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2009.03.17

「日銀 銀行の資本増強支援決定」←やることも、発表のタイミングも、ものすごく異例です。

◆記事:日銀 銀行の資本増強支援決定(NHK:3月17日 21時19分)

日銀は、銀行などの資本不足による貸し渋りを食い止めるため、金融機関の資本増強につながる、

中央銀行としては異例の貸し付けを実施することを決めました。

日銀は、17日に政策委員会を開き、景気の急激な悪化で金融機関の財務内容が急速に悪化するなか、

企業への貸し出しが滞ることへの対応策を協議しました。

その結果、銀行などが貸し出しを円滑に行えるよう、金融機関の資本増強を支援する新たな対策を導入することを決めました。

具体的には、国際業務を行う大手銀行や一部の地方銀行を対象に、日銀による貸し付けで金融機関が資本増強のために行う

「劣後ローン」を引き受けて財務体質の強化を促し、貸し付けの総額は1兆円で、貸し付けの期間は今後検討するとしています。

中央銀行が、こうした貸し付けを実施するのは異例のことです。

日銀の白川総裁は、記者会見で「自力で資本調達するのが大原則だが、公的資金で自己資本を充実させられる改正金融機能強化法に加えて、

日銀の今回の措置で、さらに手段がそろったことになるので、金融機関は自己資本の強化に努めてもらいたい」と述べました。


◆コメント:銀行の資本を増強するため、中央銀行が貸し出しを行うこと。

日銀の決定は、銀行の劣後特約付きの貸出しをする、と言うことです。日銀が市中銀行に資金を貸すが、

それは、劣後ローンだと。劣後ローンというのは、返済順位が低いローンの事です。

もしも、貸付た銀行が倒産したら、日銀はおカネを回収出来なくなるかも知れない。

その意味では、非常に大胆です。そこまでするのは何故か。

ここでは、何度か説明しているのですが、株価がリーマン・ブラザーズの破綻以降暴落しています。

昨日、今日と日経平均株価は、かなり値上がりしていますが、それでも、漸く8,000円台に戻っただけです。

リーマン以前は、1万2千円台でした。日本に限りませんけれども銀行は、大量の株を持っていて、それらを買った時に比べると、

やはり、暴落しているわけです。すると今の企業会計では「時価会計」といって、決算時(日本なら3月31日)の株価が、

簿価よりも低ければ、その差額を有価証券評価損として計上しなければならない。これは、銀行の儲けから引かれるわけです。

記事で

「景気の急激な悪化で、銀行の財務内容が急速に悪化するなか」

と書いてあるのは、そう言う意味です。評価損は、銀行の元手である「資本」を取り崩さなければならない。

ところが、国際決済銀行(BIS=Bank for International Settlements)のバーゼル銀行監督委員会は、

自己資本の国際基準というのを決めていて、国際業務を営む銀行は、自己資本比率が

8パーセント以上でなければいかん、としているのです。

日銀は、株の昨日、今日の戻りは一時的なもので、また下がるだろうと思っていて、

従って、日本の大銀行の自己資本比率が、もしかすると、この8パーセントに近づくのではないか、

少なくとも銀行はそれを気にするあまり、不良債権を今以上に増やしたくないから、取引先への融資に、

非常に慎重になっている。それは、無理もない。しかし、その状態が続くと、資金を必要としている、

一般企業が、資金を調達出来ず、最悪、金繰りに行き詰まって倒産するかもしれない。

→銀行に取っては不良債権が増える→銀行は一層、融資をしなくなる。

という、国全体の経済「マクロ経済」の負の連鎖が起きて、不況どころか恐慌になるぞ、

と心配しているわけです。

市中銀行はそれぞれ、自分で資本増強策を考えて実行していますが、中央銀行が資本を提供することにより、

市中銀行の国際金融市場における、信用が一層高まり、資金の調達が容易になるだろう、という考えです。


◆金融政策決定会合1日目でこういう発表が為されること自体、極めて異例です。

日銀は毎月金融政策決定会合を開きます。今月は今日と明日で、通常は、無担コールレートという、

短期金融市場の誘導目標を据え置くとか、引き下げるという決定内容を2日目の午後2時頃に発表し、

その他の決定事項も、2日目に発表され、2日目の18時ごろから日銀総裁が記者会見を開き、

どうしてそういう決定に至ったか、決定に至るまでにどういう意見が出たか、などに関して、

説明し、その内容は新聞で詳細に報道されるし、会見の内容は日銀のサイトにも載ります。

それぐらい注目される事なのです。


しかし、私の記憶する限り、金融政策決定会合の1日目が終わった段階で、このような重大な決定が発表され、

1日目にわざわざ日銀総裁が記者会見を開くということは、今までにありません。

劣後特約付き貸付が、市中銀行の自己資本増強に奏功するかどうか、専門家の評価は、

分かれていて、懐疑的な意見もあります。

私は、どうにもこうにも、過去に例が無いことですし、金融政策(及びその歴史)を本格的に勉強したことがないので、

今のところ何ともいえないのですが、日銀の決定内容と、その行動(金融政策決定会合の1日目に発表を行うということ)の

異例さから、日銀が、日本における金融危機の危険はまだまだ消えていないどころか、これから本格化するかも知れない、

と考えていることは、よく分かります。問題の深刻さが端的に表れています。

今日の日銀の発表には、驚かされました。同時に、日銀総裁という仕事。

国家の運営に携わる仕事は沢山あり、日銀は言うまでもなく日本の中央銀行ですが、

その総裁の責任の重さを思うと、ぞっとするほどです。白川総裁は淡々と話していますが、

あのポストのプレッシャーは、考えようによっては、内閣総理大臣よりキツイかも知れません。

白川総裁は、本当にたいへんな時に日銀総裁になりましたが、

会見の内容を読むと、実に冷静で、それは「当たり前」と言ってしまうと実も蓋もなく、

私は非常に感心します。

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