BSE(牛海綿状脳症)で検索された方が多いようなので、復習します。
◆1980年~1996年にイギリスかフランスに一日でも滞在した人は献血できないのです。
これは、厚生労働省の出した、昨年3月7日に発表した通達(ちょっと面倒ですが)を読むとはっきり書いてある。
1986年に英国で初めてBSE(牛海綿状脳症、所謂狂牛病)の症例が発見されました。
異常タンパク質プリオンが原因で起きるプリオン病で、牛に発症するのをBSEといい、人間のプリオン病はクロイツフェルト・ヤコブ病といいます。
特に、BSEの牛から感染したと思われるのを変異性クロイツフェルト・ヤコブ病と呼んでいます。
初めは、BSEとクロイツフェルト・ヤコブ病は関係ないと思われていたのですが、BSEが最も多数発見されたイギリスで、
通常とは違うクロイツフェルト・ヤコブ病による死者が連続して出たので、関係が有りそうだと言うことで、大騒ぎになりました。
◆BSEの原因とされる肉骨粉が使われ始めたのが1980年なのです。
肉骨粉とは、牛、豚、鶏、の肉をとった後のクズ肉、脳、脊髄、内臓、血液などを加工して牛に食わせていた飼料で、
これらの部分にはBSEの原因となる異常プリオンが特に多く含まれているので、多分、肉骨粉が牛のBSEの病因ではないかとされています。
それを使い始めたのが1980年。そして英国で牛の特定危険部位の流通がきちんと規制されたのが、1996年なのです。
ですから、その間は異常プリオンで汚染された肉骨粉を食べた牛の肉がイギリスでは普通に食用として流通していたのです。
◆その間BSEの牛の肉を食べたら、必ず変異性クロイツフェルト・ヤコブ病になるわけではない。
例え、BSEに感染している牛の肉を食べたとしても、上で述べたとおり、脊髄、脳、目などとくに危ない「特定危険部位」を食べていなければそんなに心配要らないと思います。
ただ、厚生労働省(に限らず役所の常ですが)は、やることが、いい加減だったり、妙に厳密になったりして、ヘンなのですが、
「万が一ということがあるので、この期間にイギリスかフランスに一日でも滞在した人はBSE感染牛の肉か危険部位を食べて、
変異性クロイツフェルト・ヤコブ病に罹っているかも知れない、と考えているのです。
クロイツフェルト・ヤコブ病の潜伏期間は長く、10年とされていて、今のところ治療法がないのです。
だから、「悪いけど、献血しないでください」と言われるのです。
私など、1993年から4年間イギリスにいたので、もう、全然できません。
しかし、帰国して10年近く経ちますがクロイツフェルト・ヤコブ病は発症しておりません。
さんざん、あちらの牛肉を食べたのですがね。
◆そこまで厳密なことを言うくせに、簡単にアメリカ産牛肉の輸入を再開した日本政府。
アメリカで最初にBSEが見つかったのは2003年12月23日です
(それまで見つからなかったのは、検査していなかったから或はいい加減な検査しかしていなかったからであることはほぼ明らかです。
ヨーロッパで肉骨粉が問題になった後もずっと規制しなかったのですから)。
翌日、日本を初めとする各国は直ちにアメリカ産牛肉の禁輸措置をとりました。
しかし、アメリカの食肉業者団体から、圧力をかけられ、ブッシュ大統領が昨年11月来日して、小泉首相に対し輸入再開を要求しました。
小泉君はブッシュの言いなりですから、すぐに輸入再開が決定され、2005年(昨年)12月下旬、輸入再開の運びとなりました。
ところが、それから一ヶ月も経たないうちに、アメリカは日本との合意に違反して特定危険部位である脊髄がついている肉を送ってきました。
日本はまた、アメリカ産牛肉の輸入を禁止しました。
にもかかわらず、また米国の圧力に屈して、今年8月7日から輸入を再開しています。
これらの肉は、日本政府の査察団が検査して、肉の処理過程に問題がない、35カ所の処理場で処理された肉であることになっています。
ですが、そんなことは、すぐに偽装できます。
また、安全だとされた処理施設が今も同じような処理をしているか、分かりません。極めていい加減です。
前述のとおり、クロイツフェルト・ヤコブ病の潜伏期間は10年、若しくはそれよりも長いのです。
10年後、現在責任者である役人はどこかに天下りしているし、政治家もずっと公衆衛生の仕事をしているわけではないので、
国民がクロイツフェルト・ヤコブ病に罹ろうが、知ったことではないのでしょう。ひどい話です。
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