「見張り、清徳丸を報告せず=「危険性ないと思った」-イージス艦衝突事故」←イージス艦「だけ」の責任にしたがる一面的思考
◆記事:見張り、清徳丸を報告せず=「危険性ないと思った」-イージス艦衝突事故 (2月22日19時32分配信 時事通信)
海上自衛隊のイージス艦「あたご」とマグロはえ縄漁船「清徳丸」の衝突事故で、あたごの見張り員が最初に清徳丸を視認した際、
責任者に報告せず、防衛省などの調べに「危険性はないと思った」という趣旨の話をしていることが22日、分かった。
あたごは衝突1分前まで、回避措置が困難な自動操舵(そうだ)で直進を続けており、見張り員がこの間、清徳丸を見逃していた疑いも浮上した。
防衛省によると、見張り員が最初に清徳丸の灯火を視認したのは、衝突12分前の19日午前3時55分ごろ。
艦橋の右ウイングから、左舷を示す「赤」と、マストを示す「白」の灯火が右前方に見えた。
調べに対し、見張り員は「(清徳丸は)あたごの右側から後ろに通り過ぎ、危険はないと思った」という趣旨の話をしており、
責任者の当直士官に報告しなかったという。
◆コメント:兎にも角にも「イージス艦が悪かった」ことにしたがる、一面的な思考
先日書いたとおり、事故の全容が明らかになっていない時点で、当事者一方の責任を強調するべきではない(ココログはこちら)。
どうも、メディアの論調を見ていると、上に転載した記事の記述にもあるとおり、イージス艦は、衝突12分前から、漁船・清徳丸の灯火を確認していた、とか、
多くの船が行き交う、比較的危険な海域で、自動操舵で直進を続けていた、とか、何が何でも、イージス艦「だけ」に責任があるかのようにかき立てている。
私もイージス艦に責任が無かった、とは断言できない。と同時に清徳丸に責任が無かった、とも断言できない。
即ち、私は素朴な疑問を抱いているのである。
大きな船から小さな船を見つけることより、小さな船が大きな船を見つける方が容易だろう。
イージス艦「あたご」が衝突12分前に、清徳丸の灯火を確認していたのなら、清徳丸は馬鹿でかいイージス艦を更にそれ以前から目視していたのではないか。
清徳丸の乗員が行方不明のままで、その点に関しては恐らく永久に当事者の話は聞けないだろうが、常識で考えれば分かる。
何しろ、船といっても、イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の大きさの違いは、比較にならないほどなのだ→ダウンロード Atago.jpg (26.3K)
イージス艦「あたご」の全長は、漁船「清徳丸」の13.75倍である。
素朴な疑問の続きだが、海上衝突予防法によれば、イージス艦に回避義務があった、とか、漁船が操業中の場合は、相手の船に回避義務がある、というのは、
法律を文字通り、馬鹿正直に読めばそのとおりだが、何故、清徳丸は、自船と比較にならないほどバカでかいフネの針路に近づいたのだろうか。ということだ。
いくら、法的には、相手船を右舷に見た船舶が避けなければいけないとはいっても、全長165メートルのフネが舵を切り、
又は、機関(エンジン)を後進全速(スクリューを逆にフル回転させて「ブレーキ」をかけること)させても、効果が出るまでには、時間がかかる。
清徳丸は全長12メートルの漁船だ。イージス艦に比べれば、遙かに簡単に針路を変えられるし、速力を落とせる。
にもかかわらず、直進するイージス艦の針路のど真ん中に突っ込んでいったことに、「常識で考えた場合」全く落ち度はないのか。
自分が舵を切って、一時的にさっさと反転(Uターン)するか、しばらく、停止したらいいではないか。
繰り返すが、法律を杓子定規に当てはめれば、イージス艦に回避義務があったでしょうよ。
だが、それは、理屈で、現場の様子を想像してみると、私が清徳丸だったら、さっさと、イージス艦などから遠ざかっていたと思う。
本能的にそうするのではないか。
事態を客観的に見れば、清徳丸の航行の不自然さにも目を向けるべきなのに、そちらには全く話題が向かず、
ただひたすら、「イージス艦が悪い」と書くマスコミと、そうだそうだ、とそれに簡単に乗る世論の思考は、
あまりにも一面的である。
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コメント
あつし様、おはようございます。いつも、コメントをありがとうございます。
あつし様にご同意頂けて、心強い限りです。
>いくら海上衝突予防法の規定があるとはいえ、大型艦が回頭したり減速したりしての回
>避行動は、廻りの船舶に対してかえって危険な気がします。まして今回の場合は廻りに
>他の漁船が何隻もいたのですから、大型艦は進路と速度を一定にして、漁船の方で回避
>するのが安全だと思うのですが。
やはり、常識的に考えて、そうですよね?
これが、矢鱈と騒がれる原因のひとつは、いうまでもなく当事者の一方が「自衛隊」だったからで、
仮に民間の大型船だったら、(それでも大型船が「悪者」にされるでしょうが)ここまで、マスコミはムキになるかな?
と思います。
「はじめに、自衛隊叩きありき」で報道が為されているように感ぜられます。
投稿: JIRO | 2008.02.23 11:51
おはようございます。
今日の記事を読んで、私も同じような思いを抱いておりました。いくら海上衝突予防法の規定があるとはいえ、大型艦が回頭したり減速したりしての回避行動は、廻りの船舶に対してかえって危険な気がします。まして今回の場合は廻りに他の漁船が何隻もいたのですから、大型艦は進路と速度を一定にして、漁船の方で回避するのが安全だと思うのですが。私もJIROさまが仰るように、そういった視点での報道はありませんし、偏った報道に公平性を欠いていると思います。
また、今の海上衝突予防法ではイージス艦に回避義務があったのでしょうが、法律そのものに問題はないのか、現在の多くの様々な船が航行する海で、本当に今の法律の規定で良いのかも考える必要があると思います。
投稿: あつし | 2008.02.23 09:08
てっちょ~さん、はじめまして。JIROです。ようこそおいで下さいました。
船舶免許をお持ちのお知り合いの方のお話は大変貴重です。ありがとうございます。
>免許取得のための講習の際に教官から、「法律はともかく、でかい船の前では小さい方が進路を譲るべきだ」と教わったそうです。
>大きい船からは視認されにくく、且つ万が一見落とされていた場合のリスクを考慮すると、小回りの利く小型船側が対処したほうが良いから、と説明を受けたそうです。
やはり、そうですか。常識的に考えても、そうなりますよね。漁船が沢山航行しているところをイージス艦がフラフラ針路を変更するのは、
物理的に困難でしょうし、仮にそれが可能だとしても、一体、どちらに向かっているのだ、と、周囲のフネの方が不安になるのではないか、
と思うのです。「法律はともかく、小さい方が進路を譲るべきだ」というのが、船乗りの感覚なのでしょう。
おっしゃるとおり、そういう意見が一切報道されず、本文にも書きまして、てっちょ~さんにもご同意いただいたとおり、
イージス艦「だけ」が悪い、という根拠ばかりを収拾してくる、マスコミの報道は偏向しており、公平性に欠けています。
行方不明の方々のご家族のご心痛は察するにあまりありますが、だからといって、不公平な報道が許される訳ではないと思います。
今一度、大変、参考になる、貴重な情報を与えて下さった事に御礼申し上げます。
また、よろしければ、お立ち寄り下さい。
ありがとうございました。
投稿: JIRO | 2008.02.23 02:17
はじめまして。
私も知り合いのふとした疑問を聞いてから、「本当にイージス艦だけが悪いのか」と気になっていました。
そんな折にこのブログを拝見させていただきました。
私が疑問に思ったこととまったく同じことを感じてらっしゃるので、非常に興味深く読ませていただきました。
ちなみに私の知り合いは船舶免許を持っています。
免許取得のための講習の際に教官から、「法律はともかく、でかい船の前では小さい方が進路を譲るべきだ」と教わったそうです。
大きい船からは視認されにくく、且つ万が一見落とされていた場合のリスクを考慮すると、小回りの利く小型船側が対処したほうが良いから、と説明を受けたそうです。
同じ千葉県のマリーナでそうした指導が行われている以上、不文律としてある程度普及しているのではないかと思います。
そういった発言が一切報道されないのは、非常に不可解です。
何より行方不明者の生還を信じたいですが、そのためにも、誤った報道で真の原因や大きな手がかりなどが闇に隠されてしまわないことを願いたいです。
長文失礼しました。
投稿: てっちょ~ | 2008.02.23 01:12