【差替】80年前の今日(11月22日)、ラベルの「ボレロ」が初演されました(「楽器編成」を追加しました)。
◆今年も恒例、「ボレロ記念日」です。
昨日、「反復は力なり」という文章を書きましたが、今日のことを意識していたわけではありません。
偶然ですが、このフランスの天才作曲家、モーリス・ラベルが作曲した、「ボレロ」もこの、日記・ブログで、
過去何度取りあげたか分かりません。以前にも書いて、再び今日も手前味噌ですが、グーグルで、「ラベル ボレロ」、又は、
「ボレロ トロンボーン」を検索してみて下さい。私の日記かブログが最初に現れると思います(少なくとも2008年11月22日現在では)。
◆今年はちょっと特別な日です。初演されたのが、1928(昭和3)年11月22日で、今日からちょうど80年前なのです。
別に初演から79年目でも81年目でも「ボレロ」が名曲であることに変わりは無いので、どうでも良いとも言えますが、
そう言ってしまっては実も蓋も無い。ちょっと感慨深いです。
だからといって特別な事をするわけではないのですが、今年はボレロのオーケストラ・スコアを買ったので、
サワリのところの楽譜を見ていつもより沢山ご覧頂けます。別に楽譜が読めなくても、何となく面白いのではないかと思います。
しかし、面倒くさい、という方は無理にご覧になる必要は全くありません。
但し、ラベルのスコアでは楽器名が全てイタリア語で書かれているので、それだけ説明しておきます。
楽器編成も分かりますから。
◆ボレロの楽器編成(ラベルの書いたスコア通りにイタリア語で書き、その後、日本語で書きます)。
オーケストラ・スコアは、原則として、上から、木管群、金管群、打楽器群、ハープ(ある場合は)、弦楽器群の順で書きます。
ボレロでは、更に特殊なチェレスタという楽器を使っていて、これは、ハープと弦楽器の間に書かれています。
そして、原則として、それぞれの楽器群で音域の高いものから低いものへ上から下に並べます。
これは、ラベルに限ったことではありません。それでは、早速。
【木管】
Flauto piccolo 1(ピッコロ)
Flauto 1,2 (フルート 1,2とは二人、一番奏者と二番奏者がいる、ということ。以下同様。)
2番奏者、ピッコロ2番と持ち替えあり。
Oboe 1,2 (オーボエ)
2番奏者、Oboe d'amore 1(オーボエ・ダモーレ。オーボエより1音半 短三度低い イ調の楽器)と持ち替えあり。
Corno inglese 1(コールアングレ。イングリッシュホルンとも言う。オーボエ族でオーボエより完全5度低い、へ調の楽器)
Clarinetto piccoro 1(日本では Es(エス)クラリネットという。普通のクラリネットより完全4度高い)
Clarinetto 1,2 (クラリネット)
Clarinetto basso (バス・クラリネット。普通のクラリネットより、音域が1オクターブ低い)
Saxofono sopranino(ソプラニーノ・サックス。ソプラノ・サックスより更に完全5度高い、ヘ調の楽器))
Saxofono tenor (テナー・サックス 変ロ調の楽器))
テナー・サックス奏者、Saxofono soprano (ソプラノサックス、テナーサックスより1オクターブ高い。)と持ち替えあり。
Fagotto 1,2(ファゴット)
Contorafagotto(コントラ・ファゴット。普通のファゴットより、1オクターブ低い。オーケストラの最低音を出す楽器。)
【金管】
Corno(F)1-4(ヘ調のホルン。1番から4番まで4人)
Tromba 1-4(トランペット、1番から4番まで4人 1人はニ調、3人はハ調)
Trombone 1-3(トロンボーン 1番から3番まで3人)
Tuba (チューバ)
【打楽器】
Timpani(ティンパニ)
Tamburo militare 1,2(小太鼓。 日本では普通、英語で「スネア・ドラム」という、イタリア語だと、「軍隊の太鼓」というのですな。)
Piatti(シンバル)
Gran Cassa(大太鼓。日本では普通、英語で「バス・ドラム」という。)
Tam-tam(銅鑼)
【特殊楽器】
Arpa ハープ
Celesta チェレスタ
【弦楽器】
Violino I, II (第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン)
Viola (ヴィオラ)
Violon Cello (チェロ)
Contrabasso(コントラバス)
(注:以上をまとめて、弦五部、などと云います)
楽器の種類は26種類なのですが、ご覧の通り、フルートでも1番と2番。
ホルンなら1番から4番までパート(声部)が分かれているわけで、それを全部数えると、43パートになります
(持ち替えもありますから、43のパート全てが鳴ることはありませんが)。
以上が「ボレロ」で使われる全ての楽器とパートです。
◆今更解説でもないですが・・・・。
モーリス・ラベル作曲の「ボレロ」を聴いた作曲家は「やられた」と思ったのではないでしょうか。
こういう曲は最初に書いた者の勝ちで、他の作曲家は、2度と同じ手法を用いることが出来ません。
やったら、確実に「ボレロのパクリだ」と言われてしまいます。
この曲は、同じリズムを延々と繰り返します。ダウンロード Ravebolero01.jpg (7.2K)
1番小太鼓の奏者は(2番奏者は途中から加わります)この2小節から成るリズムを171回繰り返します。
メロディーは、原則的に2種類しかありません。
メロディーAは、冒頭4小節の小太鼓とヴィオラ、チェロの前奏の後、ダウンロード t_Bolero001.jpg (101.9K)
フルートが奏でます。スコアは、
ダウンロード t_Bolero002.jpg (95.0K)、
ダウンロード t_Bolero003.jpg (81.0K)
(出来れば別のウィンドウを開いて並べてご覧下さい)。
実際の音はこれです。
小太鼓は、ここで手が震えてリズムが乱れたら、それでその日の「ボレロ」は「残念でした」になってしまうので緊張すると思います。
また、フルートは、最後の「ド」はフルートの最低音で、朗々と響かせるには、神経を使うようです。
一番フルートが吹き終わると2番フルートが、小太鼓と同じリズムを吹き始めます
(曲が進むにつれ、色々な管楽器や弦楽器が交替でこれをやらされます)。
メロディーBは、フルートと同じメロディーをクラリネットが吹いた後、ファゴットが最初に吹きます。
スコアでは、
ダウンロード t_Bolero004.jpg (119.4K)、
ダウンロード t_Bolero005.jpg (113.0K)、
ダウンロード t_Bolero006.jpg (145.0K)(←、最初の小節、Fg.と言うところにメロディーの最後の音があります)。
実際の演奏では、こうなります。
エキゾティックですね。
ところで、これは、私には解説は不可能なので、ウィキペディアの解説「オルガンから借用した手法」というところを、
興味のある方はご覧頂いて、次の演奏をお聴き頂きたいです。これ、実はあまりバランスが余り良くない。
ホルンが強すぎて、本当は、ピッコロとチェレスタがもう少し大きい音だとえもいわれぬ不思議な音響となるのですが、
こういうのを思いつくラベルという人は「オーケストラの魔術師」と呼ばれるだけのことはあり、やはり天才だと思います。
そして、そして、過去に何度も書きましたが、私がボレロを聴くというと極度緊張状態に陥るのですが、
それはトロンボーンの難しいソロがあるからです。難しいソロと言っても、メロディーBをトロンボーンが吹くのですが、
演奏が始まってから7分ぐらい音を出さないでいて、いきなり、トロンボーンの最高音域の変ロ(ハイB)から吹かなくてはならず、
しかも、音域が広く、低い音まで朗々と鳴らさなければならないからです。とにかく何と云っても最初の音を外さないか、聴いているだけで、
いつも鼓動が高まります。
楽譜は、
ダウンロード t_Bolero007.jpg (134.9K)、
ダウンロード t_Bolero008.jpg (135.4K)、
ダウンロード t_Bolero009.jpg (133.7K)、
ダウンロード t_Bolero010.jpg (135.5K)、
ダウンロード t_Bolero011.jpg (165.1K)です。
実際の演奏は、これです。
なお、この辺まで来ると、音を出している楽器が相当増えています。
フルート、ホルン、ヴィオラが、小太鼓と同じリズムを刻み、他には、クラリネット、コントラファゴット、ハープ、第二ヴァイオリン、チェロ、コントラバスが、
2拍目と3拍目とか、1拍目と3拍目、など、リズムを補強しています。
さて、最後、クライマックスは本当に興奮します。最初は、こうだったのに→ダウンロード t_Bolero001.jpg (101.9K)、
スコアの一番最後の2ページは、こうなっています。
ダウンロード t_Bolero012.jpg (259.8K)、
ダウンロード t_Bolero013.jpg (242.3K)
サワリをどうぞ。
細かいのですが、トランペットのパート、Tr.というパートですが、16分音符の下降音型に、vibrato(ビブラート)
と指示があります。実際の演奏上、こういう細かい動きでトランペットがヴィヴラートをかけるのは不可能なのですが、
こういうことに、ものすごく詳しい、Kenさんによると、「音程は適当でいいよ」というような意味なのだそうです。
ラベルには意地の悪いところがあって、「この楽譜の意味が分からないなら演奏するな」といっているのだ、とのことです。
なるほど、と、感心してしまいました。世の中知らない事ばかりです。
◆それでは、全曲をどうぞ。アバド=ロンドンです。
「ボレロ」の録音は一体いくつあるのか分からないほど沢山ありますが、以前からお薦めしているのは、
クライマックスでオーケストラのメンバーが興奮のあまり、叫んでいる、ロンドン交響楽団=アバドです。
他の「マ・メール・ロワ」や「亡き王女のためのパヴァーヌ」も名演です。
では、80年前の今日初演された、モーリス・ラヴェル作曲、「ボレロ」を、この演奏でどうぞ。
何度聴いても、興奮に身をよじってしまいます。お楽しみ頂けたでしょうか。
それでは。
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コメント
gamma_utさん、ご無沙汰しております。コメントを頂戴しながら、レスが遅くなりまして、申し訳ありません。
仰るとおり、ボレロのCDはあまた存在しますが、こんな録音は唯一無二で、大変面白いです。
スタジオ録音ですから取り直しが出来たのに、アバドが「自然にプレーヤーが発した声だからこれでいいんだ」と、
このまま、プレスすることにしたそうです。大変興奮します。他のラベルの演奏も秀逸ですので、いつか是非、入手なさると
良いと思います。
例の「不思議な響き」のところ、ウィキペディアの解説は適切なのでしょうが、本当は和声学が分かっていないと、
理解出来ない話ですね。
しかし、理屈は分からなくても、こういう響きを頭の中で想像出来て譜面に書いた、ラベルという人はやはり、
底知れぬ天才だった、ということは、私でもよく分かります。
投稿: JIRO | 2008.12.14 00:48
ご無沙汰しております。以前一度コメントを書き込んだ者ですが、なかなか時間をとれず今頃になってこのエントリを拝読しております。
アバド・ロンドン響の演奏、とても熱のこもったものですね。都合ついたらぜひ音源も入手したいものです。
楽器の重ね方と倍音の使い方もとても参考になりました。「不思議な響きだなー」と思っていたのですが楽譜を調べたことはなかったので……。ありがとうございます。
投稿: gamma_ut | 2008.12.07 00:05