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2006.04.25

「脱線事故 周りの言動で心に傷」←「アンダーグラウンド」(村上春樹)がとっくに指摘している。

◆記事:脱線事故 周りの言動で心に傷 (NHK)

107人が死亡し、555人がけがをしたJR福知山線の脱線事故から、25日で1年になります。

NHKが事故でけがをした乗客にアンケートしたところ、事故で体や心が傷ついただけでなく、事故のあと、周りの人の言動などで心に新たな傷を負ったという人が回答者の半数近くを占め、

心のケアに周りの理解が欠かせないことが明らかになりました。



NHKは、福知山線の脱線事故から1年になるのを前に、事故でけがをした乗客のうち、連絡先のわかったおよそ450人にアンケートへの協力を依頼し、35%にあたる157人から回答を得ました。

この中で、東京都精神医学総合研究所がまとめたPTSDについての設問に基づいて尋ねたところ、回答者の39%にあたる59人が、事故を思い出して眠れなくなったり、神経が過敏になったりするなど、

PTSDになっているおそれが高いことがわかりました。

さらに、事故のあと、周りの人の言動などによって新たに心の傷を負うことが「たびたびあった」という人と、「何度かあった」という人が合わせて66人で、回答者の43%を占めました。

中には、「無理をしているのに、職場で『笑顔が足りない』と注意されて深く傷ついた」という人や、「事故から1週間ほどで、肉親に『もう大丈夫だろう』と言われ、つらかった」という人もいました。

兵庫県こころのケアセンターの加藤寛研究部長は「周りの人が回復が遅いと見ると、被害者はますます孤立してしまう。心の傷があって当然だと、周りが受け入れることが大切だ」と話しています。(04/24 05:37)


◆コメント:福知山線の事故に限ったことではないのです。

本題と全く関係がないが、この記事がどうして敬体(俗にいう「です、ます調」のこと。「である。」「だ」を常体という)かというと、

NHKのニュースサイトに載っている記事であり、ほぼニュースの原稿をそのまま載せているからである。

NHKホームページのニュースは簡潔な文章である。

あるプロのナレーターは、毎日これを初見(練習しないでいきなり通して読むこと。元来音楽用語。初めての曲を楽譜をみてすぐに演奏すること。

この能力が高いと「あの人は初見が利く」と表現する)で早めに音読することを日課にしているという。


さて、本題であるが、この記事に書かれていることは、作家の村上春樹氏が地下鉄サリン事件の被害者を一人ずつ訪ねて、インタビューを行い、

本にまとめた「アンダーグラウンド」(講談社文庫)を読んだことがある人にとっては、少しも意外ではない。

この本には、地下鉄サリン事件が起きたときに聖路加精神科医長で、その後、九段下にメンタルクリニックを開業した中野医師へのインタビューが載っている。

これを読むと、地下鉄サリン事件の被害者の相当数が、我々には到底想像出来ないような精神的、肉体的苦痛を受けていることを知り、愕然とする。

因みに、比較的、悲惨な事故現場になれている救急隊員や、警察官の中にも、あまりの惨状を目撃したことにより、PTSDになるひとが多いのだ。



PTSDはフラッシュバックと云って、事件の場面が何の前触れもなく脳裏に蘇り、パニック状態になるのが最も良く知られた症状だが、それは「精神症状」であるが、肉体的な症状を伴うこともある、という。

中野医師によれば、何人かの患者さんは、地下鉄サリン事件の数週間後から、ひどい頭痛に悩まされるようになり、それが始まると仕事にならない。

ところが、職場の人々から「お前が弱いのだ。だらしがないのだ。根性が無いのだ」と非難され、泣く泣く仕事を辞めた人もいるという。

どれほど、悲しく、悔しいだろう。その無念は察するにあまりある。


◆犯罪・事件の被害者に嫌がらせをする人間の心理

事故・事件の被害者にまわりが辛く当たるのは、一つには、「死」という災いの場にいた人は「汚れた」存在だ、と見なしたがる民族的心理的傾向があること。

もう一つは、約3年前に書いた、犯罪の被害者を非難する人間の心理をご参照頂きたい。

心理学者の説明によれば、人間には「世の中は公平であるべきだ」という信念がある。そして、「自分だけは不幸な目に遭いたくない」という感情がある。

だから、「犯罪の被害者は、何か本人に落ち度があったから、そういう目に遭ったのだ」、という理由付けをしたがるのだそうだ。

そうしないと、「何も悪いことをしていないのに、ある時突然、犯罪に巻き込まれる可能性が、自分にもある」(そのとおりなのだ。)、と云うことになる。

それを認めたくない心理が、犯罪被害者を非難する、という行動に走らせるのだ。


◆世の中知らないことばかりなのだ、という意識を持つ。

先日、東大の小柴名誉教授の講義について書いた。

小柴先生は立派な学者というのは、「分からないことが如何に多いかを痛感している人だ」と仰っていた。

小柴先生は学問に関して述べておられたわけだが、学者ではなくとも、世の中の事象全般に関して同様の意識を持つことは大切である。

つまり、世の中には自分がいくら考えても想像もつかないこと(この場合は、事件や事故の被害者、遺族の精神的・肉体的苦痛)があるのだ、ということを自覚することだ。

それができる人が増えるほど、理不尽な苦痛に苦しむ人が減る筈だ。

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コメント

neaさん、こんにちは。コメント、有難うございました。

ハワイ諸島も、起伏が激しい地形ですから、崖崩れ、落石などがあっても不思議でない
というのは簡単ですが、それほど悲惨な事故があったとは・・・。

被害者は、恐らく「落石」というよりも、neaさんが仰るような岩の塊の直撃を受けた
のでしょうから、遺体の損傷の激しさは言語に絶するものだったのでしょうね。

それを見てしまったレスキュー隊員。
若くしてリタイアをしなければならなかった人々は、人を救おうとしてそうなったので
すから、なんと気の毒な話でしょう。

neaさんが云われるとおり、私たちもいつそういう目に遭うか分からない、ということ
を皆、目を逸らさずに考えて欲しいものです。

私は、日本の過去の例を調べました。

無限に、と云って良いほど、レスキュー隊員、消防隊員、救急隊員、警察官、自衛官が
惨事ストレス症候群(というのだそうです)から、PTSDに発展してしまったケースがあ
ります。

いつぞや、佐世保の小学生の女の子が同級生で、毎日新聞佐世保支局デスクのお嬢さん
のクビをカッターナイフで切り裂いて殺害したという、恐ろしい事件がありました。

このときは、被害者は一人ですが、殺害現場の惨状は筆舌に尽くし難い様相を呈してい
たそうで、駆けつけた救急隊員が数ヶ月後、PTSDと診断されました。

西鉄バスジャックのときのバスの運転士さんは、事件以来、どうしてもバスに乗れなく
なり、退職なさいました。

人間の記憶とは皮肉なもので、学生時代、試験前に覚えたいことはなかなか覚えられず、
覚えてもすぐに忘れてしまう。

しかし、それでも覚えることはある程度、コントロール出来ます。

ところが、「忘れる」ことはコントロールできません。

忘れてしまいたいことを忘れられないのでPTSDになるわけです。

私は、人間が、記憶から消し去りたいことを、あたかもパソコンのデータをDeleteキー
で消すが如く、消去出来たらいいのに、と思います。

それが出来ないのは、個体保存本能と関係しているからだと思われます。

たとえば危険な出来事を忘れないのは、同じような危険な体験をしないようにする働き
があるからです。

忘れることが出来ないと、人間は、すごいエネルギーを用いて思い出したくないことを
無意識(フロイトの云うところの無意識)に抑圧する。

それに非常なエネルギーを用いるので、例えば、本文で取り上げた地下鉄サリン事件の
被害者のかなり方が、記憶力の減衰を訴えています。

抑圧にあまりにもエネルギーを摂られてしまっている所為だろう、と、精神科医が述べ
ています。

しかしながら、PTSDの治療法も少しずつ開発されております。

一体、どういう原理なのか分かりませんが、眼球を急速に運動させる(あたかも「速読
訓練」のように)という、純物理的な療法が効果を現す場合があるそうです。

無論、全てのひとに有効では内容ですが、人間の知性が人間の苦しみを救ってくれるこ
とを信じたいと願っています。

投稿: JIRO | 2006.04.26 00:55

わ、度々すみません。
見直したら、あちこち漢字のミスがありました。
ごめんなさい。

投稿: nea | 2006.04.25 17:56

こんにちは、JIROさん

数年前に滝へ向かうハイキングコースで巨大な岩が崩れて9名が亡くなるという惨事がありました。
救助に向かったレスキュー隊は15名。想像できないような悲惨な光景を見たそうです。この事故の後PTSDのリハビリで、カウンセラーが着き、約3ヶ月のリハビリ、そして現場復帰の出来なくなった隊員には、早期リタイヤを適用していました。
15名中、リタイヤを希望したのは7名でした。15名みな20台後半から30台の十分に訓練を受けた屈強なレスキュー隊員ですが、PTSDの後遺症は、その場にいない人間にははかり知れるものではありませんね。

心というものは、なんと脆いものか。そしていったんついた傷を癒すには、どれだけの長い時間と努力が必要でしょう。いえ、例えどれだけ時間を費やそうと、どうしようもなく消えない傷はあるのですよね。

いつ自分がその立場になるとも限りません。。。

投稿: nea | 2006.04.25 17:54

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