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2007.09.08

「奈良、札幌の受け入れ拒否 「受診しない妊婦にも責任」←そのとおりだ。/【追加】厚労相、産科医不足問題で「報酬を引き上げたい」

◆記事:奈良、札幌の受け入れ拒否 「受診しない妊婦にも責任」(北海道新聞 09/07 18:10)

奈良県や札幌で、救急搬送された妊婦の受け入れを医療機関が相次いで断った問題で、

拒否された患者全員が出産まで一度も産科を受診してなかったことから、産婦人科医の間で批判の声が上がっている。

背景には札幌市内だけで年間一千万円を超す出産費用の未払いがあり、救急態勢の改善だけで問題は解決しない。

「病院や役所ばかり責められるけど、妊娠六カ月まで医者に行かない妊婦がそもそも悪い」

札幌市内の総合病院の産婦人科で働く四十代の男性医師は、奈良の女性の自己責任を問う。

奈良の女性も、札幌で五回以上受け入れを断られた女性五人も、全員に産科の受診歴が無かった。
「妊娠したかなと思ってから出産まで約二百八十日。その間、一度も受診しないというのは確信犯ですよ」。

札幌市産婦人科医会の遠藤一行会長も語気を強めた。

通常の患者は妊娠の兆候に気づいた時点で産科にかかる。

容体が急変しても、119番通報すれば、かかりつけ医に運ばれる。

国民健康保険なら一人三十五万円の出産育児一時金も支給される。

遠藤医師が「確信犯」と嘆く患者の大半は国保の保険料が未納、または無保険者という。

保険料未納なら、失業や災害など特別な事情がない限り一時金は差し止められる。

保険を使えないので妊娠しても産科にかからず、陣痛が始まってから119番通報する。
「救急車に乗れば必ずどこかの病院に行けますから。無事産んだら、退院する段になってお金がない、と。

ひどい場合は子供を置いて失踪(しっそう)する。病院はやってられませんよ」。

遠藤医師は嘆く。

同医会の調査によると、二○○六年度に、救急指定を受けた札幌市内の十四医療機関だけで、

出産費用の未払いは二十六件、総額一千万円を超す。

同医会理事で市立札幌病院の晴山仁志産婦人科部長は「予想より多い数字」と驚いた。

医療機関からみると、かかりつけ医がおらず、救急搬送される妊婦は、

未熟児などの危険性が不明でリスクが高い上、出産費不払いになる可能性も高く、受け入れを断る病院が出てくる。

ただ、産科にかからない妊婦を責めるだけでは、子どもの生命は守れない。

胆振管内で産婦人科を開業する六十代の男性医師は
「産科に行かない妊婦にはそれぞれ事情がある。救急態勢以外に、母親側の背景を検討して対策を講じないと、問題は繰り返される」

と訴えている。


◆コメント:奈良と札幌の妊婦には「かかりつけ」がいなかった

一昨日、「救急搬送妊婦の2割、最初の病院で拒否…千葉市」←マスコミの過剰・偏向報道

という記事を書き、その中で奈良の妊婦が病院の「たらいまわし」に遭い、死産となった事件に触れた。

そこで私は、

もう一つ不思議なことがある。

奈良県の妊婦は、死産という結果になり、気の毒ではあるが、何故「かかりつけ」の病院を指定しなかったのか。

妊婦は定期的に、同じ産婦人科に通っているはずだ。

妊婦はいつ産気づいても良いように、なるべく自宅近くの産婦人科をかかりつけにしておくものだ。

と書いた。

すると読者の方から、「奈良の妊婦にはかかりつけの医者がいなかった」ことを教えていただいた。

奈良の事件は8月27日に起きたが、新聞にはそのようなことは書かれておらず、ただ、
「11の病院が救急車の受け入れを拒んだので、死産に至った」

という内容だった。翌日、社説でこの問題を取りあげた社も多かったが、そこでもやはり、

患者側に落ち度が無かったのかどうかには触れられていなかった。

だから、私は「このような報道は不公平だ。」と書いた。やはりそうだった。

冒頭の記事は北海道新聞のもので、医者、病院側の言い分を載せている。

驚いたことに、奈良や札幌(でも同じようなことがあった)の妊婦は、妊娠六ヶ月まで、

医師の診察を受けていなかった。つまり、「かかりつけ医」がいなかったのである。

おかしいと思ったよ。

一昨日書いたとおり、かかりつけ医がいたら、救急車は最初にそこに連れて行くはずだ。

どうやら、奈良や札幌の「たらい回し」は、100%とは断言できないが、相当程度、患者にも責任がある、と考えられる。


但し、厳密に言うと、記事の後半で「六十代の男性医師」が言うとおり、

何故妊娠6ヶ月まで医師の診察を受けなかったのか、をさらに明らかにする必要がある。

単純に、患者がだらしのない人物なのか。

保険の問題なのか? つまり、国民健康保険の保険料が上がって払えず、保険証を取りあげられてしまって

病院の診察を受けたくても受けられなかったのか。

もし、保険料を払えなかったとしたら、それは、本人の責任ではない事情により極端に所得が低いのか。

または、怠惰で働かないから所得が低いのか。

或いは、実は保険料を支払える程度の所得はあるのに、故意に保険料を納めなかったのか。

健康保険の事だけを考えても、確かめるべきことはこれほどあるのだ。

そういうことを一切書かないで、とにかく、救急車の受入を拒否した病院・医者だけが悪い、と

決めつけた報道は、間違っている。


北海道新聞をいつも読んでいるわけではないので、この新聞が、一般的に優れた報道をする新聞社なのかどうか、

私には判断が付かないが、本件に関して、この記事を載せたのは、評価されるべきである。


◆【追加】記事:舛添厚労相、産科医不足問題で「報酬を引き上げたい」(読売新聞 - 09月08日 11:23)

舛添厚生労働相は8日、深刻化する病院の産科医不足について、

「勤務環境が非常に悪い。報酬面で見てあげないと、医者が不足し、なり手がいなくなるので、(待遇改善を)やりたい」と述べ、

産科医を診療報酬で優遇する考えを示した。都内で記者団に語った。

産科医は過酷な勤務体制や、医療事故の訴訟リスクが高いことなどから、減少が続いており、

産科を閉鎖する病院も相次いでいる。今後、厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会に、

産科に報酬を重点的に加算するよう諮問する予定だ。


◆コメント:当然だと思いますよ。

産婦人科医が減っているのは、死ぬほど働いて、勤務医の給料は安く、真面目に任務を遂行しても、

問題があるとすぐに刑事被告人にされてしまうからである。私の親戚にも産婦人科の勤務医がいる。

全くあんなキツイ仕事があるだろうか。何日も泊まり込みで働いて、やっと自宅に戻り一風呂浴びて、

さあ、メシだ、というその瞬間、病院から電話がかかり、担当患者の容態が急変したという。

結局、彼の母親が用意していた御馳走を一口も食べず、病院に戻っていった。

そしてそれから、何日も戻ることがなかった。また徹夜が続いたらしい。

だが、医師はこれが仕事だから、当たり前なのだ、と自らに言い聞かせてやりきれなさを我慢している。

これほどのことをして、大学病院の勤務医なら時給にすれば1000円にもならない、という。

殆どの分娩は見事にこなしているし、出血が激しいとか、新生児が呼吸をしないとかの非常事態も

切り抜けている。それなのに、たった一回失敗したら、罪人、人間の屑、のように患者やその家族に

言われるのだ。

これでは、産科医のなり手が減るのは当たり前だ。

人に、大変な仕事をさせておいて、カネを払わないのは、一番いけないことだ。

資本主義社会である。高度な技術を身につけた者は、それなりの対価を得て当然なのだ。



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コメント

えあしゃ様、ご丁寧なお返事、有難うございます。

>サウンドボードははずしていないはずなので(たぶん)、ヘッドフォン買ってみようと思います。


サウンドボードを外すということは、相当面倒くさい作業(少なくとも、手先が不器用な私にとっては)ですから、まず、間違いなくそのままPC内にあって、機能するはずですので、ご紹介した、ヘッド本をやはりお薦めします。見た目は昔の感覚でいうと「イヤホーン」のようですが、耳にしっかりフィットする(外れない、密閉度が高い)ように設計されているので、昔ながらのヘッドフォンのような鬱陶しさもなく、かなりいい音が堪能できると思います。

当ブログに載せた音楽もかなりの数になりますので、楽しんでいただけたら幸いです。

投稿: JIRO | 2007.09.15 12:28

JIRO様
意図をくんでいただき、ありがとうございます。人道支援を行っていたイラクの人質に対する嫌がらせでは、自分も日本人であることが恥ずかしくなりました。

サウンドオフの件もありがとうございます。WINDOWSのコントロールパネルではなく、サウンドボードの方のソフトでサウンドオフに設定していたかもしれません。

ヘッドフォン、そうですね! サウンドボードははずしていないはずなので(たぶん)、ヘッドフォン買ってみようと思います。

投稿: えあしゃ | 2007.09.13 22:11

えあしゃ様、レスが遅くなりまして、失礼しました。

えあしゃ様のご趣旨、良く分かりました。患者の責任を追及し始めると、確かに日本人は嘆かわしいことに、近年弱い者を叩く事が多くなりましたから、危険だと言うことですね。そうですね。イラクで3人の日本人が人質に取られて、幸い解放され、帰国してからの嫌がらせがもの凄かったことを思い出します。

ところで、

>私、PCにぴーぴーお説教されるのがいやで、スピーカーを人にあげてしまいました


パソコンはWindowsですか?もしそうなら、

それはですね。コントロールパネル→「サウンド設定を変更する」をクリック。

「サウンドとオーディオデバイス」の「サウンド」タブを選んで(クリックして)、「サウンド設定」で「サウンドなし」に設定すればよいのです。

そうすれば、作業中の「ピッ」という音はしなくなります。

スピーカーがなくても、ヘッドフォン端子(差し込むところ)があるでしょう?

こんなの↓でも結構いい音がします。

http://www.audio-technica.co.jp/products/hp/ath-ck31.html

投稿: JIRO | 2007.09.13 02:29

JIRO様
本当にたびたび申し訳ございません。もちろんJIROさんが弱者切り捨ての立場ではないことはよくわかっておりますし、逆にJIROさんが弱者を守ろうとする立場にいらっしゃると思うからこそ、コメントを書いております。私の書き方が悪かったのだと思います。ご不快になったとしたら大変申し訳ありません。

そのうえできちんと対応していただけるJIROさんの寛容さに甘えて一言だけ言わせてくださいませ。

マスコミ批判であることはわかっております。JIROさんのおっしゃることにも基本的には賛成しております。
しかしJIROさんは、マスコミは医療や行政だけでなく、患者の責任についても取り上げるべきだとするご意見でいらっしゃいます。
私はマスコミは、患者の状態を書いてもかまわないがその責任については取り上げるべきではないという意見です。理由は
①行政に向くべき社会の批判がぶれてしまうから。
②近年のバッシング傾向を見ると、簡単に社会が患者をバッシングしはじめると思うから、です。

JIROさんの考えを変えてほしいということではなく、そういう視点もある、ということを知っていただきたいと思ってコメントさせていただきました。ここまで丁寧にお返事いただけたことを伏して御礼申し上げます。

今後も、鋭い舌鋒と美しい音楽の紹介を楽しみにしております。←というか、私、PCにぴーぴーお説教されるのがいやで、スピーカーを人にあげてしまいました。YouTubeなんてものが出てくることを知っていれば、、、残念です。でも、文章だけでも十分に楽しめます。

投稿: えあしゃ | 2007.09.10 12:20

えあしゃ様、度々ありがとうございます。

どうも、私の云わんとするところがよく伝わらないようです。

それを一番感ずるのは、

>メディアや社会が“治療が必要な患者が治療を受けられなかったのは、自己管理をきち
>んとしなかったがための自己責任である”という論調になれば、それは弱者を切り捨て
>ることにつながらないでしょうか?

えあしゃさんは、私がそう考えているのではないことを理解して下さっている、ようですが、

“治療が必要な患者が治療を受けられなかったのは、自己管理をきちんとしなかったがための自己責任である”という論調にならないでしょうか?

が、気になります。

私は「弱者切り捨て政権」であった、小泉政権をずっと批判してきた者です(過去ログを読んでいただくしか有りません)から、

「私が」、そのような思想の持ち主だと思われるとしたら、非常に心外です。

要点をもう一度まとめます。

一般論として、

・奈良の妊婦のように、医療を必要とする患者が救急車でたらい回しにされる、というようなケースに関して、まず、一律に医師・病院側が悪いと断定するのは早計である。

・患者の側に、自己管理が出来ていなかったことが原因である場合も存在する。

・病院側の怠慢であった場合も存在する。

・たらい回しは何十年もまえから社会問題となっているのに、無策である行政府の責任も問われるべきだ。

「たらい回し」に関しては、このように、医療側、患者側、医療行政、それぞれの観点から原因を特定することが肝要である。

ところが、マスコミは、何でも医療側の責任「だけ」を誇大に強調する。それは、報道のあり方としては誤っている、ということです。

本稿の主題は「マスコミ批判」である、ということに注目していただきたいのです。

投稿: JIRO | 2007.09.09 23:11

JIRO様
まず、長文を読んでいただき、これほどきちんとお返事くださったことに御礼申し上げます。

医師を責める風潮には私も反対です。現実に医師不足の地域に住む者として、医師の勤務状態の過酷さは実感していますし、医師の友人から話も聞いています。

そういう状況に義憤するJIROさんが患者側にも責任があるケースがある、とおっしゃるのはわかります。たしかにあるでしょう。しかし、私の言いたいのは、患者側に責任があろうがなかろうが、医療は患者を治療するという前提になければならないということです。そして、多くの医師や病院はその前提でどんな患者も基本的には平等に治療を行っているのではないかと思います。

こういう立場で医療を行っている医療従事者や病院が、治療を行ったうえで患者の責任について問うのは当然といえるかもしれません。しかし、メディアや社会が“治療が必要な患者が治療を受けられなかったのは、自己管理をきちんとしなかったがための自己責任である”という論調になれば、それは弱者を切り捨てることにつながらないでしょうか? 

極論すればホームレスの具合が悪かろうとそれは見捨ててかまわない、という主張を始める誰か(JIROさんではありません。このブログを読んでいる誰かです)がいそうな恐怖感を感じるのです。

患者側のモラルが問われないということではありません。救急車をタクシー代わりにしたり、たいして重い症状でもないのに夜間救急に行ったり、ということは社会やメディアが問うべき問題でしょう。

しかし、この件に関しては患者は現実に救急を必要としていた。ですから、メディアは患者でも医療従事者でもなく、行政にもっと視点を当ててほしいと思っています。少子化が進んでいるにもかかわらず、なぜ産科医が足りないのか、なぜ産科医がこれほどいちじるしく減少したのか、ということです。医師の友人は医師不足の背景のひとつには医局の廃止があると指摘しています。

ここまで、言いたいことがきちんとまとまっているかどうかちょっと自信がありませんが、最後にたらいまわしについて。私は専門家ではないので、的確な答ではないであろうことを承知で少し書かせていただきます。

①病院の医療従事者の勤務環境をもう少しよくすること、医師や看護士を増やし、長時間勤務態勢を見直せるようにすることが必要だと思います。病院の民営化にも問題がありそうです。

②産科のみに関してですが、産科救急に関してはかかりつけ医がいない場合、救急救命士の報告を産科医が聞けるようなシステムを作ることが必要ではないか、とニュースでどなたかが指摘していました。今回のたらいまわしに関しても、状況がわかっていれば受け入れられたという病院があったようです。とはいえ、報告を聞く産科医をどのように決めるかという問題もあります。

③訴訟に関して。医療訴訟にかかわる法律家はもう少し医療を勉強すべきでしょう。福島の産科医が帝王切開の際、妊婦が出血死した事故で逮捕されましたが、これも検察が医療についてもう少し勉強していれば逮捕などなかったと考えられるそうです。

名案などというものではなく、申し訳ありません。。。

投稿: えあしゃ | 2007.09.09 21:09

えあしゃ様、はじめまして。当ブログのJIROでございます。

拙文を御愛読頂いているとのこと、誠にありがとうございます。

本件に関してのご高見を拝読いたしました。

まず、「患者の責任を問うのはどんなものか?」ということですが、私は、常に患者に責任があると言うことを意味しているのではありません。

但し、お分かり頂いているようですが、「どんな場合にも患者に責任はない」とは考えておりません。

>かかりつけ医が近くにいない状況などいくらでもあり得ます。妊娠3~4カ月でまだ病院にいっていなかった、月経周期がもともと不安定で5カ月すぎても妊娠に気づかなかった、
>出張、旅行などでかかりつ病院が近くになかった、あるいは産科医が連絡をとれる状態にない事態だってあり得るでしょう。

これは、仰るとおりですね。しかし、奈良の妊婦がこれに該当するかどうかわかりません。


私は、患者の責任が問われる場合もある、と思います(数年前大流行した「自己責任」という概念を日本人は忘れてしまったのでしょうか。)。

しかしながら、マスコミは、その可能性を全く説明せずに、受入を拒んだ病院・医師「だけ」をバッシングしていました。これが不公平だ、というのが私の言わんとするところです。

産婦人科に限らず、患者がきちんと自己管理していれば、救急車を呼ぶような緊急事態に陥らなくて済むケースもあるはずです。

そのような予備知識、情報を与えないと、大衆は、ステータスが高く、高所得(という勘違いが横行していますが)を得ている職業の象徴である、「医師」が叩かれるのを喜ぶ。マスコミはそれを承知で書いているのです。私はその汚さが気にくわない。これが、本エントリーで尤も強調したいことです。

◆もう一度書きます。本稿(本文)の要旨

・奈良・札幌で妊婦がたらい回しになった事件を、マスコミは専ら、「医療側の問題」として書いた。

・しかし、救急車で運ばれるような緊急事態に陥った原因が、患者の自己管理の杜撰さに起因する場合もある。

・両方の観点から問題の有無を検証しなければ、報道として不公平である。

◆「かかりつけ医」がいないと「たらい回し」される、のかどうか。

救急車のたらい回しは、ずっと前から社会問題になっています。かかりつけ医の有無が問題にならないようなケースもありました。

東京で20年以上も前(1985年)、ある大学生が、偶々遭遇した、逃げる泥棒(か「ひったくり」の類)を捕まえようと追いかけたら、犯人に刃物で刺されました。

誰かが救急車を呼びましたが、「たらいまわし」に遭い、大学生は死亡しました。田舎ではありません。東京のど真ん中です。

この事例は事故(犯罪の被害者)ですから、「かかりつけ医」もへったくれもないのは、言うまでもありません。と、いうことは、かかりつけ医云々に関わらず「たらい回し」は改善されていないと言うことです。

これほど、理不尽なことが改善されない原因を解明しないと、救命救急システムの問題なのか、何とも言えません。救命救急医でブログを書いている方も沢山おられます。これが一番ホンネが分かると思います。

奈良の妊婦に関して最初に連絡を受けた奈良県立医大病院は、当直医の勤務状態を克明に公表していますが、こういう例ばかりとは限りません。

件の妊婦に同行していた男性はカタギではない「怖い人」だったそうで、救急隊員は相当に怖い思いをしたとおもいます。

皆が皆では無いでしょうが、えてして夜中の急患は何らかの「ワケアリ」が多く、最近はなにかというと訴訟に巻き込まれます。「こんなことならば、救急車を断れば良かった」という経験則が医療側に出来ている可能性もあります。

要するに「面倒くさいから」受け入れないケースがあるだろうということです。ですが、これについても、私は一概に医師を責められません。


本文中、【追加】で書いた、私の親戚の産婦人科医の勤務状態をお読み下さい。2日も3日も徹夜して、やっと寝たと思って、救急車で叩き起こされたら、極度の過労からミスをする可能性が高い。ミスをすると、すぐに訴えられる。ならば、断ろう、という心理になったとしてもさほど不思議はない。

これを「人の生命を救うのは医師の使命だろう」と批判するのは、現場を知らない(勿論私も知りませんが)外部の人間の云うことです。「言うは易く行うは難し」。医者といえども、医師になろうと決めたときの志は高かったでしょうが、特別な人間ではありませんから、誠意を尽くしても罵倒されれば、やる気をなくします。

では、どうすればよいかというと、非常に単純に思いつくのは、

「救急車の受入を断った病院・医師には、個別の事情を配慮せず、一律にペナルティを加える」

というものですが、そんなことをしたら余計に産科医・外科医・小児科医・内科医が減って、医学生は皆、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、(美容)形成外科ばかりが乱立するだろうと想像されます。

えあしゃさんは、「たらい回しにされるシステムに問題があるのでは」とのご意見で、それは、上述のとおり確かですが、これを改善するために医療行政は如何なる措置を講ずるべきか、名案をお持ちですか。

投稿: JIRO | 2007.09.09 13:36

JIROさま はじめまして。いつも拝見し、その見識の深さに感心しております。
今回の妊婦たらいまわしに関しても、病院や医師を責めるのはまったく筋違いですね。
とはいえ、患者に責任を問うのも納得できないのです
(医師側がもう少し自分の体と子供に責任をもて、と主張するのは理解できます)。
もちろん救急車をタクシー代わりにするなど言語同断ですが、たらいまわしにされた妊婦たちは救急車をタクシー代わりにしていたわけではありません。

かかりつけ医が近くにいない状況などいくらでもあり得ます。妊娠3~4カ月でまだ病院にいっていなかった、月経周期がもともと不安定で5カ月すぎても妊娠に気づかなかった、
出張、旅行などでかかりつ病院が近くになかった、あるいは産科医が連絡をとれる状態にない事態だってあり得るでしょう。

私自身、妊娠中に引っ越したので6カ月のときにはかかりつけ医はいませんでした。今回の事件の彼女はやむを得ない事情ではなかったかもしれない。
しかし、医師にかからなかった責任を社会(医師ではなく)が問うことは、たとえば2型糖尿病で血糖値を管理せずに具合が悪くなり、救急車で運ばれた人に対して、社会がバッシングするような気分の悪さを感じます。

JIROさんが単純に患者を責めているわけではないことはわかりますが、妊婦の事情がどうあろうと、この問題に関していえば“かかりつけ医がいなければ”たらいまわしにされる、というシステムに視点を向けた方が建設的ではないかと思うのです。いかがでしょうか?
(長文申し訳ありません)

投稿: えあしゃ | 2007.09.09 11:10

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