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2006.08.20

「安倍氏の政権構想、憲法を全面改正・成長と歳出削減優先」←危ねえなあ・・・。

◆記事:安倍氏の政権構想、憲法を全面改正・成長と歳出削減優先(17日付 日経)

ポスト小泉の有力候補である安倍晋三官房長官が9月1日に公表する政権構想の骨格が16日、明らかになった。

現行憲法の全面的な改正を打ち出し、集団的自衛権の行使を容認する。

済政策では成長戦略と歳出削減を優先し、消費税率引き上げの時期や幅には触れない。

アジアや資源国との自由貿易協定(FTA)締結の促進も盛り込む。

政権構想では小泉政権の構造改革路線を大筋で継承する。

一方で、倒産や失業などからの再起を政府が後押しする「再チャレンジ支援」を明記するなど小泉路線を部分的に修正する姿勢も示す。

家庭、地域、国への思いを尊重する教育改革を掲げ、教育基本法の改正も盛り込むなど、小泉政権と比べて保守色を鮮明にするのも特徴だ。 (07:02)


◆コメント:安倍晋三が改憲論者なのはずっと前から明らかなのですがね。

これは、8月17日(木)日経朝刊政治面に載っていた記事である。

しかし、次期総理となることがほぼ確実、と目されている人物が「現行憲法の全面的な改正」という重要な発言をしたのに

日経紙面ではわずかなスペースしか割かれていなかった。そんなことでいいのですか?

「集団的自衛権を認める」ですと?どういう意味を持つのか。

私は、何度も説明しているが、丁度一年前に書いた記事が一番マシだと思うので、是非ご参照下さい。

安倍氏が憲法の全面的改正というのは、戦争放棄を謳った第9条の改正が主目的だが、

それだけ強調すると如何にも好戦的な響きとなるので、全面的に改正するという表現でカモフラージュしているのだろう。


◆全面改正の必要を訴える、ということは現行憲法全部覚えているんでしょうね?

現行憲法を「全面的に」改正する必要がある、と主張するからには、当然の前提条件として現行憲法を隅から隅まで熟知していることが求められる。

安倍氏の主張に賛成する国民も同様である。当たり前でしょう?

今の憲法を良く知らないのに、「現行憲法を全面的に改正する必要がある」と言い出せるわけがない。皆さんさぞかし憲法を猛勉強しているのだろう。

当然全ての条文を諳んじて(そらんじて)いるだろうし、各条文の意味、各条文に関する学説、判例を研究し尽くしているのだろう。

それぐらい勉強して、初めて改正が必要だ、と主張することができる。

「全面改正」を口にするからには、それぐらいの覚悟が必要である。知らないものを「改正する」もへったくれもないだろう。



勿論これは嫌味である。

安倍晋三氏がそこまで、憲法に通暁しているとは思えない。

彼を支持する国民の多くは第9条すら、覚えていないのではないだろうか。

私のところにもたまにメールが来る。私が「集団的自衛権を認めてはならない」と書いた時が多いのだが、

内容を読むと明らかに個別的自衛権と集団的自衛権の区別すらできていない人が多いのに驚く。

「自分が何を知らないか、わからない」のである。恐ろしい。


◆安倍晋三氏の発言を読んでも、改憲の必然性が分からない。

ブックマークしている人が多いと思うが、日経の関連サイトに立花隆 メディア ソシオ-ポリティクスの最新号、

小泉首相“開き直り参拝” 日本が見失った過去と未来 の中で

安倍晋三を取り上げている(それが、この記事の主題ではないが)。



安倍晋三の対談集「日本を語る」における櫻井よしこの対談の一部が載っている。

孫引き(原著から引用した文章から、再び引用すること。本当は原著を読まなければいけないのだが、間に合わない)となるが、抜粋引用する。

最近の著書、安倍晋三対論集「日本を語る」の中でも、櫻井よしこを相手にしての「憲法全文を書き直す気概を持つべし」の中で、

次のように、はっきりと憲法改正が自分の政治目標であることを明確にしている。

そもそも、1955年に自由党と民主党が一緒になって自由民主党を作った最大の目的の一つが、自主憲法を作ることだった。

憲法改正には、議員総数の三分の二の賛成が必要だったが、三分の二の多数を集めるためには、保守合同が必要だという事情があったのだ。

しかし、保守合同後の鳩山内閣も、岸内閣も、憲法改正を実現できなかった。

「私の祖父、岸信介の目標も憲法改正というか、自主憲法制定でした。

(しかし岸は)安保改定にすべてのエネルギーを使ってしまい、憲法改正はできなかった」(中略)

安倍は、一貫してスジ金入りの改憲派であり、その主張をいささかでも隠そうとしたことはない。

櫻井よしことの対論においても、そこを明確にしている。

「私は政治家としては3代目です。岸信介は自民党結党当時の幹事長ですが、首相になっても憲法改正に着手することはできませんでした。

父、安倍晋太郎も残念ながらできなかった。

こうなると憲法改正は、われわれ戦後生まれの世代に課せられた大きな宿題であり、責任でもあると痛感させられます。

いまこそ改憲という戦後半世紀以上に及ぶ懸案をきちんと片づけて、次の日本を担う新しい世代に、新しい憲法を授けていくべきだと思います」

このような安倍の発言に、櫻井よしこが、

「安倍さんは遠くない将来、総理・総裁になられる方です。憲法改正がご自分に課せられた歴史的な課題だと捉えておられるということですか」

と問うと、安倍は、

これまでの自民党政権は、憲法改正を実現するためには、あまりに大きなエネルギーが必要だということがわかっていたがために、それを避けてきたとして、こういっている。

「憲法改正を実現しようとすれば、激しい論争を呼びますし、党内でそれをテコに権力闘争を優位に進めようという人もたちも出てくる。

だから、首相になると改憲は棚上げしてしまいがちでした。

しかし、もう戦後体制をこのまま続けていくのは限界です。これは私というより私たちの世代が責任をもって取り組まなくてはいけないことです。

次の総理がこの問題に片をつけなければ、日本の未来は非常に暗いものになってしまいます」

何度も読んだのだが、安倍晋三が憲法改正を訴える具体的な理由、

つまり、「今の憲法のどこが悪くて、どのように変えるつもりなのか。それによって、日本国民に如何なるメリット(或いはデメリット)があるのか」が全く分からない。

分かることと言えば、

1.自分は3代目の政治家である。祖父の代から自主憲法を制定しようとしたが、祖父も父も成し遂げられなかった。

2.戦後体制を続けていくのは限界である。

という二点のみである。


◆動機に説得力がない。

私が辛うじて理解できた、安倍晋三の改憲論の根拠を読むと、まず、祖父・岸信介、父・安倍晋太郎が憲法改正に着手できなかったと言うが、

直系尊属とはいえ、祖父や父と安倍晋三は別個の人格なのであるから、同じ思想を持つ必然性も義務も存在しない。

敢えて嫌味な書き方をすると、

「おじいちゃんもパパも出来なかった憲法改正を僕がやるんだ!」

ということになる。個人的事情でムキになって「まず改憲ありき」だとしたら、とんでもないことだ。



二点目。

「戦後体制が限界に来ている」という言葉からは何も分からない。「戦後体制」とは何か。

「戦後体制」とやらの何がどのように限界なのか。

今の憲法で国民が兵隊にも取られず、戦争をする心配が無い国で暮らしているのに、集団的自衛権を認めたらそうはいかなくなる。

日本の軍事費は、GDP(国内総生産)比1パーセントだが、日本は世界第2位の経済大国である。

GDP比1パーセントであっても、絶対額では世界4位の軍事大国で、最新鋭の兵器も保有している。

このような実質的には軍隊と変わりのない自衛隊をもつのに、戦後60年間、自衛隊は海外で人を殺したことは一度も無いし、殺されたこともない。

先進国でこんな国は他にないのである。

これは、「戦争はしません」という憲法を作り、それを60年間守り続けたということで、世界はその点に一目置いている。


◆若い方々、頑張って海外の新聞・雑誌を読んでみるといいですね。

これは、7月7日に書いたことの繰り返しだが、海外の新聞・雑誌を読んでいると分かるのである。

わたしとて、さほど英語が得意ではないから、限られるが、それでも、英国のTimes、The Economist、Financial Times、

米国のワシントン・ポスト、ニューヨークタイムズで、同趣旨の言葉を何度も読んだ。それは、要するに、

「日本は憲法によって武力の行使を禁止されている。そして日本はその規定を守り、戦後60年間、自衛隊を有してはいるが、ただの一度も武力行使をしていない」

と、ある種畏敬の念を込めて語られている。「日本は、決して戦場に行かない腰抜けだ」という考え方ではない。

平和憲法を遵守していることがステータスなのだ。


◆個別的自衛権は「正当防衛」だが、「集団的自衛権」を認めるのは、戦争をする国になる、ということだ。

日本国憲法は、国民の「平和的生存権」を守る、と憲法前文で謳っているのだから、

外国が攻めてきたらこれに対抗出来る程度の武力を保有することは、個別的自衛権であり、当然である。

但し、集団的自衛権を認めたら、終わりだ。

日本が全く侵略攻撃を受けていなくても同盟国アメリカが攻撃されたら(しかも、アメリカが先に戦争を仕掛けることが多いのに)、

自国に対する攻撃と見なさなければならない。アメリカの小間使いとなり、世界各地でアメリカの人殺しを手助けする恥ずかしい国になるのだ。



それでも安倍晋三を総理にしたい自民党員の方。責任をもって、よく考えて、総裁選で投票してくださいね。


◆子供がいない人間が日本を「戦争する国」にする資格はない。

読者の中には、お子さんが欲しくても出来なかったという方がおられよう。

その方々には私は全く他意はないことをご理解いただきたい。

但し、内閣総理大臣となると話が違うので書かざるを得ないのだ。最後に一言付け加える。

安倍晋三には子供がいない。

「我が子が戦場に赴く可能性がない」人が国政の最高責任者になり、日本の集団的自衛権を認め、日本を戦争が出来る国にする資格・権利は無い。

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