きます。人間の声とは、これほどまでに素晴らしいものか、と驚きます。

 ホールの空気がビリビリ振動するのが分かるのです。勿論マイクなど使わずに。

 本田美奈子が最近、クラシックの色々な曲、「色々」とは、もともと歌ではなく、オーケストラ曲の一部とか、器楽独奏曲などに歌詞をつけて歌ったCDを出していることを知りました。

最近出たばかりの2枚目、というCD。2曲目は有名なチェロの曲、サンサーンスの「白鳥」です。

チェロの響きをこれぐらい見事に弾き出している曲は、珍しいのですが、音域が広い。歌うのは、かなり難しい。それを、歌っている。歌詞がちょっと私には余計なのですが、本田美奈子さんの演奏自体は大変素晴らしい。

それから、昨年出した(知りませんでしたが)AVE MARIAというCD。

この10曲目にフォーレのシチリアーノという曲があります。

フォーレはフランスの作曲家。シチリアーノは組曲「ペレアスとメリザンド」という、メーテルリンクの書いた物語を、フォーレがオーケストラを用いて音楽で表現した作品の中の1曲です。

オリジナルではオーケストラでフルートがこのメロディーを吹くのですが、余りにも美しいので、色々な楽器で好んで演奏されます。

この旋律は美しい。気が遠くなるほど美しい。

美しいけれど、歌うのは大変です。音程がとても難しいのです。似たフレーズが繰り返されるのですが、半音の位置が毎回少しずつ違う。

耳が良くないひとは、絶対歌えないです。

耳がよくて、相当必死に練習しないと歌えないと思います。

どんな曲か知りたかったら、Yahoo!で「シチリアーノ フォーレ」を検索します。

 検索結果が出たら、右上で「音声」を選択します(音声検索というのがあるのですね)。

 そうすると、本田美奈子は聴けないが、フルートなどで演奏したMP3やMIDIがかなり出てきますので、聴いてみると良いと思います。

いやー、それにしても、本田美奈子はよく勉強したなあ・・・・。これは、大したものです。

 勿論、オペラの専門家と比べたら、まだまだだけれども、それは、酷だ。

 所謂芸能人で、一念発起して、ここまでの発声を体得した人は他にいないと思います。

今年、ホルストの「惑星」から「木星」のしかもさわりの所だけに歌詞をつけて歌っていた女の子がいますね?あんなのより、ずっとクラシック。感心しました。

 クリスマスにどうぞ。


 【引用終わり】

本田さんのご冥福をお祈り申し上げます。

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「<NHK記者逮捕>視聴者の不信感に再び火」←受信料不払いの理由にはなりませんよ。

◆記事1:<NHK記者逮捕>視聴者の不信感に再び火

 

 NHK大津放送局記者が5日、放火未遂容疑で滋賀県警、大阪府警に逮捕されたうえ、連続放火を認める供述を始めた。

 取材の最前線で起きた不祥事は、「まっすぐ、真剣」をキャッチフレーズに信頼回復に努めるNHK本体に冷や水を浴びせ、視聴者の不信感にも再び火を付ける結果を招いた。(毎日新聞)


◆所感1.不祥事を起こすのはNHKだけでもないし、マスコミだけでもない。

 

 Yahoo!トピックスには、Yahoo!ニュース - NHK不祥事という項目が特に設けられている。

 これは、「NHKが国民から受信料を徴収する特別なテレビ局だから」というのが理由なのだろうが、それは、おかしい。不公平だ。

 ちなみに民放・新聞社の不祥事は、ざっと眺めただけでもすぐにこれぐらいは集まる。


  • 【フジ】NEWSメンバー 補導で無期謹慎

  • 【フジ】里谷選手を起訴猶予 暴行事件で東京地検

  • 【フジ】フジ、やらせで情報制作局長ら処分

  • 【フジ】コウノトリの合成写真掲載=「虚偽報道」とおわび-産経新聞

  • 【フジ】<フジテレビ>ドキュメンタリー番組で謝罪

  • 【テレ朝】テレ東、毒キノコと名前取り違えて紹介

  • 【テレ朝】テレ朝元社員を窃盗と住居侵入で 警視庁

  • 【日テレ】<視聴率工作>日テレの元プロデューサーと賠償で和解

  • 【TBS】ドキュメントに再現映像 TBSの海保“密着”

  • 【テレ東】<テレビ東京>取材メモ流出で記者と報道局長を懲戒処分

  • 【朝日新聞】シンポ応募はがき紛失=75通、紙面でおわび-朝日新聞

  • 【朝日新聞】録音の有無明かさず 朝日新聞、報道検証でも

  • 【朝日新聞】虚偽取材メモで検証記事 朝日新聞

  • 【地方紙】<虚偽報道>雨で中止の町民体育祭…昨年の写真使い


 受信料を取っていない民放局は不祥事を起こしても良いのか?

 いや、全ての企業に訊きたいが、おたくの社員は不祥事を起こしても構わないという、何か正当化事由があるのだろうか?

 不祥事、特に、今回のNHK記者のごとき、れっきとした刑法犯罪を犯すことなど、もってのほかである。が、それはどこの職員であろうが同様だ。社会人の基本である。

 本人が悪いのである。24歳の職員が放火の罪を犯したのが、NHKの責任だとは思えない。

 他人の家に火を付けてはいけないと云うことを、この被疑者にNHKが教えなかったらから、この犯罪の責任はNHKにあるとでもいうのだろうか?

 バカも休み休み云え。

 繰り返すが、放火が犯罪であることなど、NHKだろうが、民放だろうが、マスコミ以外の世界の人間だろうが、少なくとも現代日本の社会人なら常識である。

 管理責任?職員が放火、窃盗、強盗、殺人、婦女暴行などの凶悪犯罪を犯さないように常に見張っている企業が地球上に存在するだろうか?

 また、どうすれば、そのようなことが可能だというのだろうか?


◆所感2:或る人間が犯罪行為を実行するかどうかなど、誰も見抜けない。

 

 無茶な人間は、NHKが職員を採用する段階で、「人を見る目」がなかったから、こんな放火犯などという変態を雇ったのだ、責任を取れ、と訳の分からない事を言うだろう。

 しかし、或る人間が何かのきっかけで犯罪を実行するまでの過程をあらかじめ推測することは不可能である。

 そもそも、犯罪を行う人間と、そうではない人間との間に器質的相違(つまり脳を観察すると違いが発見できるかどうかということ)があるのかどうか、解明されていない。

 したがって、この放火事件の被疑者(まだ確定判決が出ていないから、無罪が推定される)の行為、及び、この被疑者を雇用したこと自体について、NHKは刑事責任を問われないと思料する。

 また、所謂監督責任を求めることも理不尽であると判断するのが妥当である。


◆所感3:NHK職員の「不祥事」は受信料不払いの正当化事由とはならない。

 

 放送法に定められたNHK受信料納付は、厳密な意味での債務ではないといって、小躍りして受信料支払いを拒む者がいるようだ。

 冒頭に引用した記事もそういう傾向に拍車をかけるような書き方をしているが、 NHKの職員が犯罪を犯したとしても、NHKの受信料は「NHKが番組という形で提供した視聴覚情報に対して視聴者が支払う対価」であり、視聴者の債務に変化はないと考えられる。

 財・サービスの提供が無償なのは、資本主義社会では例外で、財・サービスの提供を受けた者はその対価を支払うのが、自由経済における契約、債権・債務関係というものである。

 そして、被疑者(放火犯)が放火をしている間、NHKの情報提供に不備が生じたわけではない。

 つまり、NHKはその債務を履行しているのであるから、受信料支払い債務が放火犯の出現によって「免除」される、という論理は、誤りである。


◆所感4:「NHKの職員が放火犯だったから、受信料を支払わない」論理を一般化してみる

 

 一般化すると、こうなる。

 「NHK職員が放火犯であったから(繰り返すがまだ無罪だが)、受信料の支払いをしなくても良い」という論理は、

「或る企業に属する人間が犯罪を犯したら、その会社から、財・サービスを購入しても、それに相当する対価の支払い債務は消滅する」という論理である。

 すると、次のような主張をしても構わない、という結果になる。

 実際に存在する企業名を使わせていただいたが、あくまで仮定上の話である。架空の名称を使うよりも、現存する固有名詞を用いた方が、分かりやすいからである。

 例えば、

 


  •  日産自動車の職員が通勤途中に痴漢行為をはたらいたら、日産自動車からクルマを購入してまだローンを支払っている最中の人間は、ローン残高の返済義務が消滅する。

  •  NTTの職員が女性のスカートの中を盗撮したら、電話料金は払わなくて良い。

  •  東京ガスの社員がひき逃げをしたら、ガスはタダで使いたい放題。

  •  ソニーや富士通やNECや、IBMの職員が万引きをしたら、パソコン店から、それらの会社のパソコンを勝手に持ち出し、料金は一切支払わなくても構わない。

  •  コスモ石油の社員が、酔っぱらって他人に怪我をさせたら、同社のガソリンスタンドで、いくらガソリンを入れても、ガソリンは無料だ。


 
 まだまだいくらでも例を挙げることができるが、この辺で終わりにしよう。


◆結論:カネを払っているからこそ、文句を言う資格がある。

 

 NHKの報道内容、番組編成、などに文句を言えるのは、カネを支払っているからである。

 NHKの放送内容が偏向しているという人は、受信料を支払わないかぎり、文句を言う資格は一切無い、ということを自覚していただきたい。



 尤も、皆、気づいているが言わないだけで、受信料を支払わない人々の大部分は、きれい事を並べているものの、

 要するに支払わなくても罰則がないから支払わないだけのことだろう。

 これを「ケチ」という。

 支払わないと「犯罪」になる税金に関しては、大して検証もせずに、文句を言わずに支払っているではないか。

 NHKの経営体質がなっていないから、という理由をもっともらしく上げる人がいるが、それも理由にならない。

 全ての視聴者が納得するような経営体質など出来るわけがないからである。

 そもそも、どのような「経営体質」を望むのか、具体的に根拠を示して理想的な姿を提示できる人が、受信料支払い拒絶者の中にいるとは到底思えない。

 不払いの人間が膨大なのに、NHKが潰れないのは、真面目に払い続けている人間がいるからだ。今年は料金は値上りしていないが、この分だと、上がるかも知れない。

 本屋にならぶ書籍には、万引きによって生ずる損失が過去の統計から計算され、価格に上乗せされている。

 これと同じ事が、受信料にも起りうる。

 単なる、ケチのくせに、偽善的な「正義」を振りかざし、受信料を支払わない人間のせいで、残りの真面目に支払っている人間の負担が増えることになりかねない。

 つまり他人に迷惑をかけることになるかも知れない、ということを考えて頂きたい。

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2005.11.05

鳥越氏「手術費3500円」の波紋…闘病ドラマ台無し←死ぬかもしれないガン患者に「ドラマ」とはなんだ。

◆記事:鳥越氏「手術費3500円」の波紋…闘病ドラマ台無し

 

 直腸がんにかかったことを公表し、切除手術をうけたジャーナリストの鳥越俊太郎氏(65)が4日朝、テレビ朝日系の情報番組「スーパーモーニング」に生出演した際、一般的に数十万円かかる手術費について「3500円だった」と勘違い発言。同局に問い合わせや苦情の電話が殺到する騒ぎになっていたことがわかった。

 問題の発言があったのは、特別企画「完全密着 鳥越俊太郎がん闘病記“カメラを回すんだ” 自ら被写体に…衝撃の告知から30日間全記録」でのこと。

 鳥越氏はコメンテーターを務める同番組で先月3日にがんを公表し、都内の病院に入院。6日に切除手術を受け、29日に正式退院したばかりで、この日は復帰初日だった。

 企画は公表から切除手術を受ける過程の一部始終を追ったもので、この中で鳥越氏は「手術費は3500円だった」と発言。

 これに対し、視聴者から「本当にそんなに安いのか」「いいかげんなことを言うな」などの電話がテレビ朝日に30件以上も殺到した。

 番組ではエンディングで鳥越氏が「事実を確認して、7日の放送で報告します」とコメント。放送終了後、スタッフが病院に確認したところ、治療費の請求明細書の一部にある、保険外診療分の費用「3500円」を鳥越氏が手術費の全額と勘違いしていたことがわかったという。

 病院側にも問い合わせがあり、担当者は「明細書の字が小さくて勘違いしたのか…。合計金額が記されていたので、わかるはずだが」と困惑した様子で話した。

 鳥越氏は本紙の取材に「明らかな私のミス、勘違い。7日の放送できちんと訂正しておわびします」と恐縮していた。

 がん治療に際し、「自分なりに闘う姿勢を示し、同じ境遇の人に『ああすれば治るんだ』と思ってもらえれば、私の心の支えにもなる」と話していた鳥越氏。

 企画は生死を賭けた感動的なドラマだったが、視聴者の関心の高い医療問題だけに、ジャーナリストとして“失言”は痛かった。(夕刊フジ) - 11月4日17時1分更新


◆コメント:他人の生死に関わる病気を「ドラマ(芝居)」とはなんだ。

 

 いくら夕刊フジ、天下のバカ集団、フジサンケイグループの最下層に位置するタブロイド紙とはいえ、書いて良いことと悪いことがある。

 鳥越俊太郎氏は直腸癌の手術を終えて、今日、初めてテレビに出演した。

 テレビで、世の中の出来事にコメントを加える立場にある、パブリック・スピーカーが発言に正確を期さなければならないことなど、鳥越氏は百も承知。

 それをこのような文章で叩くべきではない。

 病気は癌である。はっきり言えば、まだ、死の恐怖が去ったわけではないのだ。

 これから何年もの間、再発の恐怖と闘わなければならない。癌という病気のいやらしさはここにある。

 完全に郭清(調べた限りにおいては、「病巣と周囲のリンパ節を、転移を防ぐために切り取ってしまうこと」だと理解しています。違っていたらお医者さん、教えてください)出来たと言い切れるのは稀で、なにしろ、原病巣を切り取るときに、ガン細胞が少しでも血管やリンパ管に入ったら、血液やリンパ液の流れに乗って、全く離れた身体のどこかで、新たにガン細胞が増殖し始めるかも知れないのである。

 一度癌の手術を受けた人は、術後しばらく調子がよくても、ある時ちょっと熱が出たり、下痢をしたり、目眩がしたり、咳が止まらなくなったり、健康な人ならば気にかけないようなことでも、ドキッとする。

 貴方は「まさか・・・(再発?)」という考えが頭に浮かぶ恐怖を想像出来るだろうか。

 自分が癌になったことが無くてもそれぐらいは想像しようと努力しなければならない。


◆病気の治療費、入院費、手術費用が知りたかったら、生命保険のサイトを見るのだ。

 

 医師や病院のサイトを見ても、病気そのもの、診断、治療、予後、等についての解説はあるが、カネの話は書いてない。国立がんセンターのサイトを見ても書いてない。

 それは当然なのだ。医療費は個人差が大きいからである。

 同じ大腸癌でも進行度や、本人の生命力(回復力)、治療方法の選択の違いなどにより、当然、費用は大きく変化する。だから、うっかりしたことは医者は書けない。

 その点、保険屋はガン保険で手術給付金はいくらまで払いますよ、とパンフレットに載せなければ、誰も契約しないから、おおよその目安は書いてある。大抵、十万円単位である。

 調べなくても、少し考えれば分かる。

 歯科で抜歯しても3000円ぐらい、かかるだろう。まして、何時間にも及ぶ癌の手術費用が3,500円であるわけがない。

 鳥越氏も病み上がりで少しうっかりしていたことは否めないが、テレ朝や虎ノ門病院に電話するほうもする方だ。ネットで、「ガン、手術費」で検索すればわかることだ。


◆他人の病気をネタにして部数を稼ごうとする大衆紙の残酷さ。
 

 結論的にくりかえすなら、鳥越氏が病院の請求を確認しなかったのは、元新聞記者としては少し恥ずかしいが、なにしろ病み上がりだから、少々ぼんやりしているのは仕方がない。

 これに対して、自分でちょっと調べればおおよその見当がつく癌の手術費用を、テレ朝や病院に電話して訊く一般人も常識が無さ過ぎる。

 そして最後に、まだ、死の恐怖と闘わねばならぬ人の病気を「闘病ドラマ」と書いた夕刊フジも見識が無さ過ぎる。

 そもそも「ドラマ」とは、芝居、即ち虚構の世界を指すことばだ。

 鳥越氏の病気は芝居ではなく「真実」なのだ

 タダでさえガンになったことにより精神的ショックを受けている人間を下らないことで、叩くべきではない。


◆わたしも兄弟のガン再発の恐怖と共に生きている。

 

 お前は何故、ここまで偉そうなことをいえるのだ、と訊かれるだろうから書かせていただく。

 私は癌患者ではないが、兄弟が7年前に癌の手術を受けた。癌の発生部位まで書くと人物を特定されかねないので、ご勘弁いただきたい。

 とにかく、主治医は、「リンパに転移していた。はっきり言って予後は良くない。5年生存率40%だ」と、術後、私たち親族に言った。患者本人も知っている。

 結論だけ書くとぶっきらぼうだが、実際には大変、心の優しい先生で、非常に親身になって説明してくださった(或る医師がどの程度、本気で患者を診てくれているか、と言うことに関して、患者又はその身内は、医師が想像する以上に。殆ど直感的に分かるものだ)。

 幸い兄弟は奇跡的に術後7年を経た今も健在である。抗ガン剤との相性が良かったのだろうか。医師でも分からないだろう。

 しかしながら、、これは結果論であり、この間、私も、気が気ではなかった。これからも不安は続くだろう。

 「JIROの独断的日記」ではおかげさまで、1,100本以上の記事を書かせていただき、多くの方が読んで下さった。

 原則としてこの日記において、私は私事には触れないことにしているから、読者の方は知るよしもなくて当然だが、ずっと兄弟の病の不安が、私の頭の片隅を占めているのである。

 「生死を賭けた感動的なドラマ」などとふざけた言葉を使って欲しくない。患者に対する冒涜だ。

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2005.11.04

特異な犯罪は無視するのが正しい。

◆記事:<静岡母親毒殺未遂>女子高生、食事にタリウム混ぜる

 

静岡県伊豆の国市の県立高校1年の女子生徒(16)が母親に劇物のタリウムを摂取させたとして殺人未遂容疑で逮捕された事件で、少女はタリウムを食事に混ぜて複数回、母親に食べさせていたとみられることが1日、県警の調べで分かった。県警は食べた際に気付かれないよう、ごく少量ずつ混ぜていたとみている。

 調べでは、県警が少女の自宅から押収したパソコンに、劇物を扱うインターネットサイトに接続した記録があった。県警は少女がネットを利用して劇物に関する情報を入手していたとみている。また、少女はブログ(ネット上の日記)を作成していたことも分かり、事件につながる書き込みがないかも調べている。 (毎日新聞) - 11月1日15時4分更新


◆コメント:報道しないのが、模倣犯の出現を防ぐ最良の方法。

 

 高校生の女の子が、故意に母親に毒を飲ませて、次第に衰弱していた様子を冷静に記録して楽しんでいたということが、日本中に衝撃を与えているというのは嘘だ。

 みんな、恰好の雑談のネタが出来てよろこんでいるだけである。

 一番よろこぶのは勿論マスコミで、テレビのワイドショーのプロデューサー、週刊誌の編集長だろう。

 この少女のおかげで、一ヶ月ばかりはネタに困らない。

 何故困らないかというと、その記事を載せた週刊誌を買う大衆、ワイドショーを見る大衆が存在するからである。

 一般大衆は、本当にこの犯罪を忌まわしい、話の聴くのはまっぴらだと思っていたら、週刊誌も売れないし、ワイドショーの視聴率も上がらないはずだ。

 実際はその正反対である。大事件の後の週刊誌の売れ行き、ワイドショーの視聴率はそれぞれの製作責任者にとって笑いが止まらないほどになる。

 人々は、自分が被害者にならない限りにおいては、変質的犯罪が大好きなのだ。


◆好奇心で騒いでいるだけで、誰もこの少女の将来がどうなろうが知ったことではない。

 

 この犯罪を巡って、素人が原因論、抑止論を聞きかじりの心理学や精神医学の断片的知識を用いて書いたり論じても仕方がない。

「どうしたら、防ぐことができたのか?」なんて偽善的だ。本心は、興味津々だろう。

 私もその一人だ。というか、正確に言えば、犯罪の内容に興味はないし、この娘がどうなろうが、知ったことではない。

 この娘が一生を棒に振った事だけは確かだが。こちらは痛くも痒くもないから、何とも思わない。無論同情もしない。

 もっとも、こういう事に関するプロもいないに等しい。 

 珍しい犯罪があるとかならず、「犯罪心理学者」がテレビに登場してあーでもない、こーでもない、と解説する。後から解説しても仕方ないだろう。

 犯罪心理学者てのは、犯罪の抑止に役に立った試しがないではないか。もっぱら「ワイドショー御用達学者」だ。

 それはさておき、人間にはときどき、こういう出来損ないみたいなのが現れる。それはいくら「犯罪心理学」が発達しても、防ぐことは出来ないだろう。

 この事件に関して言えば、日本では珍しい、というか初めてだろうが、だからこそ、騒いではいけないのだ。



 以前、「集団自殺」と「通り魔」は報道しない方がよいのではないか。という稿を上げたことがある。

 クルマの中で七輪を炊いて、集団自殺する者が相次いだ時期があったが、あれは、報道するからだ。という趣旨である。

 世間がそういう事件が有ったこと知らなくても、危害が及ぶことは無い。つまり、「知らない事による不利益」はない。

 しかし、報道してしまうと、今までそのたぐいの犯行(自殺の場合は「犯行」ではないが)を思いつかなかった奴、

 或いは、想像していたが実行に踏み切るまでに至らなかった奴が、実行に移すきっかけになってしまうのだ。

 今回はもう報道されたから手遅れだ。多分、同じ事をする奴が出てくるだろう。


◆アメリカの猟奇殺人なんて、こんなものではない。

 

 10年以上も前に、非常に日本でも売れた、FBI心理分析官という本は、FBIで特に「犯人像」を絞り込む専門家(プロファイラー)が書いた、過去の実際に有った犯罪の記録である。

 これを読むと、不謹慎だが、今回の高校生なんか可愛いモノだ。

 アメリカの大量殺人、猟奇的殺人の変質ぶりはすさまじく、この違いは、肉食民族と草(穀物)食民族の違いなのかな、と、ありふれた事しか言えない。

 驚くのは、アメリカの凶悪大量殺人の殆どが、「快楽殺人」であること。

 即ち、被害者が苦しんでいる様子を見るのが「楽しい」とかそれによって、性的快感を覚えるという、変態によるものだ。

 だから、人類全体としてみた場合は決して今回の犯罪は、史上初の驚嘆すべき冷酷、変質的犯行とは言えないのである。

 騒がないことが一番だ。

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2005.11.03

昨日の東証システムダウンは怖かったですな。

◆記事1:東証システム障害、金融庁が報告要求…取引は午後再開

 

 東京証券取引所で1日、株式売買の注文を取り次ぐコンピューター・システムに障害が発生し、午前9時の取引開始から全銘柄の取引が停止したトラブルで、東証は午後1時30分にすべての取引を再開した。

 システムを共用していたため、取引が停止していた福岡、札幌両証券取引所も同時刻に全面再開した。

 世界の主要証券取引所でも異例となる大規模なシステム障害を受け、金融庁は15日までに、証券取引法に基づき、障害が発生した原因や再発防止策などの報告を求めた。

 1日の取引時間は、同日午後1時30分から午後3時までの1時間半と通常の3分の1に短縮され、投資家に大きな影響を与えた。

 東証は原因について、「10月にシステムの能力を増強した際にプログラム操作にミスがあった可能性がある」(天野富夫常務)と説明している。

 東証は、システムを開発した富士通に過失があれば、賠償請求を行う考えだ。(読売新聞) - 11月2日2時26分更新


◆記事2:消費者物価指数:6年1カ月連続、前年水準下回る--都区部

 

 総務省が28日発表した東京都区部の10月の消費者物価指数(00年=100)は、価格変動の激しい生鮮食品を除く総合指数(中旬速報値)が前年同月比0・3%下落の97・2で、6年1カ月連続で前年水準を下回った。毎日新聞 2005年10月28日 東京夕刊


◆記事3:消費支出、3カ月連続減少=9月のサラリーマン世帯

 

 総務省が28日発表した9月のサラリーマン世帯家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は31万4221円と、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比0.4%減少し、3カ月連続でマイナスとなった。(時事通信) - 10月28日11時1分更新


◆記事4:「貯蓄なし」世帯が過去最高の2割強に

 

 金融広報中央委員会が2日発表した「家計の金融資産に関する世論調査」によると、2人以上の世帯で、「貯蓄を保有していない」と回答した世帯の割合は前年より0・7ポイント高い22・8%で、1963年の調査開始から過去最高となった。

 昨年から始めた単身世帯の調査では同6・0ポイント高い41・1%に達した。

 調査では、公共料金の支払いなどのために一時的に預けている預貯金を除いた貯蓄の保有状況を聞いた。

 貯蓄を保有している2人以上の世帯の平均保有額は、過去最高の1582万円だったが、平均は少数の高額保有世帯に引き上げられる傾向がある。

「実感に近い」(金融広報中央委員会)とされる中央値では過去2番目の900万円だった。

 調査は6月28日から7月8日に行われ、3261世帯(うち単身世帯175世帯)が回答した。回収率は32・4%だった。(読売新聞) - 11月2日21時30分更新


◆コメント:相場で儲けようとするのもほどほどに。

 

 昨日、世界三大株式市場の一つである東京の株式市場で、システム障害により、午前中、全ての銘柄の売買が不可能になった。

 午後になって復旧し、買いが殺到して年初来高値を付けるほどの勢いだったから、あまり騒がれていないが、これは単なる偶然である。

 昨日、朝の寄り付きと共に売ろうとしていた人がシステムトラブルで売れないという状況だったら、後場のシステム復旧とともに売りが殺到して、株式市場が暴落するということも十分にあり得たのである。

 これだから、相場は怖い。それは、システムの怖さだろうという方もおられよう。

 そういうことではない。「相場」とは、時として何の材料が無くても乱高下する危ない世界なのだ。


◆Irrational Exuberance(根拠なき熱狂)

 

 この言葉は、来年の1月でついにFRB議長を退任することになった、アラン・グリーンスパン氏が、1996年、アメリカ経済の実体はさほど良くないのに、株価が急騰していたことに対して警告として用いた言葉である。

 あまりにも有名になり、そのままの題名の本が書かれ、日本語にも訳されている。

 今の日本もIrrational Exuberanceだとおもいますね。

 日銀などがやたらと「景気は回復しつつある」という。 色々な経済指標のなかには、それらしきものが、たまに出る。

 しかし、それは例えば9月の完全失業率が4.2パーセントで、8月の4.3パーセントから0.1パーセント改善したとか、鉱工業生産指数が8月、9月と二ヶ月連続で前月を上回ったとか、その程度で、はっきりとした景気回復局面に乗ったとは、言えない。


◆デフレが続いている。

 

 それは、記事2から、記事4を読むと、分かる。

 日本の不況はデフレ不況、つまり物価が下がり続けることに起因する不況だが、記事2を読むと、全国で一番物価が高い東京都区部の物価は何と、6年1ヶ月連続して下がり続けている。

 記事3では、サラリーマン世帯の消費支出が、3ヶ月連続で減っている。

 つまり、モノやサービスを買うことを控えているわけである。供給側、企業側から見れば、売り上げが増えないのである。こういう状態は「景気が良い」とは言わない。

 極めつけは記事4である。日本人の貯蓄性向の高さは世界一だったのに、なんと、4世帯のうち1世帯は、給料が減って、生活できないから、「貯蓄がない」ということである。

 これほどひどい状態はかつて無かった。 それなのに、小泉政権はサラリーマン増税と消費税率の引き上げを行おうとしている。

 今すぐにではないとしても、景気が回復しかけているときにそれをやったら、本当にまた不況のどん底に突き落とされるだろう。


◆小泉・竹中は「銀行の不良債権がデフレの原因」といっていた。

 

 過去にも、何度か書いたが、竹中平蔵氏が金融相のとき、2002年2月12日の記者会見において、「銀行の不良債権がデフレの原因だ」と主張していた。

 銀行の不良債権は、予定よりも早く処理が終わったがデフレは続いている。

 つまり、小泉政権の経済政策は間違っていた。その事に対する責任がある。 それなのに、小泉・竹中両氏はその責任を取らないばかりか、何も説明しない。

 マスコミ各社の経済記者も、気づいていないわけがないのに、追及しないのは、怠慢である。

 何年経とうが、この責任は厳然として存在するのだから、とことん質問攻めにして責任を問うべきだ。

 そういうことをいい加減にするから、次から次へと中途半端な政策で、計画倒れに終わっても、内閣は平気な顔をしている。

 個人的な人間関係で、あまりにも執念深いのは、感心しないが、国政に関して明らかな失策が有る場合、うやむやにするべきではない。

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2005.11.02

「アジアオーケストラウィーク2005」←どのメディアも報道しない。

◆資料:「アジアオーケストラウィーク2005」10月、東京で演奏したアジア・オーストラリアのオーケストラ

 10月4日(火)19:00開演 

テジョン・フィルハーモニック管弦楽団(韓国)

◆指揮:ハム・シニク

◆ヴァイオリン:カン・ドンスク

◆曲目:キム・チヨン「英雄たち」

   メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲

   マーラー:交響曲第1番「巨人」



10月5日(水)19:00開演

タスマニア交響楽団(オーストラリア)

◆指揮:セバスチャン・ラング=レッシング

◆オーボエ:ダイアナ・ドハティ

◆曲目:エレナ・カッツ=チャーニン:「ミシック」

      R.シュトラウス:オーボエ協奏曲

      ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄



10月6日(木)19:00開演

ヌサンタラ交響楽団(インドネシア)

◆指揮:エドワード・ファン・ネス

矢崎彦太郎

◆ピアノ:アナンダ・スカルラン

◆曲目:ヤズィード・ジャミン:「ニ・ロンゲン」スンダの太鼓とオーケストラのための

      オット・シダルタ:「ジャンゲラン」バリの伝統楽器とオーケストラのための

      ラヴェル:ピアノ協奏曲ト長調

      ベートーヴェン:交響曲第7番



10月7日(金)19:00開演

広州交響楽団(中国)

◆指揮:ロン・ユイ

◆ヴァイオリン:オーギュスタン・デュメイ

◆曲目:ファ・エンジュン:「ニ泉映月」

   ヘ・ザンフォ/チェン・ガン:ヴァイオリン協奏曲「梁山伯と祝英台」

   チェン・キガン:組曲「蝶恋花(ヴェールを取られたイリス)」

   女声3声と3つの中国古典楽器とオーケストラのための


◆コメント:ニュース、報道というものは、紛争、対立、しか伝えてはいけないのか?

 アジア・オーケストラ・ウィークは2002年から始まった、文化庁主催の催しで、今年で4回目になる。

アジア・太平洋地域の国々を代表するオーケストラを招いて大阪と東京で開かれるフェスティバルである。

資料に載せたのは、先月、東京で行われたコンサートの日程である。いずれも、東京オペラシティ コンサートホールという、一流のホールで行われた。

大阪では、ザ・シンフォニーホールが会場だった。これまたオーケストラコンサート用の一流ホールである。

ここで演奏したのは、いずれもプロのオーケストラだが、クライマックスは先週の金曜日のコンサートである。

日本人と韓国人の音楽学生が合同オーケストラを臨時に編成して一緒に同じ曲を演奏したのである。

私は、マスコミがこのような画期的なイベントを何故伝えないのか理解に苦しむ。話題が「クラシック」で「数字が取れない」のが理由なら、卑属の極だ。



10月28日(金)19:00開演

東京オペラシティ・コンサートホール(東京都新宿区西新宿3-20-2

■指揮:チョン・ミョンフン

■管弦楽:日本および韓国の約100名の若手演奏家からなる特別編成オーケストラ

■ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」

■チャイコフスキー:交響曲第4番


私は、金曜日で月末で仕事の関係でいけなかったが、是非、行きたかった。
この日の演奏のために、日本の学生が8月に1週間も韓国へ行って合宿をしたのだ。

指揮は、一昨日、「幻想交響曲」のお薦めCDで紹介した、チョン・ミョンフンだ。



私は確信するが、このような交流を通じて、日本人と韓国人の音楽学生の間に友情が生まれない訳がない。

一つの音楽を立派に演奏しようとすれば、嫌でも親しくなるのである。ここには対立の図式は無い。国籍の相違など無関係である。

芸術への志は、憎しみ、対立とは正反対の精神である。

昔、ウィーンフィルと来日した、カールベームという指揮者は、「人間の存在を少しでも明るく照らし出すことが、芸術家の使命である」と言った。

私は、年を取るにつれ、この言葉が真理を表していることを理解できるようになった。



日本と韓国が対立しているのは、考えてみれば、政治家や役人が対立しているのである。

しかし、錯覚とはおそろしいもので、テレビで、そのような否定的イメージばかりを吹き込まれると、あたかも、韓国人や中国人と「対立しなければいけない」かのように思えてくる。

だが、それは、間違っている。

ここで紹介したコンサートの情報は、驚嘆するほど、どのメディアも伝えない。

繰り返すが、揉め事ばかり伝え、国民にマイナスの暗示をかけるべきではない。

例えば、日韓合同オーケストラの合宿風景から本番までを取材したドキュメンタリー番組を製作して日韓両国で放送したら、随分と雰囲気は変ると思う。

「たかが音楽ぐらいで、互いの憎悪がなくなるものか」と思う人は、指揮者の岩城宏之さんが経験した音楽は戦争がもたらした憎悪すら溶かしてしまう、というエピソードを読んで頂きたい。

対立するよりも、仲が良いほうが好ましいにきまっている。芸術はそのための最良の手段の一つであると信じる。

いくら外国に軍隊を送っても平和は訪れない。

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2005.11.01

普天間基地の問題とは何か?

◆はじめに、内閣改造に関するコメント:小泉のイエスマンしか置いていないのだから、誰が何大臣になろうが大同小異

 

 それ以上、言うことは、今のところありません。


◆記事:普天間移設日米合意、地元首長は不満表明

 

 米海兵隊普天間飛行場を米軍キャンプ・シュワブ沿岸部に移設するという日米合意を受け、政府は27日、沖縄県や移設先の名護市への説明を開始した。

 しかし、両首長は合意の受け入れに否定的な考えを示した。政府は、「普天間移設と沖縄の負担軽減策はパッケージだ」として説得を続ける一方、環境影響評価や埋め立てなどの手続きを促進するための特別措置法の検討にも着手し、硬軟両様で対応する方針だ。

 西正典那覇防衛施設局長から合意内容の説明を受けた沖縄県の稲嶺恵一知事は27日午後、記者会見し、「県外移転を求める県の基本的な考え方とは全く相いれない」と不満を表明した。

 名護市の岸本建男市長も同日夕、移設計画の具体的な内容に関する西局長の説明が不十分だとして「(国が)疑問に答えられないような状況では受け入れられない。地域住民を説得する自信は全くない」と記者団に語り、不快感を示した。

 稲嶺知事の不満表明について、小泉首相は27日夜、「基地の問題は、どこでも賛成というわけにはいかない。それでも理解と協力を得るよう努力しないといけない」と語った。

 ただ、稲嶺知事は、海兵隊の大幅削減案などは「評価する」と語った。

 このため、政府は、移設とともに、海兵隊の削減や司令部のグアム移転などの地元負担の軽減が実現することを強調し、「誠心誠意、理解していただけるように説得する」(守屋武昌防衛次官)方針だ。

 一方で、県などの許認可権などを国が代行したり、環境影響評価の期間を短縮したりする特措法の検討も進める。

 防衛庁幹部は27日、「米軍の再編はドイツ、韓国では終わったが日本だけが遅れている。沖縄が反対するから、という問題ではない」と述べ、普天間の移設の早期実現を目指す決意を強調した。

 ただ、特措法の制定については、政府内にも、「沖縄に『問答無用』と力ずくでやれば、反発は避けられない」と懸念する声も少なくない。政府は、地元の反応を見極めながら、慎重に検討を続ける方針だ。(読売新聞) - 10月28日1時59分更新


◆解説及びコメント:沖縄の人は米軍はもう沢山なのです。

 

 元々は、太平洋戦争中、唯一日本本土にアメリカの兵隊が上陸して決戦が行われたのが沖縄だという悲惨な歴史があります。

 このとき、本土からは応援も無く、沖縄の兵隊と住民は孤軍奮闘を余儀なくされました。

 より一層悲惨なのは、沖縄の一般市民の間に、「万が一米兵に捕らわれたら、虜囚として辱めを受ける。かといって降伏するのは非国民だ」という一時的、限局的ファシズムのような雰囲気が蔓延したことです。

 実際に捕虜になった人は、(例外はありますが)丁寧に扱われたのですが、戦時中で、一種異常な心理状態にあった市民は、もう、これ以上アメリカ軍に抵抗できないという場面で、次々と手榴弾や拳銃で自殺した。

 また、そのような武器を持たない人は家族同士、刃物で肉親を殺して、自分は生き残ってしまったという体験がいまだにトラウマになっている。まさにこの世で地獄を見たわけです。


 だから沖縄の人たちの反戦思想はもの凄く強い。それは、琉球新報とか、沖縄タイムズの社説を読むと良く分かります。当然でしょう。

 このような歴史的背景があるので、正直を言えば沖縄の人は地元に米軍基地があるというだけで目障りで、本音は、一人残らずいなくなって欲しい。

 しかし、日本全体の安全保障体制のために我慢してきた。

 それなのに、本土の人間は自分のところに基地が無ければ、沖縄のことなど知ったことではないというのが、沖縄の人には分かるのでしょう。怒りを、ずっと抑えていたわけです。


◆沖縄県民の対米感情を一気に悪化させた、「米兵による日本人少女レイプ事件」

 

 今から10年前に、沖縄の米兵が、現地の少女を暴行したことにより、沖縄県民の怒りが爆発しました。

 当然でしょう。あまりにも激しい抗議に日米安全保障条約の危機とまでいわれたのです。これは、アメリカが悪い。完全に悪い。

 いつもアメリカ政府に頭が上がらない歴代の首相(この時は橋本政権だった)ですが、さすがになんとかしなければ、沖縄県民の怒りが収まらない。

 そこで、1996年4月、橋本首相が今後5年~7年以内に普天間基地(飛行場)を日本、つまり沖縄に返還してくれといいました。

 これに対して、アメリカは、「普天間は明け渡しても良いが、他の基地を用意してくれ」といってきた。

 そこで出てきた案が、「名護市にあるキャンプ・シュワブ沖に海上ヘリポートを建設する」、という話だった。

 これで、沖縄の人たちはまた、怒りました。当然です。

 「普天間を明け渡せ」ということは、「沖縄から、本土へ移せ」というつもりだったのに、何のことはない。沖縄のこちらから、あちらへ移るだけ。

 沖縄は、面積としては日本全土の0.6%、人口は約1%を占める場所に過ぎないのに、在日米基地の78%が沖縄に集中している。

 しかも、前述のとおり、沖縄はアメリカ軍と本土決戦をした唯一の場所。なんという皮肉でしょう。

 沖縄のひとは「日米安保条約があるから、日本が在日米軍基地を受け入れなければならないのは分かるが、何もここまで、「沖縄だけ」に押しつけなくても良いではないか、ということなのです。

 因みに普天間基地はいまだに返還されていません。


◆極東条項

 

 日米安保条約の第6条のことです。

 

第六条  日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリ力合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基づく行政協定(改正を含む)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。

 つまり、在日米軍は日本の安全、極東の安全保障のため、という目的のためにのみ、日本が用意してやった基地や施設を使うことが許される。ということです。

 日本を出城にして、ここから世界中に飛行機を飛ばして爆撃なんかしては、いかんぞ、という意味です。

 ところが実際には、第6条は守られていないのです。

 イラク戦争は2003年3月20日に始まりましたが、それよりもずっと前、1991年の湾岸戦争以降、イラクに設定された飛行禁止空域の監視活動には、青森・三沢基地から飛んでいったF-16が随時派遣されています。

 少し話がそれますが、イラクにおける飛行禁止空域とは、湾岸戦争後まもなくアメリカ、イギリス、フランスによってイラク北部(北緯36度以北)および南部(北緯33度以南)に設定されたもので、北部のクルド人および南部のシーア派イスラム教徒という国内少数派への弾圧を予防するためと説明されています。

 アメリカ、イギリス両軍が偵察、監視を行っており、イラクの戦闘機やヘリコプターがこの空域に入れば撃墜の対象とされます。

 但し、これは、米英仏が勝手に設定したもので、国連決議を経ていないので、国際法上の法的効力は無いと思います。イラクも同意していませんから。

 いずれにせよ、ここで私が何を主張したいかと言えば、米国は安保条約を守っていないこと、そして、日本政府もそれを百も承知の癖に文句を全く言わないのはあまりにもひどいのではないかということです。


◆米軍再編成。

 

 アメリカは世界中に兵隊を送っています。

 昔、ソ連が存在していたとき、つまり冷戦の時代はソ連を常に見張って、攻撃できるようにしておかなければならなかったから、ヨーロッパにも大勢の兵力を割いていたのですが、今は、ソ連が崩壊して、冷戦はありません。

 その代わりに、やたらと世界中で「テロリスト」が出てきて、今、アメリカ政府の中枢部の頭はもっぱら、テロリストに対応できるような軍事力の配備に集中しています。

 911テロの後、アメリカ政府は北東アジアから中東にかけての弧状の地域を「不安の弧」と呼んで、ここら辺が世界で一番注意を要する、と見ているのです。

 けれども、その辺りまで米国本土から毎回戦闘機やら、軍艦を派遣していたら間に合いません。

 そこで、他の国に配備している兵隊はアメリカ本国を守るために、呼び戻すけれど、日本は丁度良いところにある「基地」として使おうとしているのです。


◆テロリストをやっつけるための基地があれば、テロリストの逆襲に遭う可能性が高まる。

 

 テロリストは、米軍が日本の基地から飛んでくるのを十分に承知しています。ということは、日本にある米軍基地が、テロリストの報復標的になりやすい。

 それなのに、日本政府は唯々諾々とアメリカの要求に応じます。 たまらないのは、沖縄の人です。

 何しろ、日本全体の国土面積の0.6%しかない沖縄に、全在日米軍の兵力の78%が集中している。テロ攻撃があったら、一般市民がとばっちりを受ける可能性が高い。


◆日本の安全保障だというなら、他の都道府県ももう少し在日米軍を引き取れよ、ということです。

 

 沖縄は、太平洋戦争の時にあんな悲惨なことがあって、しかも1972年まではアメリカだったのです。 

 つまり、それまで沖縄は右側通行だったのですよ。通貨はドルだったのですよ。東京から沖縄に行くのに、パスポートが必要だったのですよ。

 そんなに苦労したのに、沖縄の人から見れば、日本政府は、面倒な基地は殆ど全て沖縄に押しつけている。

 日米安保が大切だというなら、本土はいくら何でももう少し基地を作るとか、負担を引き受けても良いじゃないか、なんだ、面倒は全部沖縄に押しつけやがって、ということなのです。


◆沖縄県民を軽んじているのは日本人です。

 

 有名な日記作家の江草さんが、昨日、「アメ公は沖縄県民をナメるんじゃねえ」ということを書いておられました。

 全くその通りですが、沖縄県民以外の日本人もまた、あまりにも沖縄に冷たいのではないかと思います。

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