「東証大引け、反発 ドバイ不安一服」←甘かったですな。「UAE政府はドバイワールドの債務を保証しない」そうです。
◆記事1:UAE中銀、銀行の流動性支援で緊急供給措置(11月30日7時34分配信 ロイター)
アラブ首長国連邦(UAE)中央銀行は29日、金融システムに流動性を供給する緊急措置を発表した。
ドバイの政府系企業とその系列会社に債務問題が発生したことを受けた、銀行の流動性を支援する最初の対応。
ドバイ政府は25日、ドバイ・ワールドと系列の不動産開発会社ナヒールが抱える巨額な債務について、債権者に返済猶予を要請すると発表した。
これを受けて世界の金融市場は動揺。投融資した銀行は損失を被る可能性があるばかりでなく、
預金者の取り付け騒ぎが起こりかねない状況で、UAE銀行間市場の機能が不安視されていた。
UAE中銀は、3カ月物の首長国銀行間取引金利(EIBOR)プラス50ベーシスポイント(bp)で
「銀行の当座勘定に関連した特別追加流動性ファシリティー」を開始すると発表した。詳細は明らかにしていない。
◆記事2:東証終値264円高=ドバイ不安後退で反発(11月30日17時0分配信 時事通信)
30日の東京株式市場では、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイ首長国の信用不安の後退から、ほぼ全面高となった。
日経平均株価は前週末比264円03銭高の9345円55銭と、3営業日ぶりに反発した。
円高の一服も株高要因。政府の追加経済対策が、円高対策を含めて当初予定の2兆7000億円を超える見込みだと報じられたことも、買いを後押しした。
東証1部全銘柄の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)は28.93ポイント高の839.94。出来高は24億6841万株、売買代金は1兆5426億円だった。
◆記事3:ドバイ金融局長「政府は債務保証せず」 債権者反発も(NIKKEI NET)(30日 22:05)
アラブ首長国連邦(UAE)ドバイの金融行政トップであるサレハ金融局長は30日、地元テレビ局のインタビューで
「政府はドバイワールドの債務を保証しない」と語り、同社の債務返済に関与しない意向を示した。
ドバイワールドの資金繰り危機が政府に波及するのを回避する狙いとみられるが、政府は同社に100%出資しており、債権者が強く反発しそうだ。
同局長は「ドバイワールドは政府の一部ではなく、設立時から政府の債務保証はない」と指摘。
「債権者は投融資することを決めた責任を持つべきだ」と強調した。
◆コメント:一旦安心した後で、2度目のショックを与えられた金融市場。
どうも中東アラブ諸国の発想は、こちらと文化圏が違うと言えども、とても常識では
通用しないことを平気で国にする傾向がある。商社に限らず他の業種でも、中東を相手に
するときには、契約締結直前に、「やっぱり止めた」と言い出すことがしばしばあるので、
最後まで気を抜けないという話を聞いたことがあるが、本当だ。
今回のドバイショックとは何か、に関しては、一昨日、
ドバイで何が起きたのでしょう?(ココログ)
に書いたのでお読み頂きたい。
これに対して、UAE(アラブ首長国連邦)の中央銀行は、記事1のとおり、
「金融市場に流動性資金を供給する緊急措置」を発表したが、これは文字通り、緊急措置。
応急手当のようなものである。
ドバイワールドという政府が100%出資する開発会社が、債務の返済期限を延ばしてくれと言ってきたのが
先週の水曜日である。
これによって、ドバイワールドに融資していた周辺諸国や欧米、日本の金融機関がどれぐらい損害を被るか
分からない。銀行同士は、短期金融市場で短期間の資金の貸し借りを行っているが、ドバイワールドの債権を
買ったり、ドバイワールドに融資していた銀行が、債権を回収できなくなり、損失を被り、潰れるかも知れない、
という噂が立ったら、他の銀行は互いに資金を調達できなくなり中には資金繰りに窮する銀行が出るかも知れない。
そのときは、UAE中央銀行が持っている資金を貸しますよ、という事である。
他の国、及びその銀行は、ひとまず直ぐに中東発の世界金融危機が回避できた、
と、判断した。
しかし、ちょっと考えれば分かるが、それは、目先の混乱を回避する「対症療法」であり、
ドバイワールドが返済猶予を申し出た、ドバイワールドから見れば、借金、
ヨーロッパを始め、世界各国の銀行がドバイワールドに貸したおカネ(債権)を
回収できるかどうかは別の話なのである。
ドバイの金融当局トップは、
「ドバイワールドは、確かに政府が100%出資した会社だが、政府そのものではない。
ドバイワールドの借金はドバイワールドの借金である。融資した銀行は当然リスクを取ったのだから
その結果ドバイワールドから債権を回収できなくなってもそれは、そちらの判断ミスだ。
というのである。
おカネを借り、期日には返済するという契約をドバイワールドは締結していたのに、
事前に貸し手である銀行に何の相談もなく、いきなり「期日までには返済できないから、
半年、期日を延長してくれ」といっている。そのドバイワールドは政府が所有している。
ドバイワールドが返済できないならば、後ろ盾であるUAEもしくはドバイ首長国が、
ドバイワールドの債務を保証する、つまり、代わりに返済するべきである。
政府100%出資会社にカネを貸しても期日に返せないというのであれば、今後、
国際金融市場に於けるドバイの信用は地に墜ちるということが分からない。
開いた口がふさがらない。当分混乱は続くだろう。
今日戻した日経平均株価も明日は再び暴落する可能性が高い。
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