改めて「普天間基地問題入門」。
◆実はよく分からない、という方もおられるでしょうから。
沖縄県にある、在日米軍の普天間基地をどこに移すか、と言う問題に関して、
鳩山政権が煮え切らないということで、毎日のようにメディアに叩かれていますが、
実は、どういう問題か、詳しく説明出来ないという方もおられると思います。
そんなに難しい話ではないのに分かり難いのは、特に沖縄県の地理、土地勘が無い為ではないかと思います。
私もその一人で、沖縄に行ったことがありません。ですから感覚としては把握出来ていないのですが、
問題の所在を説明します。
◆普天間基地は沖縄県宜野湾(ぎのわん)市にあります。
日本には米軍施設(自衛隊と共用の施設を含む)が29都道県にあります。米軍専用施設に限っても、13都道県にあります。
2009年1月1日現在では日米共用施設を含めると134施設。米軍専用施設は85施設あります。
沖縄には、米軍専用施設が33あり、日本の米軍専用施設の面積合計の75%を占めます。
防衛省の資料に表示されています。在日米軍施設・区域(専用施設)面積
普天間基地は沖縄県宜野湾(ぎのわん)市にあります。
宜野湾市の沖縄県内の位置を地図で示します。
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何故、特に普天間基地が問題なのか?
普天間基地は町の中にあり、周辺は住宅で囲まれています。
このため、基地周辺の住民は飛行機やヘリコプターの騒音に悩まされています。最もうるさいところでは、
騒音が120デシベル(カラオケ店内が約90デシベル)に達します。騒音の回数は1日、朝から晩まで56回もあります。
また、米兵の犯罪が多発しています。この10年間で679件に及び、1995年9月4日、小学生の女の子が米兵に乱暴されました。
これが、最も日本側がキレた大きな理由のひとつです。
また、2004年8月13日、米軍のヘリが、沖縄国際大学に墜落、炎上しました。学生や住民に死傷者は出ませんでしたが、
これは運が良かっただけで、住宅地に軍の施設があることの危険性が認識されました。
普天間基地を別の場所に移すことに関して日米両国政府の協議が10年も続きました。
1996年に日米両政府は普天間飛行場の返還と移設そのものに関しては合意しています。
どこに移すか決めるのに10年を要し、2006年日米両国政府は在日米軍再編に関して合意しました。
その合意では、2014年までに普天間飛行場を、沖縄県名護市辺野古(へのこ)のキャンプ・シュワブという基地の
海沿いを埋め立てて、そこに移すこと。アメリカ兵2万1千人のうち8千人をグアムへ移すことが決まりました。
キャンプ・シュワブの位置はこの通りです。
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◆ところが政権が変わりました。
8月30日の総選挙で民主党が与党となり、国民新党、社民党と連立を組んでいます。
民主党の選挙前のマニフェストにはこのように書いてあります。
日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む。
米軍再編を見直すということは、普天間飛行場をキャンプ・シュワブに移転するという2006年の合意を見直す、
ということです。民主党と連立を組んでいる社民党は、普天間飛行場を同じ沖縄県のキャンプ・シュワブに移転しても
仕方がない。県外に移すべきだといいます。
アメリカは、日本の政権が変わろうがしったことではない。2006年に合意したとおりキャンプ・シュワブに移転するぞ、
と、ムキになっていますが、辺野古の人々からは、飛行場を自分たちの土地に移して欲しくない。それを断ってくれると思ったから
8月の総選挙で民主党に投票したのだ、という人々がいます。
ところが民主党がはっきりしない。政権を取る前はマニフェストで「米軍再編を見直す」と書いていますが、
それでは、どこに移すのか?に関しては明言していません。決めておかないうちに本当に政権を取ってしまったので、
2006年の日米合意をそのまま実行したのでは、マニフェストでウソを言ったことになります。
社民党は、あくまで県外移転に拘り、普天間を県外に移さないならば、民主党との連立を止めるかも知れない、といいます。
繰り返しになりますが、アメリカは、民主党が本当に米国と日本との2006年の合意を変えるなら、日米同盟を考え直そうかな、
と、民主党を牽制します。鳩山さんはどうしたらよいか、最後は自分が決めるといいながら、
結局、いつまでに決めるかはっきり決めないことに決めた、
というので、鳩山首相は結局「ここ一番」というときに決断できないではないか。
と、呆れられています。
簡単ですが、以上が現在の状況です。
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