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2006.03.26

「<尊厳死疑惑>殺人容疑も視野、慎重に捜査 富山県警」法制化せずに現場の判断に任せるから、毎回揉めるのだ。

◆記事:<尊厳死疑惑>殺人容疑も視野、慎重に捜査 富山県警」

富山県射水(いみず)市朴木、射水市民病院(麻野井英次院長、200床)の外科部長(50)が00~05年、がんなどで意識不明になった入院患者7人の人工呼吸器を病院側に告げず独断で外し、

その後、7人が死亡していたことが25日、分かった。



昨年10月、別の入院患者の人工呼吸器を外そうとしているのを知った看護師長が院長に報告し、病院側が内部調査して発覚した。

外科部長は「患者のための尊厳死だった」と病院側に説明したが、いずれも家族が同意した書面はなく、少なくとも6人については本人の生前の意思を確認していなかった。

専門家は「尊厳死にも安楽死にも当たらない」としており、県警は殺人容疑などでの立件も視野に関係者から事情聴取し、慎重に捜査を進めている。

病院の説明では、昨年10月上旬、富山県在住の男性患者(78)がこん睡状態で病院に運び込まれた

。外科部長がこの患者の人工呼吸器を外すように指示しているのを知った看護師長が同12日、院長に相談。院長は指示を中止させ、同日、病院内に調査委員会を設置した。

調査委は過去10年間にさかのぼって、院内で同様の事例がなかったかを調査。その結果、50歳代から90歳代の患者7人(男性4人、女性3人)が人工呼吸器を外されていたことが分かった。

当時、いずれも富山県内に在住。7人とも末期症状で意識がなく、5人はがん患者だった。

家族の同意について病院側はカルテに記載があったというが、外科部長は同意書を求めるなど文書での確認はしていなかった。

7人のうち1人については、家族が生前、延命治療の中止に同意していたと話したというが、調査委は7人の家族に再度、確認作業をしていない。

外科では外科部長を含む医師4人と看護師が複数で患者の治療に当たっており、病院側は、他の医師や看護師は以前から、7人の人工呼吸器を外した行為を知っていたのではないか、としている。

昨年10月に男性患者が入院した時は外科病棟のベッドが満床で、内科病棟に搬送した。そのため内科の看護師長が、人工呼吸器を外そうとしていることを知って院長に報告した。

麻野井院長は、「外科の他の医師や看護師は部長の指示に逆らえなかったのではないか」としている。
また麻野井院長は会見で、尊厳死には、複数の医師が繰り返し患者が末期状態にあることを確認し、患者本人の意志を確認する作業が必要と説明。

外科部長の行為について、「こうした手続きをしておらず問題」と話した。

(以下略。読みたい方は、こちらに記事全文を保存してあります。これ、しってます?「ウェブ魚拓」という、Webページのキャッシュを記録するサービス。元の記事が削除されても、読める)(毎日新聞) - 3月26日7時46分更新


◆解説(と云っても私も今日初めて勉強したのだが):安楽死と尊厳死の違い。

安楽死 :助かる見込みがなく苦痛の強い患者などを、人為的に死へ導くこと。

東海大安楽死事件で横浜地裁は1995年3月、医師の行為が緊急避難の安楽死として認められる要件として

(1)耐え難い肉体的苦痛がある

(2)死期が迫っている

(3)苦痛緩和の方法を尽くし、ほかに手段がない

(4)生命短縮を承諾する本人の意思表示がある-

を示した。

患者の意思で延命治療をせず、自然に死を迎える「尊厳死」とは区別される。



尊厳死:人工呼吸器を外すなどして、末期患者の延命治療を中止することで「消極的安楽死」とも呼ばれる。

苦痛から解放するため薬物などを投与する「積極的安楽死」と区別される。

横浜地裁は東海大病院事件判決(1995年)で延命治療中止の要件として

(1)回復の見込みがなく、死期が迫っている

(2)治療行為の中止を求める患者の意思表示か、患者の意思を十分に推定できる家族の意思

(3)「自然の死」を迎えさせる目的に沿った決定―

の3つを挙げている。

ことし3月の川崎協同病院の筋弛緩(しかん)剤事件判決で、横浜地裁は終末医療で治療を中止できる条件として

「死期が迫り、治療や検査を尽くした上で他の医師の意見も聴き確定診断すべきだ」と指摘した。


◆国が法制化しないで、現場の判断に任せるからこういう問題が続くのだ。

要するに、「安楽死」は積極的、能動的に患者を「殺す」訳である。

一方、「尊厳死」は「治療を止め、死期を早める」ことである。

いずれの場合にも、患者の苦痛を取り除くのが目的であること、本人の同意、又は、本人の意思を充分推察出来る家族の同意が必要だとされている。



今回の富山県の病院は何を騒いでいるかというと、本人の意思は確認できる状態ではなかったが、家族の同意も得ていなかったのではないか?ということが、問題のようだ。

しかしながら、本件に関しては、事実の全貌がこれだけの新聞記事で全て明らかになっているとは到底考えられず、事実認定が出来ないまま、判断は出来ないから、私はまだコメントしない。



ただ、一般論として書いておきたいことがある。

問題の本質は、「安楽死」「尊厳死」を定義した法令が無いことと、これらが「違法性阻却事由」として規定されていないこと、である。

現時点における唯一の法的根拠は、法律ではなく、解説にも登場する、1995年横浜地裁の判例しかない

判例は法律に準じる効果を持つ、とされる(異論もあろうが、法律論ではないから、細かいことは無し)。



だから、現場の医師が悩みに悩んで、挙げ句に殺人罪とか云われるのである。たまったものではない。

考えれば分かるだろう。

法律の裏付けのない、「安楽死」や「尊厳死」を敢えて断行した医師は、下手をすれば今回のように、殺人の容疑をかけられ、場合によっては、医師生命を剥奪される。

過去の海外の例では、故意に患者を殺害して喜んでいた変態医師もいたが、

日本における「安楽死」・「尊厳死」のケースでは、それぞれの医師は患者の苦痛を目の当たり(まのあたり)にして、悩みに悩んだに違いない、と私は想像する。


◆繰り返すが、国が狡いのだ。

繰り返すが、国が狡いのだ。難しい問題なので、いつまでも先送りして、はっきりと法律として明文化しないから、問題が起きたときには、現場の医師が責任を問われるのだ。


◆犯罪とは何か。

犯罪とは「構成要件に該当する、違法、有責な、行為」である。

つまり、或る行為が犯罪であると推定されるためには、

  1. 構成要件該当性

  2. 違法性

  3. 有責性

  4. 行為性

という4つの関門をクリアしなければならない。

全部書くと長くなるので、初めの二つについて説明する。

◆構成要件とは何か。

狭義の刑法、つまり、「刑法典」(「刑法」という名前の法律)は、附則を除き、全部で、264条から成る。

前半(第1条から第72条まで)を刑法総則とか総論などといい、罪と刑罰に関する一般的、普遍的なことがかいてある。

後半(第73条から第264条)を刑法各論とか各則という。ここには様々な「違法行為の型」が書かれている。

構成要件とは、刑法各論に記されている、この「違法行為の型」のことだ。

たとえば、
199条「人を殺したる者は死刑又は無期若しくは三年以上の懲役に処す」

(私が習ったとき、刑法はまだ文語体だった。今の口語のは覚えていない。面倒だから調べない)とある。

この「人を殺す」のが「殺人罪の構成要件」である、という。



◆違法性阻却事由

或る行為が構成要件に該当したとき、その行為は一応、「違法である」と「推定」される。

しかし、構成要件に該当していても違法ではない、と判断されるケースが刑法総則で定められている。

例えば、皆さんご存知「正当防衛」(急迫不正の侵害に対し、自己又は他人の権利を防衛するため、止むことを得ざるに出でたる行為は之を罰せず)。

また、「正当な業務上の行為」

これは当たり前で、例えば外科医が患者の身体にメスを入れる行為は傷害罪の構成要件に該当するが、仕事だから、違法ではない(これを、「違法性が阻却される」というのだ)。

また、拘置所の職員が死刑を執行するのは、殺人罪の構成要件に該当するが、これも仕事なので、違法性阻却事由に該当し罪に問われない。


◆国が「安楽死」と「尊厳死」の要件を明記して違法性阻却事由に含めれば済むのだ。

今までの説明で、分かっていただけるかどうか、何とも言えないが、要するに、安楽死と尊厳死の問題をスッキリさせるためには、

両方の定義を明確にすることと、これらは違法性阻却事由に含めるという文言(もんごん)を刑法に追加すればよいのだ。


◆安楽死は必要ですよ。

最初に書くべきだったが、私は、「安楽死」「尊厳死」は当然認められるべきだ、という思想を抱いている。これは、経験による。

ガン患者の末期に付き添ったことがある人は、私と同様に、当然「安楽死は認められるべきだ」と考えるのではないか。



患者本人が勿論一番、痛くて苦しいのだが、あの末期の激痛に悶え苦しむ患者の傍にいて、もう助からないことが明らかなのに、医師すら痛みを取り除くことが出来ない。

勿論素人のこちらは何も出来ない、という状態は「地獄」と表現しても決して誇張ではない。

命も助からない、痛みも取り除けない相手に、「寿命が尽きるまで苦しみ抜いて生きることを強いる権利」が他人にあるとは、私にはどうしても思えないのである。

まあ、修羅場を経験しないと、分からないな。こういうことは。

P.S.

私は滅多にこういうことを言わないが今日だけはあきれたので書かせて貰う。

私は現在同じ文章をWeb日記 Enpituの「時事社会」と言うジャンルに登録し、

同時に、ココログにも載せている。

私が、エンピツでこの稿を上げた僅か30分後に全く同じテーマで似たようなことを書いている男がいる。

さすがに中身の文章は異なるが、題名までそっくりだ。普通、常識としては、重複は避けるものだ。あきれた。

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