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2009.11.03

「米ノンバンク大手のCITが破綻」←確かにノンバンクなのですが、米国の金融不安が残っていることが問題です。

◆記事1:米ノンバンク大手のCITが破綻(11月2日8時53分配信 読売新聞)

資金繰りが悪化し経営危機に陥っていた米ノンバンク大手のCITグループは1日、

米連邦破産法11章(日本の民事再生法に相当)の適用を裁判所に申請し、経営破綻(はたん)した。

同社の資産規模は2009年6月末時点で710億ドル(約6・4兆円)で、米企業の破綻としては、

09年6月に破綻した米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)に次いで米史上5番目

金融機関としては08年9月の貯蓄貸付組合(S&L)最大手ワシントン・ミューチュアルに次ぐ3番目の規模となる。

CITの社債を保有する日本の金融機関に損失が生じる可能性もある。

CITが08年末に受けた23億3000万ドル(約2100億円)の公的資金は全額返済されない公算が大きく、

08年秋以降の米金融危機への対応で初めて国民負担が発生する事例になりそうだ。


◆記事2:米CITに無担保債権=総額290億円-みずほコーポ銀(11月3日3時0分配信 時事通信)

経営破綻(はたん)した米ノンバンク大手CITグループが2日までにニューヨークの破産裁判所に提出した書類に、

みずほコーポレート銀行の名義で総額3億2320万ドル(約290億円)の無担保債権が含まれていることが分かった。

CITは、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の保護下で経営再建を目指しているが、債権の大半は回収不能になる可能性がある。


CITは同書類で、無担保債権者のうち上位75社を公表。最大だったのはバンク・オブ・アメリカで75億ドルだった。

みずほコーポレート銀以外に日本企業の名前はない。

CITは、旧第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)から一時、出資を受けた経緯があり、

みずほコーポレート銀とも取引があったものとみられる


◆コメント:CITというアメリカの金融機関が潰れると、何が問題なのか。

このCITという金融機関は随分前から資金難に陥っていて、潰れそうだと懸念されていたので、

世界の金融関係者は「やっぱり」と思っているでしょう。リーマン・ブラザーズが昨年破綻

したときほどではない、としても、色々な観点から、一般に思われているよりも大きな問題です。


記事1も記事2も「ノンバンク」(銀行ではない金融機関)という言葉を使っています。

間違いではないけれど、説明が不十分です。

CITのような金融機関を「ファクタリング会社」といいます。一般企業の売掛債権を買い取る会社です。

会社が製品を作って他の会社に納品して、請求書を渡したけれど、まだ代金を回収できていない分を簿記で、

「売掛金」と言います。多くの場合、商売にはそういう慣習があります。


例えばJIRO株式会社が服を製造する会社で、太郎株式会社が洋服の小売り業者である、とします。

JIRO株式会社は製品を太郎株式会社に納品しても、現金と引き換えということはなく、代金を納めるまでに

数ヶ月、2ヶ月から6ヶ月ぐらいの猶予を与えます。太郎株式会社は洋服が売れないと、JIRO株式会社に

おカネを払えないからです。しかし、JIRO株式会社は、本当に太郎株式会社から代金を回収できるか分かりません。

その上、その間、従業員に給料を支払ったり新しい服の材料を買うのにおカネが必要です。

こういうときJIRO株式会社は、CITのようなファクタリング会社に売掛金を回収する権利(売掛債権)を

買い取って貰うのです。こうすれば何ヶ月も待たなくて済みます。

但し、そのとき、ファクタリング会社も商売なので、JIRO株式会社の太郎株式会社への売掛金が100万円だとしたら、

満額では買い取らず、例えば90万円で買い取ります(実際はこれほど値引きしないですが、あくまでも「仮定上の話」です)

JIRO株式会社は本当は10万円売上げが減りますが、太郎株式会社が本当に請求金額を支払ってくれるか、

何ヶ月も待たずに、とりあえず現金を手にすることができます。


あとは、ファクタリング会社が太郎株式会社に対して売掛金を回収するわけです。

これは100万円を回収するのです。すると、JIRO株式会社には90万円しか支払っていないから、

ファクタリング会社は10万円の利ざやを抜けるわけです。それがファクタリング会社の収益になります。

謂わばファクタリング会社はJIRO株式会社の代わりにリスクを引き受けるわけです。

もしも太郎株式会社が潰れて100万円を回収できなかったらJIRO株式会社に既に支払った90万円を失っただけになります。

こういうことが重なると、ファクタリング会社の手元におカネが無くなります。

CITの場合も、そのような事態が重なり、次第に資金繰りに窮して、破綻に至ったものと考えられます。


連邦政府が他の金融機関、特に銀行と異なりCITを救済しようとしなかったのは、

ファクタリング会社は、前述のような業務内容なので顧客からの大量の預金を預かっていません。

「ノン・バンク」というのは、銀行ではないということですが、ここが決定的に違う訳です。

銀行が潰れたら、最悪預金者が銀行に預けている預金(預金者の資産)が危険に晒されますが、

ファクタリング会社が潰れても、それはありません。それで、連邦政府はあっさりCITが潰れるのを

見ていたのです。しかし、このように最大手のファクタリング会社が潰れることは問題です。


ファクタリング(=売掛債権の買い取り)は銀行も行っていますが、CITが買い取っていたのは中小企業が多いのです。

銀行は、ほぼ間違いなく、CITが買い取っていたような売掛債権の買い取りには消極的です。

ただでさえ、まだリーマン・ショックから完全に立ち直っていないのですから、下手に中小企業の売掛債権を買い取り、

回収不能になれば、自らの経営に影響します。

すると、今まで、比較的簡単に売掛債権を買い取って貰っていた側の中小企業が、困ります。

下手に売掛金を増やせない。すると、経済活動が縮小することになり、米国の景気にとって、マイナスです。

或いは、CIT以外では売掛債権を買ってくれないとなると、直ぐに資金繰りに困る中小企業が続出する恐れがある。

資金繰りがつかなくなったら、会社は潰れます。すると、売掛債権の買い取りをしていなくても、中小企業におカネを

貸していた銀行は、また、不良債権を抱え込むことになります。リーマン・ブラザーズが破綻した背景にあったのは、

サブプライムローンという「住宅ローン」で、この不良債権をアメリカの銀行はどこも大なり小なり既に抱えていて、

いまだに処理しきれていません、漸く少し落ちついてきたかな?というところだったのに、もし、中小企業倒産が連続的に、

大量に生じれば、アメリカの金融危機がぶり返します。

今の世界不況は、リーマン・ショック以降、米国の金融危機が世界的に波及したことが原因ですから、

非常に好ましくない事態です。


◆CITに投資していた投資家、特に金融機関が、債権回収不能となり、資本を脅かします。

リーマンのときにも、他の金融機関や、一般の事業会社が破綻したときも、その会社の株は紙屑同然になる。

リーマンのような超巨大金融機関は、だれも潰れるとは思いませんでしたから、リーマンが発行した株式や債券を

買っていた、つまり投資していた投資家は、皆、損失を被りました。特にアメリカ国内はもとより、世界中の金融機関は、

自分の資産の運用手段として、アメリカの大手金融機関の株式や債券への投資、つまり、購入を行っています。

CITの場合も例外では、ありません。リーマンに比べれば規模や小さいけれども、記事1に書いてあるとおり、

米企業の破綻としては、史上五番目

の規模なのです。CITに投資していた、世界中の投資家は、リーマン・ショック以来、こういうことに

慎重になっていたはずですが、記事2にあるとおり、早くもみずほコーポレート銀行が、CITに290億円の無担保債権を

有している、と報道されました。「債券」ではなく「債権」、つまり「おカネを返して貰う権利」ですから内容は不明ですが、

いずれにせよ回収不能となったら、当然不良債権化するわけです。

みずほですから、290億円程度では、ただちに経営に影響はありませんけれども、不良債権は、資本を取り崩して、

償却するわけです。最近、G20という金融行政に関する国際会議で会計基準を見直し、銀行に要求する自己資本比率を

厳しくする、即ち、自己資本比率のうち、最も中核的な部分(これ以上は専門的になるので詳説しませんが)の比率を

高めようとしています。

そういう時期に不良債権が増えるのは如何にもまずい。

記事2によると、CITに対する日本の「大手無担保債権」者は、他にないそうですが、

記事1の太文字分のとおり
CITの社債を保有する日本の金融機関に損失が生じる可能性もある。

のです。

更に、日本の大手金融機関は、直接CITに債権を持っていなくても、アメリカの何処かの金融機関に対する債権を、

リーマン・ショック後、圧縮したとはいえ、今だに保有していますので、間接的に損害を被る可能性があります。

2日のニューヨーク株式市場は、小幅反発して終了した、とのことですが、まだ何が起きるか、分かりません。


とにかく、いまだにCITのようなノンバンク(ファクタリング会社)とはいえ、大手金融機関が破綻するということは、

米国の金融不安が続いている(それはその世界の人間は分かっていましたけど)ことが、明らかになったわけで、

それは、前述のとおり、中小企業の倒産を引き起こしたり、他の金融機関の連鎖的倒産という形で表面化する

可能性が高いのです。

アメリカも、EU(ヨーロッパ連合)も、日本も、政府は仕切りに「最悪期は脱した」とか、

「景気は下げ止まり、持ち直しつつある」と、状況を楽観視したステートメントやリポートを

発表していますが、私は、世界経済が本当に「最悪期を脱し」たのか、懐疑的です。

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