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2010.04.10

【音楽・映像】カラヤン=ウィーンフィルの「タンホイザー序曲」リハーサル風景、他。

◆2週間前と同じDVD(ドキュメント・カラヤン・イン・ザルツブルク)からなのですが・・・。

二週間前、3月26日に、

【音楽・映像】韓国のソプラノ、スミ・ジョー(Sumi Jo)がロ短調ミサの稽古でカラヤンに気に入られる瞬間。ココログ

を載せました。メールやコメントはほとんど頂いておりませんが、アクセス解析を見ると、

かなり多くの方が興味を持たれたようです。

先日も書きましたが、カラヤンのコンサート映像しか見たことがないと、

目を閉じたまま指揮をする姿が、如何にもキザで、あれは却ってカラヤンに対する、誤解を

招いているように思いました。先日、スミ・ジョーの映像を見ると、「帝王カラヤン」とか、

金の亡者とかいう皮肉や悪意に満ちた形容が全く当てはまりません。

尤も、アンチ・カラヤンは、世の中の他の「アンチ~と同様、頑固ですから、

あれはたまたま東洋人の女性だったから、甘かったのではないか、と思うかも知れない。

そこで、今回は同じDVDから、手兵・ベルリン・フィルではなく、ウィーン・フィルと、

ワーグナーの「タンホイザー」序曲を練習するシーンをご覧頂きます。


◆「タンホイザー」序曲(リハーサル)(1/2)

タンホイザー序曲は、ワーグナーの作品でも聴きやすい曲です。

三幕から構成される「歌劇タンホイザー」を上演されるときに、文字通り序曲ですから、

最初に演奏されるのですが、この曲自体、立派な音楽なので、しばしば、オーケストラコンサートで

独立して演奏されます。元来ウィーン国立歌劇場管弦楽団であるウィーン・フィルは、

今まで何度演奏したか分からないほどだと思いますが、それでもカラヤンは、非常に丁寧に

練習します。

ご参考までに、これがタンホイザー序曲ををワーグナーの弟子、ハンス・フォン・ビューローという人が

ピアノスコアにしたものです。


20100410tannhauser01


続く、「序曲」の最後の部分です。


20100410tannhauser02


主旋律は金管楽器が吹いていて、それはピアノ譜だとよく分かりませんが、ヘ音記号(低音部記号)の部分に出ます。

主旋律を演奏する管楽器を支える弦楽器、特にヴァイオリンはト音記号の部分で、ご覧のとおり、

延々と半音階的な音型が続きます。

兎に角、ご覧下さい。


TannhauserOvertureRehearsal(1/2)







これは、後半のトロンボーンを見るとわかるのですが、管楽器の数を倍にしています。

と言うことは、それだけ、弦楽器の人数も多めにしている。ヴァイオリンは少なくとも40人近いはずですが、

練習を始めてわずか6秒後、早くもカラヤンが問題点を発見し、説明します。

1拍目の前に既に弾き始める人たちがいる。

その結果まだ弾いていない他の人といっしょになって全体がグリッサンドのようになってしまう。

そして、もう一度同じ所を弾かせます。今度は、
どの小節でも最後の二つの音を速く弾く人がいて1拍目に早く入ってしまう。

これははっきりいている。

その結果1拍目にアクセントがついてしまうが、これは誰も 全く要求していないことだ。

あとで練習しよう。ここは全く正確に演奏されなくてはいけない。

トロンボーンが入って来たらそれまでよりも速くする


トロンボーンの音は素晴らしいですね。音程も完全に一致している。

すると、カラヤンはそれをちゃんと褒めることを忘れません。
いつも私が夢見ていたとおりだ 本当にすばらしい。

このように、全然威張ってる訳じゃないですね。

それにしても、あれほど大勢のヴァイオリンが弾いていて、アッというまに、
1拍目の前に既に弾き始める人たちがいる。

ことに気づき、更に、
どの小節でも最後の二つの音を速く弾く人がいて1拍目に早く入ってしまう。

その結果1拍目にアクセントがついてしまうが、これは誰も 全く要求していないことだ。

というのです。

私は正直に白状しますと何度聴いても分かりません。

信じがたい耳です。

「プロの指揮者なんだから、当たり前だろ?」というなかれ。多分カラヤンと同じ指摘が出来ない人の方が多い。


前述のとおり、ウィーン国立歌劇場管弦楽団は、今まで「タンホイザー」序曲など何百回演奏したか分からないほどでしょうに、

カラヤンはわざわざヴァイオリンだけ分奏(他のパートはひとまず音を出さず、そのパートだけ演奏させる)させて、

完璧を期します。その丁寧さに驚くとともに、天下のウィーン・フィルでも「タンホイザー序曲」のあの細かい動きを

全員で完璧に合わせるのが難しいのだ、ということに、変な表現かも知れませんが、ある種の「感動」を覚えます。

それは、一般的な言葉でかくならば、「音楽の厳しさ」「芸術の厳しさ」に対する私の「初歩的感動」です。


◆「タンホイザー」序曲リハーサル(2/2)とインタビュー。「邪魔をしてはいけない。」

ここは、曲の一番最後。まずはご覧下さい。


TannhauserOvertureRehearsal(2/2)





多分、1番目の映像を撮ったころから大分練習を(といってもプロですから、数時間でしょうが)重ねたのでしょう。

殆ど「出来上がっ」ているので、コーダの部分に関してカラヤンは細かい事は言いません。

ただ、最後の小節は確かに極めて重要です。カラヤンの言うとおり

ここで疲れてはいけないよ。最後の小節は通常のフェルマータ(音を長く伸ばす)より2倍長く。

直前、金管がクレシェンドし、
ドー・ミー・ソー・ドー!/ミー!

で、盛り上がりの最高潮に達していますから、最後の2小節は
ドー・ド、ドーーー!

「ミ」から、音程が下がりますが、ここで力尽きて音が弱くなったら台無しです。


そういう個別の曲の細かい部分に関して、マニアとしては興味が尽きませんが、

私が協調したいのは、
皆さん、リハーサルのカラヤンを見てどう思いましたか?「帝王」ですか?「暴君」ですか?

ということです。指揮者とオーケストラは、「支配者と被支配者」でも、「師匠と弟子」でもない。
2010年02月06日(土) 【音楽】オーケストラを本気にさせる指揮者ココログ

で、かつて岩城宏之さんが、カラヤンから指揮のレッスンを受けたときに、
君はものすごく表現しているが、君が振ると、ときどきオーケストラから汚い音が出る。力を抜きなさい。

(オーケストラを)ドライブするのではなく、キャリーするのだ。

と言われた話。また、赤川次郎のばっくすてえじトーク(音楽之友社)に、赤川次郎氏と

元(対談当時は現役)ベルリン・フィル、第一コンサートマスター、安永徹氏の対談で、
赤川氏がカラヤンのドキュメンタリービデオを見ていたら、カラヤンは自家用ジェット機を操縦しましたが、

始めに教官に言われたことは、あなたにとって一番大切なのは、飛行機が飛ぼうとするのを邪魔しないことだ

と言う言葉だったが、カラヤンは「オーケストラの指揮も同じで、オーケストラの邪魔をしてはいかんのだ」と言っていた、

と述べたところ、安永徹さんは、「それは、非常に本質を突いていますね。真髄ですね。」と答えています。

という部分があることをかきましたが、TannhauserOvertureRehearsal(2/2)の後半のインタビューで

まさにその部分をカラヤン本人が語っていることが確認できます。


「オーケストラが弾く邪魔をしない」ということは、「オーケストラに何の注文も付けない」という意味でないことは、

二つの映像から明らかです。何の音楽的要求もしないで棒を振っているだけなら、指揮者など要らないので、

指揮台にメトロノームで置いておけばいいのです。しかし、ドライブしようとしてはいけない。オーケストラが弾くのを

「邪魔してはいけない」。



この境地は、オーケストラで演奏したことも、ましてオーケストラを指揮したことが無い私には、

何となく観念的に分かったような気分になるものの、感覚としては、よく分かりません。

演奏する人だけがわかるのでしょう。


兎に角、カラヤンは、スミ・ジョーとの歌のリハーサルでもウィーン・フィルとのリハーサルでも

極めて穏やかです。晩年だから、というだけではないでしょう。


◆「タンホイザー」序曲。ザルツブルク音楽祭(1987年)におけるライブ(CD)。

さて、これは、1987年のザルツブルク音楽祭の為のリハーサルで、本番はライブCD、

ワーグナー・ガラ・コンサート / ヘルベルト・フォン・カラヤン, ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団です。

AmazonもHMVも「品切れ」「ご注文いただけません」で、Tower Recordにだけ、ありました。

そこに収録されている。本番での「タンホイザー」序曲をお聴き下さい。大変な名演です。


ワーグナー:歌劇「タンホイザー」序曲 ヘルベルト・フォン・カラヤン, ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団



Tannhause Overture



こういうのは買えるときに買っておいた方が良い。私も病気になる前なので、

経済的に余裕があり、たまたま買えたのですが・・・。

それでは、皆様良い週末をお過ごし下さい。

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