どうして今までお薦めするのを忘れていたのでしょう。「フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル ルネサンス名演集」
◆私の世代でラッパを吹いた(当時の)少年少女は皆憧れた、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル
金管楽器だけの合奏。但し、あまり大人数ではない、「金管による室内楽」、これをブラス・アンサンブルといいますが、
今では、プロ・アマチュア合わせたら世界中に無数に存在します。
昨年、私は、ジャーマン・ブラスというドイツのブラス・アンサンブルを何度も紹介しました。彼らも偉大です。
しかし、この世にブラス・アンサンブルという演奏形態を「芸術」として定着させたのは、
英国のフィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル、という団体です。
このアンサンブルの創始者で1928(昭和3)年英国、バースに生まれたトランペット奏者、フィリップ・ジョーンズ氏の名前をそのまま取った
団体名ですね。フィリップ・ジョーンズ氏は、既に故人です。フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル(以下、PJBE)のメンバーの多くも他界しました。
しかし、金管楽器の歴史、金管楽器演奏の歴史を語る時にこのアンサンブルを無視することは絶対に不可能です。
彼らがいたからこそ、今のブラス・アンサンブルの隆盛があるのです。フィリップ・ジョーンズ先生も、PJBEも、
私の年代でラッパを吹いた人間にとっては、神様のような存在です。
実は、PJBEを載せるのは初めてではないのですが、一番有名なのを何故か紹介していませんでした。
◆1974年、PJBEが初来日したときに演奏して、日本中のブラス少年・少女が真似をした「スザート舞曲集」です。
PJBEは、それまで、誰も見向きもし無かったような、バロック以前の音楽を発掘してきて、金管アンサンブル用に編曲し、
再びそれらの音楽に生命を吹き込みました。
これからお聴き頂くのは、ティールマン・スザート(Tielman Susato)(1500年頃~1561))という、
ルネサンス期のフランスの作曲家が書いた「舞曲集」です。
この「スザート舞曲集」は、PJBEの400曲を超えるレパートリーの中でも、最も人気がある、
PJBEのテーマ曲とでも言うべき音楽です。
ルネサンス期というのはどういうことか、というと、バッハが音楽の父とか呼ばれていますが、彼の生涯は(1685年~1750年です)。
バッハの生まれる200年も前に、こんな楽しい音楽があったのです。
ウンチクが長くなりました。これ、絶対お薦めです。ルネサンス名演集に収録されている、
「スザート舞曲集」から5曲載せます。どれも短い曲です。
1曲目「モレスカ」(モール人の踊り)パーカッション(打楽器)も加わって賑やかですが、バランスを考えて吹いているからうるさくないのです。
金管楽器の音が綺麗に融け合っていますね。
2曲目 音の動きは少し細かいけど静かな音楽、「4つのブランル」
ラッパと言えども、全然うるさくないでしょ?
3曲目、ロンド。楽しいけど荘厳さを感じます。
4曲目。バス・ダンス「羊飼い」。
5曲目。最期は 「戦い」。
これねえ。当時、私たち、中学生ぐらいでしたが、みんな何とか真似しようとしたものです。
あまりの懐かしさに涙が出ます。
◆フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルに見た「プロのプロたる所以」
以前、「プロのプロたる所以」(ココログはこちら)という文章を書きました。そこでは、同時通訳の村松増美さんについて綴りましたが、
私は、実はもっとずっと早く、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルの方々にそれを見せて頂きました。
何度目かの来日の時。当時TBSで毎週日曜日に放送された、山本直純さんの「オーケストラがやってきた」という番組がありました。
その番組の地方収録の時(確か、広島だったように記憶していますが、あまり自信がありません)、PJBEが出演して下さいました。
企画のひとつとして、地元の中学だか、高校のブラスバンド部員が、お聴き頂いた、「スザート舞曲集」の最後の曲「戦い」を、
なんと、本物のPJBEの前で演奏して、聴いて貰うという場面がありました。
そのころ、PJBEは日本で大流行でしたから、スザート舞曲集の楽譜も簡単に手に入ったんです。
中学生(だか高校生)はオーディションしたんでしょうね。割と上手かったです。
しかし、私が感動したのは、悪いけどその子供達の演奏そのものではなく、
それを聴いている、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルの皆さんの真摯な態度でした。
プロがアマチュアよりも上手いのは当たり前。プロがアマチュアの演奏を聴いてニヤニヤしたり、尊大な態度で聴くのは失礼に当たります。
フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルの面々は、遠い日本の中学生が自分たちの曲を一生懸命に練習して吹いてくれたことが嬉しかった、
ということもあると思います。
でも、それ以前に、とにかく中学生の演奏の最中、PJBEのメンバーは、本当に真剣に演奏を聴いておられました。
ニヤニヤしたり、ニコニコしたりなんてとんでもない。私語を交わす人もただの一人もいなかった。
プロたるもの、如何にあるべきか。本当に分かっておられたんです。
私も、子供心に、「これが本当のプロの態度というものだ」と深く得心しました。
今でも、あの時の、PJBEの皆さんの真剣な表情を思い出し、目頭が熱くなることがあります。
本当に一流のプロとは、分野を問わず、真摯で謙虚なものなのですね。
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コメント
Kenさん、こんにちは。
PJBEはNべさんもCDを買うんだ、と仰っていましたが、金管を吹いていた者だけではなく、
その他の人々にも愛されているのですねえ。
言い方を変えれば、「金管楽器の表現力の多様性」を天下に知らしめた、という功績ですよね。これは大きい。
とか、なんとか理屈抜きで「なつかしい」でしょ?
>この音に取り付かれていたジュニアオケ仲間のトランペット吹きがいて、是非やりたいというので、
>演奏会のプログラムに金管の連中だけでのスザートを取り入れたんですよ。・・・
やっぱりね。PJBEの初来日は1974年ですが、当時、日本中で同じようなことが行われていたと思います(笑)。
>オケやってて、自分たちの演奏会を客席で聴けたのはあのときだけだった。。。(遠い目)
あ、なるほどね。プロオケなら、降り番とか曲降りで、自分のオケの演奏を聴くことができるけれど、アマチュアだとそうか・・・。
「プロたる所以」、漫才でも共通、というのは面白いですね。
ただ、PJBEは、中学生の演奏がホンマモンと思っていたかどうかわかりません。
それ以前の、プロとしての姿勢。プロのアマチュアに対する礼儀、のようなものを、私は強く感じました。
>それにしても、このテンポ感と重量感、しばらく聴いていなかっただけに、涙チョチョ切れです!
ホントですね。テンポ感と重量感。ジャーマン・ブラスのような超絶技巧は入りませんけど、この
「これぞ、金管。」という重量感のある響き。 不滅ですね。
投稿: JIRO | 2008.06.29 15:25
やっと隙間を見つけて、聴きました。
なつかしい、この響き!
この音に取り付かれていたジュニアオケ仲間のトランペット吹きがいて、是非やりたいというので、演奏会のプログラムに金管の連中だけでのスザートを取り入れたんですよ。・・・オケやってて、自分たちの演奏会を客席で聴けたのはあのときだけだった。。。(遠い目)
PJBEの人たちが中高生の演奏を真摯な目で見ていた、という映像は、残念ながら見たことがないのですが、とても分かる気がします。喩えとして持ち出すと叱られるか知れませんけれど、M-1で若手が漫才をやっているのを、審査員(島田紳介なんかも。それから洋七氏もだな)が笑わないで真剣に見ている。紳助氏が言っていたことがありました。
「こいつホンマモンの芸しとるな、と思たら笑うてなんか見られへん。わしは、いい芸には笑わん」
・・・何事に限らず、芸を知る人は芸をきちんと見つめる目があるから、それがたとえ「お笑い」でも共通するんだなあ、ということを改めて実感したひとことでした。
それにしても、このテンポ感と重量感、しばらく聴いていなかっただけに、涙チョチョ切れです!
ありがとうございました!
投稿: ken | 2008.06.29 11:21