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2007.11.29

「『リタリンの使用継続を』=患者ら厚労省に要望」←ひどい医療行政なのですよ。

◆記事:「リタリンの使用継続を」=患者ら厚労省に要望(11月22日22時30分配信 時事通信)

乱用問題で使用の制限が決まった向精神薬「リタリン」について、注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの患者会が22日、

厚生労働省を訪れ、リタリン治療の継続や、同様の効能を持つ薬剤の早期承認を要望した。

リタリンは依存性があるため若者を中心に乱用が問題となり、うつ病の効能が取り消され、

麻薬並みに流通を管理することが決定。効能は睡眠障害の一種のナルコレプシーだけとなる。

ADHD治療薬としても適応外で使われているが、使用が困難になることが予想される。

会見した患者会代表の黒岩秀行さんは「ほとんどの患者は戸惑っている」と話し、

ADHDの効能追加や、効能外でも継続して使用できるよう求めた。


◆コメント:問題の所在。

記事で取りあげたリタリンに関しては、半ばマスコミ批判という論点になるが、2ヶ月ほど前に、

毎日新聞「リタリン報道」の恣意性。リタリン乱用入院者、15例(06年)アルコール依存症は、入院外来合計1万7千人(02年)

(ココログではこちら)で取りあげた。

これを書いた約1ヶ月後、10月17日、薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会が開催され、

1958年に認可されて以来、半世紀使われてきた中枢神経賦活薬、リタリン(=商品名。一般名:塩酸メチルフェニデート)の効能から、

「遷延性・難治性うつ病」を除外することが決められた。決められた、といっても審議会自体は国家権力ではないから、

そういう意見を厚労省に提出したのである。

ちなみに、あらゆる役所に何とか審議会とか同類の部会があり、外部「有識者」で構成されている。

この辺もヤクニンのずるいところである。

何か問題になったときに、

「自分たちが言っているのではありません。外部の有識者の意見を尊重したのです。」

という逃げ道を作っているのである。

厚労省職員には医師国家試験を通った「医者」が「医系技官」として採用されているのだから、自分で判断すればよいのである。


◆審議会から9日でリタリンは一切処方されなくなった。普段、「向精神薬の服用を急に止めてはいけない」と言っていた精神科医達は逆らわなかった。

10月17日の薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会の決定からわずか9日後、10月26日厚労省から通達が出た。

塩酸メチルフェニデート製剤の使用にあたっての留意事項等についてである。

いちいち、PDFファイルの添付文書にせず、そのページに表記すれば良いと思うのであるが、

添付ファイルにはっきりと次のように書かれている。

リタリンの効能効果は、今回の承認事項一部変更承認によって、「ナルコレプシー」のみとなること。また、コンサータの効能効果は「小児期における注意欠陥/多動性障害(ADHD)」であること。

これが何を意味するか。

この「通達」が出される前日まで、リタリンの効能効果は「ナルコレプシー及び、遷延性・難治性うつ病」だったのである。

そして大人の注意欠陥障害、多動症の患者も適応薬は存在せず、彼らに対しても、

リタリンを「適応外処方」(名目は「うつ病」などとして処方されること)が黙認されていたのである。

それで、遷延性うつ病患者は抗うつ薬だけでは得られない、中枢神経賦活効果を得て働いていたし、

ADD、ADHD(注意欠陥障害、多動性障害)の患者も同様であった。

私が、9月21日の記事にも書いたとおり、この薬を乱用する患者よりも、

真面目に正しく服用する患者の方が多い(貴方の周りにリタリン中毒で精神病院に措置入院(強制的な入院)させられた人がひとりでも、いますか?)。

だから、50年も使われたのである。

それを十分承知しているくせに、厚労省は、10月26日、薬事審議会からたった9日で、正常な使用者に対する処方まで

一切禁じたのである。このような医療行政は明らかに誤りである。

この通達で、更に腹の立つのは、偽善的な但し書があることだ。

リタリンを服用しているうつ病患者等への対応について

とある。まあ、読んで下さいな。

リタリンは、抗うつ薬ではない。すなわち、セロトニン、ノルアドレナリン系に作用するのではなく、

ドーパミン作動薬である。うつ病に伴う日内変動や、どうにも、身体が重く動けない、というような場合、

精神科の教科書には、「患者には、休職・休学を勧め、十分な休養を取り治療に専念することを薦め」ろ、と書いてある。

休めるのならば、リタリンなんか、要らない。

家族を養うためには働かねばならぬ。

日本の社会はうつ病に対して、以前よりは多少理解が進んだかも知れないが、現実に休めるほど甘くない。

そういう状況で、一日のスターターとして、或いは抗うつ薬の副作用で眠くなったときの補助薬として、リタリンが有効なのだ。

そして、リタリンと同様の効果を持つ合法的な薬はない。代替薬はないのである。

厚労省のヤクニンは、それをしっていながら、適切な説明をしろ、で誤魔化している。汚い。


◆何年も飲んでいた薬をある日突然、打ち切られた患者が大勢いるのだ

うつに対しては、一ヶ月分のリタリンを処方する例が多い。最悪のケース(実際にあった)では、こうなる。

9月28日に4週間分のリタリンを処方され、規則正しく服用していた患者が、4週間後の10月26日、

薬が無くなったので、精神科の主治医を訪れたら、いきなり、「厚労省の通達が出たから、今日からリタリンは処方出来ない」

と、とりつく島もなく、言い放たれたのである。

向精神薬に限らず、長期に亘って服用していた薬の使用を中止するときには、いきなり止めてはいけない、というのが医者の決まり文句である。

向精神薬ならば、依存に陥っていなくとも、突如服用を停止すれば、離脱症状が出て、焦燥感・強度の不安感に襲われたり、極端な場合、

身体的なショック症状を呈することもある。だから、医者は患者に「いきなり薬を止めてはいけませんよ」といっていた。

にも関わらず、厚労省のお達しが出たら、患者の身体より、「お上」に睨まれるのを恐れた医者はいきなり処方を打ち切った。

患者を見捨てたといわれても仕方がない。


◆コンサータというADD・ADHDの為の薬の成分はリタリンと全く同じだが「小児限定」。大人のADD・ADHDの患者は薬が無くなった。

前段でも触れたが、日本では、以前からリタリンの正式な効能効果に「ADD・ADHD」は含まれていなかったが、この患者には「適応外処方」という

便宜的な方法でリタリンが処方されていた(リタリンが最も多く使われている米国では、この薬はADD・ADHDの薬なのである)。

それが、10月26日の通達で、

「リタリンの適応はナルコレプシー(急に眠ってしまう病気)のみ」

と限定された。小児のADD・ADHD患者に対しては、新しく、「コンサータ」という薬が承認されたが、

この薬の成分はリタリンと全く同じ「塩酸メチルフェニデート」なのである。

ところが、繰り返すが、小児用に限定、との「お達し」なので、大人のADD・ADHD患者には処方出来ない。

その結果、彼らが使える薬は、日本には存在しなくなってしまったのである。

冒頭の記事にあるとおり、患者らが厚労省に対して、リタリンの使用(承認)継続を要望したのは、

なにも、「ヤクが切れて、禁断症状に陥っているから」ではない。病気に対する治療薬を突如取りあげられたからである。

当然の成り行きである。

コンサータの販売元はヤンセン・ファーマという薬屋だ。きっと厚労省ヤクニンのたいせつな天下り先なのだろう。

この国は何事もヤクニンの天下り先を確保することを至上課題として運営されているのであろうか。

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コメント

Kenさん、お加減は如何ですか?大丈夫ですか?

ご覧のとおり、その後、またリタリン問題をとりあげていますが、かなりご覧頂いている様子。

毎日新聞からは2007年12月07日(金)22時38分現在、予想通り、何の返事もありません。

嫌がらせコメント・メールが、意外にも全然来ないです。

興味が無いのか、私の主旨にご賛同頂いているのか・・・と思ったのですが、

この記事には、エンピツの得票数がかなり多かったので、やはり、後者であろうと思います。

投稿: JIRO | 2007.12.07 22:44

この記事、どれくらいアクセスして頂けるか、興味があります。
主旨が非常に大切であるにもかかわらず、精神にもたらす薬の作用、というのには、未経験者には(つまり、風邪程度でしか投薬を受けたことがない、等)その深刻さに興味をもたれにくいのではないか、との危惧もありますから。
自分としても、自分を支えてくれたJIROさんを始めとするみなさんのために、そしてこれから困ることがあるはずの人たちのために、なにかいいアピールの方法がないかを真剣に考えたい。

お医者の現状についても、ですが、私は端から「カウンセリング」を売りにして予約で患者をいっぱいにして<臨機応変の対応をする>のを怠っている心療内科医を挙ゼツッするところから治療を始めましたので・・・一部のお仲間には訴え続けて、理解も頂いているのですけれど、これは少し、輪を広げないといけないかな、と思っております。

記事のおまとめ、苦慮されたと存じます。お疲れさまでした。
頭が下がります。

投稿: ken | 2007.11.29 06:02

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