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2006.05.18

「日弁連など反対集会相次ぐ 共謀罪めぐり国会周辺で」←共謀罪の刑法体系における論理的矛盾。

◆記事:日弁連など反対集会相次ぐ 共謀罪めぐり国会周辺で

犯罪に合意するだけで処罰可能な「共謀罪」を新設する法案の国会審議がヤマ場を迎えていることを受け、日弁連や市民団体、野党議員らが17日、東京・永田町の国会周辺で相次いで法案成立に反対する集会を開いた。

日弁連は、参院議員会館で集会。日弁連は「日常会話や電話、電子メールの内容で犯罪とされる。盗聴や密告が奨励される監視社会になる」と共謀罪に反対を表明しており、

海渡雄一弁護士は「なんとか政府与党案を廃案に」と訴えた。

市民団体は国会前で集会を開いた。グリーンピース・ジャパンの星川淳事務局長は、共謀罪反対にNGO(非政府組織)など約190団体が賛同していると報告。

参加した男性は「市民運動の自由を奪う法案。NGO活動自体が狙われかねない」と危機感を強めた。(共同通信) - 5月17日21時33分更新


◆コメント:共謀罪の刑法体系における論理的矛盾。

先に断っておくが、共謀罪法案の根源はテロ組織に関する条約にあることを政府が法案の正当性の根拠にしていることは、当然知っている。

その上で、以下、所見を申し述べる。



イタリアの啓蒙思想家、チェザーレ・ベッカリーアという人物が今から約240年も前に書いた「犯罪と刑罰」という本がある。

この中で、ベッカリーアは「犯罪の尺度は社会に対して与えた損害である」と書いている。

「考えただけ、話し合っただけでは犯罪にならない」、という近代刑法の原則の源である。



犯罪に至る過程は、一般的に次のようなステップと踏む。

犯罪を行おうとする者は、まず、どのような犯罪をどのような方法で行うかについて考え、決意する。この段階ではアイデアだけだから、社会に損害は与えておらず、処罰されることはない。当たり前である。

次に、犯罪を行う決意に基づいて、犯罪実行の準備を行う。「予備」とはこのことである。この段階でも社会的損害は発生していない。したがって、処罰しないのが原則である。

刑法は全部で264条あり、第1条から第72条までを刑法総則といい、犯罪とそれに対する刑罰に関する一般的なことが定められているが、現行刑法の総則では、予備に関する規定は存在しない。

現行刑法は、個別犯罪に対して各則(刑法第73条から第264条)で例外的に、殺人罪、強盗罪などの重大な犯罪の予備についてだけ、処罰することとしている。



予備の次の段階として、犯罪の実行に着手したが、結果が発生しなかった場合を「未遂」という。

これは、犯罪の実行行為を行っているので、損害発生の危険が高くなる。そこで、刑法総則でには、明文に規定がある場合には未遂も処罰の対象となる、と定めている。

73条以降を読むと、具体的な犯罪についての規定があり、未遂を罰する犯罪に関しては、必ずその項目(条)の最後の項に「未遂は、罰する」と書かれている。

書かれていないものは、未遂を罰しないことを意味している。



犯罪行為を実行して結果が発生すれば、「既遂」となる。

犯罪と定められている行為の既遂は社会的損害を発生させたのだから、全ての既遂は処罰される。これは、当たり前である。


◆犯罪の3タイプ

以上を前提とすると、犯罪は3つのタイプに分類することが出来る。


  • 第一のタイプ。予備、未遂は処罰されず、既遂だけが成立する犯罪。

  • 第二のタイプ。未遂と既遂が処罰の対象となる犯罪。

  • 第三のタイプ。予備、未遂、既遂の全てが処罰の対象となる犯罪。

これに共謀罪を当てはめると、大変おかしなことになる。

第一のタイプは、既遂のみが処罰の対象であり、未遂、予備(準備)すら処罰の対象でないのに、何故、共謀(相談して、合意し、まだ準備もしていない)を罰することが可能なのか?

例を挙げるなら、刑法260条の「建造物損壊罪」は5年以下の懲役だから、その共謀は共謀罪の処罰対象となる。

たとえば、労働組合や何らかの団体が、会社の建物にペンキで抗議文を書き付けようと相談したら、文字を書くペンキの準備もしておらず、ましてやまだ何も書いていないのに、共謀罪による処罰対象となる。



第二のタイプも同じ事である。既遂と未遂だけが処罰の対象で、予備は処罰の対象でないのに、相談して合意したら共謀罪の適用を免れず、罰せられることに正当性が無い。

第三のタイプはもともと予備でも罰せられるのだから、共謀罪の適用は比較的説明しやすい。

具体例として興味深いのは、公職選挙法222条「多人数買収罪」である。5年以下の懲役なので共謀罪の適用対象となる。

国会議員が選挙の際に、形勢が不利だというので、選挙事務所の事務長が選挙人を多数接待供応する相談をしたら、共謀罪により逮捕されるべきである。

センセー方は分かっているのだろうか?

また、野党修正案は、共謀罪の適用対象を、組織的犯罪集団に限るというが、一旦共謀罪を成立させたら、権力はどんどん「組織的犯罪団体」を拡大解釈していく事が容易に想像できる。


◆イラク復興支援特別措置法のコメディをもう忘れたのだろうか(だろうね)?

サマワに陸上自衛隊が派遣されている根拠法は、イラク復興支援特別措置法だが、この法律は自衛隊の活動範囲は、「非戦闘地域に限る」としているのだ。

「非戦闘地域」の定義は、

「現に戦闘行為が行われておらず、かつ自衛隊が活動する期間を通じて、戦闘行為が行われる危険が無いと認められる地域」

である。

ところが2004年11月の党首討論で当時の民主党岡田代表から「非戦闘地域の定義は?」と訊かれ、答えられない小泉首相は、

「自衛隊が活動するところが、非戦闘地域だ」

と答えた。

なるほど。それならば、いっそのこと、日本中の自衛官をイラク全土に配備すれば、イラクは一瞬にしてすべて「非戦闘地域」になるわけだ。

小泉首相は「東洋の魔術師」として永遠に歴史に名前を刻まれるだろう。



何を言いたいか、念をおすと、「共謀罪の適用対象に一般国民は含めず、組織的犯罪集団に限る」などの約束は簡単に反故にされうるということである。

以上。

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コメント

他人のブログに書き込むときは自己紹介ぐらいしましょうね。

さて。

「『戦闘』とは国家間の武力行使。テロリストは国家ではないから『戦闘』ではない。」

そういう理屈があることなど、百も承知です。

典型的な「形式的思考」です。

下世話な云い方をすれば、「きれい事」。或いは、「屁理屈」というのです。

問題は、現実に、いいですか?現実に危険か危険ではないか?なのですよ。

自衛官の安全が確保出来るかどうか、が問題にされるべきなのです。

「戦闘とは主権を持った国家間の武力行使だ。ゲリラやテロリストは犯罪集団で国家ではない。

詭弁です(詭弁の意味は辞書を引いて調べて下さい)。

それでは、「自衛隊が活動する地域は非戦闘地域に限る」という文言が形骸化するではないですか。

イラク戦争は違法行為なのだから、そもそもそれを支持してはいけないのだと言うことを、過去に数百回書きましたので、ゆっくり読んで下さい。

それから、「人権侵害が国家と個人の間でのみ生ずる」という意見は生まれて初めて聞きました。

>暴力の質がどれほど、ひどかろうと(例えば、女子高
>生を監禁輪姦してコンクリ詰めにするとか)「人権侵
>害」ではない。

これ、犯人は、被害者の生存権を侵害していないのですか?

投稿: JIRO | 2006.05.18 19:14

どうもひどい誤解をしてるようですね。小泉がいった「戦闘地域」というのは国家間の戦闘ですから。「非戦闘地域」というのはゲリラはいるのですよ。戦闘地域と非戦闘地域の区別は危険の大小でなく、戦う対象の区別に依拠してる。イラクの非戦闘地域は、恐らく殆どの地域がそうなる。小泉の発言には何も問題がない。国家及びそれに準じた存在はないから。(例えばアフガンの北部同盟や、タリバンのように外交関係を結んでいない。)
左翼の人間は、私人間の暴力を「人権侵害」とは
言わないでしょう。国家VS個人の間でのみ「人権侵害」は発生する。暴力の質がどれほど、ひどかろうと(例えば、女子高生を監禁輪姦してコンクリ詰めにするとか)「人権侵害」ではない。
これなら、わかりやすいでしょう。

投稿: popper | 2006.05.18 08:58

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