「東証大引け、1年半ぶり1万1000円台回復」←明日が期末だからです。景気が改善したのではありません。
◆記事1:東証大引け、1年半ぶり1万1000円台回復 (日経電子版 3/30 15:27)
30日の東京株式市場で日経平均株価は反発し、2営業日ぶりに昨年来高値を更新した。
大引けは前日に比べ110円67銭(1.01%)高の1万1097円14銭と、2008年10月2日(1万1154円)以来、
約1年半ぶりに1万1000円台を回復した。来期の企業業績の回復期待や前日の米株式相場の続伸を好感し、
キヤノンやソニーなど主力の輸出関連株に買いが先行。国際商品相場の上昇で資源関連株などにも買いが広がり、
東証1部で昨年来高値を更新した銘柄は120と、昨年8月31日(167銘柄)以来、約7カ月ぶりに100を超えた。
朝方に発表された2月の鉱工業生産指数速報は1年ぶりに前月比でマイナスとなった。
ただ、足元の景気・企業業績の回復期待が根強いことから売り材料とは受け止められなかった。
3月決算期末をあす31日に控え、期末の株価を少しでも高くしたいとの思惑が働いたことも心理的な支援要因になった。
(以下略。色太文字は引用者による。)
◆記事2:失業率、横ばいの4.9%=求人倍率は2カ月連続改善-2月(3月30日8時38分配信 時事通信)
総務省が30日発表した労働力調査によると、2月の完全失業率(季節調整値)は前月と同じ4.9%だった。
一方、厚生労働省が発表した2月の有効求人倍率(同)は、前月比0.01ポイント上昇の0.47倍と2カ月連続で改善した。
男女別の失業率は、男性が5.2%で前月と同じだったが、女性は4.4%と0.2ポイント改善した。
完全失業者数は前年同月比25万人増の324万人。男性は26万人増加する一方、女性は1万人減少した。
就業者数は前年同月比80万人減の6185万人。産業別では医療・福祉で42万人増加し、
人手不足が続く介護分野などが特に女性の雇用の受け皿になっているとみられる。
製造業は54万人減少したものの、減少幅は前月比21万人縮小した。
有効求人倍率はハローワークの求職者1人に何件の求人があるかを示す。
このうち、正社員の求人倍率は前月と同じ0.29倍で、依然として低水準にある。
(注:色太文字は引用者による。)
◆記事3:消費支出、7カ月ぶり減=2月の家計調査(3月30日11時0分配信 時事通信)
総務省が30日発表した2月の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は26万1163円となり、
価格変動を除いた実質で前年同月比0.5%減となった。マイナスは7カ月ぶり。
入試制度の多様化で私立大学の入学金納入時期が分散していることを受け授業料などが減少、葬儀関係費も減った。
また、前年同月に大幅増加した反動などから自動車購入もマイナスとなった。
一方、薄型テレビは2倍超の伸びが続き、エアコンも好調だった。
◆記事4:12カ月ぶり低下=2月の鉱工業生産91.3-経産省(3月30日13時0分配信 時事通信)
経済産業省が30日発表した2月の鉱工業生産指数速報値(2005年=100、季節調整済み)は、
前月比0.9%低下の91.3だった。自動車を中心に上げ幅が大きかった前月の反動が出た。指数の低下は12カ月ぶり。
ただ、生産の傾向としては引き続き上昇しているとして、基調判断については「持ち直しの動きで推移」に据え置いた。
国内および欧州向け小型車やゲーム機用品の生産が減少。
液晶テレビも、新年度からの家電エコポイント制度の基準変更を控えて旧モデルの生産が抑えられた。
◆コメント:株価は上がっていますが、実体経済が好転しているとは言えません。
ごちゃごちゃと面倒臭い記事を引用しましたが、しばしご辛抱下さい。
結論を一言で書くと、
株価だけを見ていると景気がよくなり始めたかの如く見えるが、経済指標を見ると、さほどでもない。
ということです。
あまり引用記事が上に増えると、読むのが面倒くさくなるので、載せませんでしたが、
今、日本経済における最大の問題は、物価が下がり続ける現象、即ち「デフレ(デフレーション:deflation)」が
止まらないことです。
経済指標でいうと消費者物価指数です。
先週の金曜日、3月26日、2月全国消費者物価指数を総務省統計局が発表しました。
全国消費者物価指数は、12ヶ月連続して前年同月比マイナスです。
◆記事:2月全国消費者物価は‐1.2%、12カ月連続マイナス(3月26日9時36分配信 ロイター)
総務省が26日午前8時30分に発表した2月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、コアCPI、2005年=100.0)
は前年比1.2%低下の99.2となった。1月(1.3%低下)から下落率は縮小した。マイナスは12カ月連続。
ロイターがまとめた民間調査機関の予測中央値は前年比1.2%低下だった。
全国の総合指数は前年比1.1%低下。食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合指数は前年比1.1%低下した。
内閣府が毎月発表する月例経済報告というレポートがあります。日銀とは(建て前上は)別に、政府が日本経済の現状を
どう見ているか、という公式の見解を述べるものです。3月15日に発表されたものが最新です。
これが3月分です。1ページ目に結論が出ています。
これを「基調判断」といいますが、3月の月例経済報告では7ヶ月ぶりに上方修正し、
景気は、着実に持ち直してきているが、なお自律性は弱く、失業率が高水準にあるなど厳しい状況にある。
としました。その前まではどのような表現だったか。2月までは「着実に」が入っていなかっただけなのですが、
とにかく、ポジティブ(楽観的)な形容詞を追加したから「上方修正」です。
参考までに、月例報告の過去の基調判断をブルームバーグが一覧にしていますから、
リンクを貼っておきます。
月例経済報告:過去の基調判断(表)
政府は無理矢理、「景気は良くなっている」と大本営発表を繰り返しますが、
デフレが1年もとまらないのです。
◆それに加えて、今日の数字。
故意に楽観的な表現を使いたがる内閣府の月例経済報告ですら、雇用情勢に関しては、
失業率が高水準にあるなど厳しい状況にある
と言わざるを得なかった。
今日、ごちゃごちゃしてますけど、朝、まとめて発表があったのです。
- 8:30 完全失業率(2月、総務省発表)
- 8:30 有効求人倍率(2月、厚生労働省発表)
- 8:30 家計調査(2月、総務省発表)
- 8:50 鉱工業生産(2月、経済産業省発表)
この順番で記事1から3を載せました。同じ雇用関係の統計でも、
完全失業率(正しくは労働力調査というのですが)は総務省。
有効求人倍率は厚生労働省が発表するのですが、この二つは一つの記事にまとめて書くのが普通です。
注意しなければならないのは、マスコミの報道は全国紙もテレビも、ロイター、時事通信、共同通信、などの通信社の
報道、特に見出しだけを見ると、ミス・リードされる(間違った印象をうける)場合が多いのです。
何故かしりませんが、各社ともに、あたかも政府の宣伝機関のような「ご機嫌取り」見出しをつけます。
例えば、
◆失業率、横ばいの4.9%=求人倍率は2カ月連続改善-2月(3月30日8時38分配信 時事通信)
◆<完全失業率>2月4.9%、前月と同水準 求人倍率は改善(3月30日8時57分配信 毎日新聞)
◆2月有効求人倍率は0.47倍、2カ月連続の改善 (3月30日8時49分配信 ロイター)
ウソではないのですが、これだと分からないでしょう。
失業率は変わらなくても失業数は増えているのです。総務省のサイトには次のように表示されています。
○2月の就業者数は6185万人と1年前に比べ80万人減少
・就業者数は25か月連続の減少
・主な産業別就業者数は,1年前に比べ「製造業」などが減少
(主な産業別就業者数及び1年間の増減数)
製造業・・・・・・・・・・ 1049万人と,54万人減少
建設業・・・・・・・・・・ 509万人と,10万人減少
卸売業,小売業・・・・・・・・・・1048万人と,7万人減少
サービス業(他に分類されないもの)・・・・・・・・・・ 459万人と, 2万人減少
うち 職業紹介・労働者派遣業・・・・・・・・・・ 106万人と,3万人増加
医療,福祉・・・・・・・・・・ 659万人と,42万人増加
宿泊業,飲食サービス業・・・・・・・・・・ 378万人と,12万人増加
○2月の完全失業者数は324万人と1年前に比べ25万人増加
・完全失業者数は16か月連続の増加
(主な求職理由別完全失業者数及び1年間の増減数)
非自発的な離職による者・・・・・・・・・・145万人と,26万人増加
うち 定年又は雇用契約の満了・・・・・・・・・・ 35万人と,9万人増加
勤め先や事業の都合・・・・・・・・・・110万人と,16万人増加
自発的な離職による者・・・・・・・・・・ 101万人と,5万人増加
学卒未就職者・・・・・・・・・・ 11万人と,1年前と同数
新たに収入が必要な者・・・・・・・・・・ 41万人と,1万人減少
○2月の完全失業率(季節調整値)は4.9%となり,前月と同率
・男性は5.2%と,前月と同率
・女性は4.4%と,前月に比べ0.2ポイント低下
・15~24歳の完全失業率(原数値)は9.2%と,1年前に比べ0.3ポイント上昇
(注:太文字は引用者による)
完全失業率は確かに前月と同じく4.9%ですが、太字で示した部分をご覧になると明らかなとおり、
就業者数は25か月連続の減少
2月の完全失業者数は324万人と1年前に比べ25万人増加
完全失業者数は16か月連続の増加
しているのです。また、
有効求人倍率は、求職者1人につき何人の求人があるかを示す数字です。
厚生労働省のサイトに、一般職業紹介状況(平成22年2月分)についてとして発表されますが、
これが、1.0を下回っているということは、職を探している人が、求人よりも多い、つまり、仕事に就けない人がいる、
ということで、統計を溯ってみると、2007年11月に初めて1.0を割り込んで以来、一度も1.0以上に戻っていない。
今日発表された、2月で31ヶ月連続して1.0を割り込んでいる。そういうときに、
有効求人倍率は2ヶ月連続の改善
とかくのは、確かにウソでないけれど(12月=0.43、1月=0.46、2月=0.47ですから。)、
0.5以下などという悪い数字で、前月から0.01改善したといっても、これを「改善」と見なすほどではないですね。
マスコミの見出しだけ飛ばし読みすると、このように、あたかも雇用情勢が改善しているかのような錯覚に陥るので、
私はなるべく、役所が発表した元の数字(それを精査することまではできませんが)を見ることにしています。
長くなるので、一言だけ触れるに留めますが、記事3の個人消費(GDPの3分の2を占めるのです)の低迷や、
このところ、改善が続いていた数少ない指標、記事4の鉱工業生産も、怪しくなっています。
「景気が最悪期を脱した」とか、「着実に持ち直しつつある」、
などと政府や財界団体のオジサンがアピールしますが、
私にはどう見ても、日本の景気が改善しているとは思えません。
今日株価が上昇したのは、多くの会社が明日決算期末で、2001年から日本では時価会計制度を
導入し、期末(多くの会社にとっては3月末)の価格で金融資産、株式なら株式を評価するのです。
買った時よりも期末の株価が高ければ含み益を、収益として計上するのです。
本当は、買った時よりも、期末の株価の方が高かった場合、その値で売ることができたら、実際の
利益になるのであり、含み益というのは、実際には売っていないのに売ったとしたら、これだけ差益が出た、
という数字を利益として組み込んでしまうので、何だか胡散臭い気が私はどうしてもするのですけれども、
とにかくそういう会計制度を採用せよ、とアメリカにいわれて、日本は「へいへい」というとおりにして、
それが続いているので、株を保有している企業は、決算を少しでもよくするために、実体経済もへったくれも
無関係に今日と明日は、無理にでも株価を上昇させたがり、今日は実際に成功しました。
あくまで、株価の「洗い直し」は明日が基準日ですから、明日もなんとか落ちないように、
みんな、必死で買い支えるでしょう。
という訳で、期末要因による株高であり、経済の実体は、依然として低迷しているのです。
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