「<貿易統計>輸出減で景気後退リスク一段と」←既に景気後退していると思います。
◆記事:6月の輸出額55カ月ぶり前年割れ 貿易統計、1―6月もマイナス(日経 2008年7月24日)
財務省が24日発表した6月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額は前年同月比1.7%減となり、
2003年11月以来、55カ月ぶりに前年割れとなった。貿易黒字も4カ月連続で縮小。
自動車輸出の落ち込みで欧米向け輸出額が減ったほか、アジア向け輸出の伸びも小幅にとどまった。
08年上半期(1―6月)の貿易黒字も4期ぶりに減少に転じた。
景気回復のけん引役となってきた輸出も、世界経済の減速に伴い節目をむかえつつある。
前年割れが今後も続けば、踊り場にある日本経済はさらに厳しい局面を迎える。
6月の輸出額を大きく押し下げたのは米国向けで、前年同月に比べ15.4%減少した。
金属加工機械は伸びたが、自動車や関連部品の輸出が落ち込んだ
米国向け貿易黒字は4444億円と、01年5月以来の低水準となった。
◆コメント:八方ふさがりです。
毎月、財務省が貿易統計というのを発表します。日本が外国にどれぐらい財・サービスを売って(輸出して)、買った(輸入した)か。
昔、学校の社会科で習ったとおり、もしも、日本に油田があって、どんどん原油が湧いてきて、
これを海外に売れるなら、我々こんなに働かなくても言い訳ですね。ドバイのお金持ちみたいに悠々自適です。
ところが、日本には何もないので(竹島のあたりは天然ガスが取れそうだというので韓国と揉めてるのですが)、
外国からモノの材料を買って、燃料も買って、それを自動車などに加工して製品として外国に売って、経済的に豊かになったのです。
だから、外国でものが売れないと、国内でも個人消費はずっと低迷していますから(今、クルマ買い替えようという人あんまりいないでしょ?)
困るのです。
アメリカはサブプライム問題も影響しているし、インフレを気にして金融引き締め気味にしていたので景気が悪いのです。
アメリカ経済が低迷しても、今までなら欧州諸国やアジア市場で何とかしのいできました。
しかしながら、困ったことに今はそのいずれも、同様に、景気が悪いのです。
これは、非常に大雑把に言うと、原油高が原因です。原油が高くなると何処の国の企業もコストがかさみます。
また、各国の通貨当局はインフレを警戒して金融引き締め気味にします。企業は、銀行からお金を借りにくくなります。
するとコストを抑えるため、企業は従業員の給料をあげません。だから、外国の人も日本の製品をどんどん買う訳にはいかないのです。
つまり、各国とも全体として、当然の帰結として、経済活動が縮小するのです。
先ほど書き忘れましたが、日本の景気が悪いのも、原油・原材料費の高騰が原因です。何処も同じなのです。
ここ数日、原油価格が下がってきましたが、それがずっと続いたとしても、各国の景気回復に繋がるまでには、
タイムラグがあります。
世界の他の国にとっても、経済大国日本の景気が悪くなると、日本にモノを輸出しても売れませんから困るのです。
今日付のファイナンシャルタイムズ(電子版)はトップ記事で、
Japan’s exports fall for first time in five years(日本の輸出、過去五年間で初めて減少)
と大きく書いています。海外が日本経済によせる関心を端的に表しています。
巨額の資金を持ち、原油で投機をして儲けようという、ファンドという得体の知れない、
世界のごく一部の人々の為に、世界中の一般人が不況に苦境に追い込まれる、という現状が
根本的に間違っていると思います。
◆【追加】7月25日:こんな記事がありました。米CFTC、原油先物など価格操作の疑いでファンドを提訴
◆記事:米CFTC、原油先物など価格操作の疑いでファンドを提訴(7月25日7時46分配信 ロイター)
[ワシントン 24日 ロイター] 米商品先物取引委員会(CFTC)は24日、
ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物などの価格操作を行った疑いで、
オランダのファンドとそのシカゴ部門を提訴した。
提訴されたのは、グローバルファンドのオプティバー・ホールディングで、ファンドの最高経営責任者(CEO)、
トレーディング部門責任者を含む社員3人が、2007年3月に原油・ガソリン・ヒーティングオイル先物取引で価格操作を行い、
約100万ドルの利益を得た疑いが持たれている。
米上院は25日、エネルギー市場投機抑制法案の採決を控えているが、
CFTCの執行ディレクター、スティーブン・オービー氏は、今回の訴訟が、
法案の採決に影響を与えるためタイミングを計って発表されたのではないとし、
「これは政治的動機に基づいたケースではない」と語った。
オプティバー・ホールディングのシカゴ事務所からこの訴訟に関するコメントは今のところ得られていない。
CFTCのウォルター・ラッケン会長は
「疑惑の商品取引が行われたのは2007年3月の数日間のみだが、CFTCは、短期的な価格操作であっても容認しない」と語った。
CFTCは昨年12月、不法な商品取引をめぐり全国的な捜査を開始した。
オービー氏は、提訴された3人が有罪となった場合、多額の罰金が科せられることになると述べたが、
刑事責任が問われるかについてはコメントしなかった。
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コメント
あつし様、いつも、コメントをありがとうございます。
同感です。Jパワーのお話で思い出しましたが、郵政民営化も実現してしまいましたが、他国では皆失敗しています。
ニュージーランドでは、民営化した郵便会社が(多分米系の)ファンドに買収されてしまい、結局、国営郵便事業を作り直しました。
Jパワーもおっしゃるとおりで、公共性をよく考えないで買収防衛策を講じないで民営化したことに原因があります。
原油は他のコモディティ取引とは異なりますからね。エネルギーですから、
無闇に価格が投機によって高騰すれば今のようなことになるわけで、ファンドと産油国だけがほくそ笑んでいます(ボーイングとエアバスの件も、
甚だ不愉快です)。
これは市場に国家権力が介入(為替なんかしょっちゅうやっているわけですから、)しない方が不自然と言っても良いかも知れません。
投稿: JIRO | 2008.07.27 12:46
おはようございます。エネルギーとか食料とか、こういう生活の根本に関わる問題は国家権力が介入しても構わないのではないでしょうか。
ちょっと例えが違うかも知れませんが、ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンドがJパワー株を買い増そうとした時、日本政府は、Jパワーは公共性の高い企業ということで、株買い増しを規制しました。これはJパワーを民営化し、何の買収防衛策も講じずに株式上場させたことに根本的問題が有るような気がします。原油なども同じことで、なんの対策も講じないので投機の対象となっているのが現状ですから、やはり何らかの規制が必要なのではと思います。
余談ですが、ファーンボロ航空ショーでボーイングとエアバスの2大メーカーが大量受注をしたそうです。が、これらの注文はほとんどが中東産油国の会社で、反対に、燃料高騰のあおりを食っているアメリカやヨーロッパの会社からの注文は少なかったそうです。原油高騰の被害者としてはあまり面白くないですね。
投稿: あつし | 2008.07.25 10:07