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2009.07.04

【音楽】辻井伸行氏のピアノ演奏。

◆7月2日、NHK「クローズアップ現代」で辻井さんを取りあげていました。

辻井伸行氏が、ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールで優勝してから、3週間が過ぎた。

優勝直後に記事を書かなかったのは、何だか、DVDが跳ぶように売れた、とか、例によって日本人が、

よく分からないのに、盛り上がっていたからである。

そういう時に演奏評を書いても冷静に読んで頂けない。


7月2日のNHK「クローズアップ現代」でコンクール優勝後の辻井氏の活動を記録していた。

この様子はNHKオン・デマンドで見ることが出来る。

これを利用するには、まず、無料会員登録をして、ログインIDとパスワードを取得する。

そして、辻井氏の「クローズアップ現代」は、

心癒やす“至福”の旋律~ピアニスト・辻井伸行で個別に24時間210円で、

ストリーミング配信を購入するのである。ダウンロードは出来ない。


◆ドイツ・ドルトムントのあまり有名ではない音楽祭で、彼は弾いた。始め、聴衆は冷ややかであった。

ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールに限らず、凡そコンクールで優勝するのは、

原則的にただ1人なのであるから(非常に例外的に1位が2人というケースがあったが)大変な快挙である。

だが、これは意地の悪いことを述べるのではなく、本当のことなので、敢えて書くが、

コンクールで1回優勝したぐらいで、世界での評価が固まるわけでも、輝かしい将来が約束された訳でも、全く、無い。

私は、以前から何度も書いているが、コンクールは、「瞬間最大風速」のようなものであり、

その日、その時、その場所で、弾いた参加者の中で、誰が一番上手かったか、によってのみ順位が決まる。

従って、(現実にはそういうことはないが)翌日、もう一回本選を実施したら、全く違う順位になる可能性は十分にあるのだ。


それでも、曲がりなりにも辻井君には「ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール優勝者」というタイトルが付く。

これは、世界各地に名前が知られるという点、つまり「読んで貰えるチャンスが増える」という意味では有利であるが、

同時に「コンクール優勝者なのだから、上手くて当然」という、聴衆の期待が、心理的負担となる。


更に、ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールというのは、ピアノに疎い私は初めて知ったぐらいで、

ショパン・コンクールやチャイコフスキー・コンクールほど「格が高い」コンクールではない。

書こうかどうしようか迷ったが、はっきり言ってヨーロッパ人はアメリカ人をバカにしている。

だから、アメリカのコンクールで優勝したからといって、無条件で好意的に迎えてくれる訳ではない。


「クローズアップ現代」では、コンクール後、辻井氏がドイツのドルトムントで開かれた、特別に有名ではない

「音楽祭」に招待され、リサイタルを開いた様子が、記録されていた。

ヨーロッパ人は、クライバーン・コンクールなど、全然知らず、辻井君のリサイタルのチケットは、

この音楽祭に招かれた全てのピアニストの中で、最も安かった。


◆「あまり期待していない」「つまらない演奏だったら途中で買える」といていた客がスタンディング・オベーション。

NHKが開演前に、来場した客の様子を探るべきインタビューしたら、

「今日、急に来られなくなった友だちからチケットを貰ったの。期待していないわ」

とか、
「つまらない演奏だったら、途中で帰るわ」

と、冷ややかな雰囲気である。ホールも狭い。

辻井君としては、珍しく、聴衆の冷ややかな、堅い空気を感じ取り、暫く弾くことが出来なかった。

漸く、ショパンのエチュード、作品10-1を弾き始めた。

NHKの映像は載せられないが、彼は今20歳だが、15歳の頃、ニュース・ステーションで同じ曲を生演奏したときの映像


Nobuyuki Tsujii plays chopin etude OP10-1





全ての音がクリアで、手、手首、腕、肩は勿論、全身のどこにも余計な力が加わっていないため、

めまぐるしい音の動きだが音色の美しさが、際だっている。15歳でテクニックは出来上がっていたのである。

最初は渋い顔だったドイツの聴衆も、直ぐに非凡な才能を理解した。

全てのプログラムとアンコールを弾き終わっても拍手が止まらない。

辻井君は、その場でリストのハンガリー狂詩曲第2番を弾くことを決め、華麗に弾き終えた。

ドイツの聴衆はスタンディング・オベーションで、彼を讃えた。


◆コンクール本選でベートーヴェンのピアノ・ソナタ「熱情を弾いているが、それは明日更新します。

流石に疲れてきた。

ハンガリー狂詩曲第2番はまたの機会として、ここは、あんまり録音が良くないが、

ラ・カンパネラをお聴き頂きましょう。こういうのが「ラ・カンパネラ」です。

La Campanella



フォルティッシモでも手や腕が不必要に大きく動いていない。

つまり鍵盤を「ブッ叩いて」大きな音をだすのではなく、その音を出すのに必要最小限の力のみを

加えており、打鍵の後に素早く力を抜いているのであろう。

こういう、ヴィルティオーゾ系の技巧曲ばかりでは、音楽性よりも、技巧に目と耳を奪われがちになるが、

クライバーンコンクールで、辻井氏は、ベートーヴェンの「熱情」を弾いていて、これが大変見事である。

一旦寝ますが、今日、後ほど更新させて頂きます。

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コメント

HNの無い方、はじめまして。

コメントをありがとうございます。

のっけから、こんな事を書いて何ですが、コメントをご記入頂くときに、何でも結構ですので、

HN(ハンドル・ネーム。仮名)を付けて頂くと有難いです。五月蠅いことを書いて申し訳ないのですが、

レスを書くときに何ともお呼びしようが無くて困ってしまうものですから・・・。

それは、さておき、おっしゃることは、大変よく分かります。今まで何度も聴いたことのあるはずなのに、

ショパンの「子守歌」を聴いて、新鮮な感動を味わう。

大袈裟に表現すれば、ある曲に新しい生命を吹き込んだわけですね。

あなたのコメントは、辻井さんへの最大級の賛辞のひとつだと言えましょう。

ヴィルティオーゾ的な技巧と音楽性の両方を兼ね備えるということは、なかなか難しいもので、

特に、辻井さんのように若い人はテクニック誇示になりかけることがしばしばありますが、

彼は、それならない。「歌心」がある、というところが基本なのでしょうね。

素晴らしいことだと思います。

投稿: JIRO | 2009.07.05 18:01

JIROさんこんばんわ!時々思うのですが、クラッシックの曲と言うのは、いつかは耳にしているものだと思うのです。けれど名曲であっても心に留まらないものもあります。聴いたことがあってもあぁ知ってる・・。の程度で通り過ぎてしまうことも多いですよね。
今回、辻井さんの一連の演奏をみることができて、ショパンの子守唄を知りました。なんども耳にはしているとは思うのですが、こんなにも心に染みて、この曲を認識したのは初めてでした。そんなことってあるのですよね~。良い曲だなぁ~って思わすことができる演奏家ってすごい事だと思います。長生きしたいものです。

投稿: | 2009.07.04 22:24

Kenさん、こんにちは。続けてコメントをありがとうございます。

>最近軽症うつになったおふくろに、彼のDVDを買ってやったら、
>「いま見ている、とても励まされる!」
>と涙声で電話をくれました。それからずいぶん回復したのには驚きました。

それは素晴らしい!

音楽には確かにそういう力がありますよね。

私もかつて或る年の暮れ、年末のお客さんへの挨拶廻りでヘトヘトで歩いていたとき、

当時東京駅の丸の内口の広場で「駅コン」(駅のコンサート)をやっていたのですよ。

で、暮れだからその日は何と「第九」を演るらしく、オケがゲネプロをしていたのです。

フィナーレ。「歓喜の主題」がチェロ・コントラバス→ヴィオラ→1stヴァイオリンとリレーされ、

遂にTuttiで、壮大に鳴る部分。そこまで聴いて時間がないから残念だったけど再び仕事に戻るべく歩き始めました。

ちょっと歩いて、直ぐに「ハッ」と気が付きました。先ほどまで、本当にしんどくて足取りが重かったのに、

ベートーヴェンを聴いたら、急に元気に歩いている自分がいたのです。

音楽は誠に偉大であります。


>・・・自分は、でも、映像見るチャンスがなかったんですよ。
>ありがとうございます!

そうでしたか。それは、映像を載せて良かった。こちらこそありがとうございます。

>正面からの映像だとはっきり分かりますが、肩が絶対にぶれないのね。
>こういうところが、名人かそうでないかの分かれ目ではありますね。

そうなの、そうなの。絶対に力まないの。だから肩が不必要にぶれたりしないのでしょうね。
かつて、少年時代のパールマンが、メンコンを弾く映像をKenさんに教えて頂きましたが、

彼もそうですよね。子供だけど、余分な力を一切入れないことを殆ど本能的に体得しているのですね。
何か、あれと共通するものを感じます。

>それに加えて、あとはやっぱり、豊かな感性、かな。

仰有るとおりだとおもいます。

>自分のハンディを幸せに変えた、ステキな若者。
>周りの人たちにも恵まれたのでしょうけれど、まず本人が素直でないと出来ないことですものね、こちらも素直に讃えたいと思います。

辻井君を一番長いこと教えた、川上昌裕という東京音大の先生が、大変だったと思うけど偉いんです。
「クローズアップ現代」で、話していましたが、辻井君は耳から覚えるしかないので、川上先生が、

テープに録音するのだけど、右と左を別々に録音する。そういうテープが何百本とあるのです。

「それじゃ、これから、ショパンのポロネーズ5番、右手を弾きます」って最初に吹きこんで。
並の手間じゃないですよ。

しかし、そうやって、最初から右と左を非常に意識的に独立して覚えたことが、彼の現在の豊かな表現力の
一因になっているのではないか、と、川上先生は仰有っていました。

辻井君はこのような、偉い先生に恵まれたことは好運ですが、覚える苦労だって並大抵ではなかったのは、

容易に想像でき、それを決して苦労しましたと言わないで明るく振る舞う、素直な彼の人柄が、才能を開花させたのでしょうね。

更に一層、大輪の花を咲かせてくれることを祈ります。

投稿: JIRO | 2009.07.04 19:58

最近軽症うつになったおふくろに、彼のDVDを買ってやったら、
「いま見ている、とても励まされる!」
と涙声で電話をくれました。それからずいぶん回復したのには驚きました。

・・・自分は、でも、映像見るチャンスがなかったんですよ。

ありがとうございます!

正面からの映像だとはっきり分かりますが、肩が絶対にぶれないのね。
こういうところが、名人かそうでないかの分かれ目ではありますね。

それに加えて、あとはやっぱり、豊かな感性、かな。
自分のハンディを幸せに変えた、ステキな若者。
周りの人たちにも恵まれたのでしょうけれど、まず本人が素直でないと出来ないことですものね、こちらも素直に讃えたいと思います。

いいもの見せて頂きました。
取り急ぎカンパネラを拝見しました。
またゆっくり拝見・・・する時間が欲しい!!!

投稿: ken | 2009.07.04 19:06

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