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2010.05.25

「口蹄疫」に関する覚書。今回の日本の処理は適正に行われたが何故か感染が広まる、という特異なケースだと専門家が言う。

◆はじめに。

今日のエントリーは記事を掲げてそれに対する私のコメントを付す、という形式ではなく、

たった今、自分が勉強して、初めて得た知識であり、それは多分、一般の人は殆ど知らない事だと思われるので、

解説というのはおこがましく、一義的には自分の為の覚書として記すが、読者の方にも参考になるであろう。

という趣旨の文章である。なお、これは、ビデオニュース・ドットコム インターネット放送局で、

獣医微生物学の専門家、明石博臣東京大学大学院農学生命科学研究科教授のコメントを全面的に情報源としている。


◆口蹄疫とはどのような病気か。

口蹄疫は、BSE(牛海綿状脳症)と異なり、人間には感染しない。神経的な症状も起こさない。

典型的な症状は、鼻や口からウィルスに感染し、動物の体内でウイルスが増殖し、それが口や鼻に戻ってきて、水疱が出来る。

症状としては水疱が出来るだけである。

水疱はやがて破けて潰瘍を形成するが、やがてかさぶたになる。かさぶたはやがて剥がれる。

それが一連の病状の経過である。

つまり放っておいても牛ならば早ければ1週間、長くても1ヶ月で自然に治る病気なのだ。


◆にも関わらず、何十万頭もの牛や豚を殺処分しなければならないのは何故か。

この病気が国際的に何故非常に深刻な病気だとみなされているかというと、日本よりもヨーロッパの何処かの国で起きた場合を想像すると良い。

口蹄疫は動物が罹る感染症の中でも、恐らくトップクラスの強い感染力を持っている。

つまり、アッというまに感染が広がるのである。

ヨーロッパの1つの国で発生し、その国で対策がとれずもたもたしていると、周辺の国にまで感染が広がる。

そうすると、口蹄疫に感染した牛や豚の肉を食べても人間には感染しないし、乳牛ならば、口蹄疫に感染した牛から取れた牛乳を飲んでも

人間には、害がない。しかし、病気に罹った牛の肉だ、牛乳だと知って、積極的にそれを食べようとする人はいない。

当然、口蹄疫感染が広まった地域の家畜の肉は売れなくなるし、牛乳も売れなくなる。

結果的に口蹄疫が広まった国の畜産業は壊滅状態となる。



要するに、口蹄疫自体が人体に有害なのではないが、口蹄疫が広まることにより、畜産業が被る経済的損失を

最小限に抑える為に、感染した家畜を殺処分する、というのが、処分の目的である。


◆今回宮崎の口蹄疫に対する措置は、国際的な安全基準に基づいて適切に実行された。

本件は半ば政治問題化している。感染拡大の為の初動対策が遅れたとか、GW中に農水相が外遊した事が

問題視されているが、実はそれは関係がない。


今回宮崎で発生した口蹄疫に対する対策は、家畜の国際的な安全基準OIE(国際獣疫機関)が定める指針を基に

農水省が定めた「特定家畜伝染病防疫指針」に基づいて適正に行われており、

過去の発生事例からの知見が凝縮されているその指針が、現時点での最善の対策であると考えられるにも関わらず、

たまたま感染拡大が止まらない。何故止まらないのか分からない。それが分かるぐらいなら、拡大を止められるのである。


宮崎県内で何がウイルスを運んでいるのか。常識的に考えれば、ウイルスが人の身体やクルマに付着したまま、移動することに

よって、ウイルスが拡散してしまったのだろうが、クルマのタイヤの消毒なども行っているのに、尚、感染が止まらないのは、

まったく「運が悪い」としか言いようがない。


OIE(国際獣疫機関)が定める指針に忠実に処置を実行したが、感染拡大が止まらないのは何故か、

ということは専門家でも分からない。それが分かるぐらいなら、予め感染拡大を防ぐことが出来た。

OIEの定める指針以上の事をするべきだったというのは、結果論である。後から批判するのは簡単だが、

具体的に何をするべきだったのかは、恐らく騒ぎが終息してからでなければ分からない。


民主党は、普天間飛行場の問題に加えて、口蹄疫の初動の遅れは農水相の責任だと野党から非難されているが、

こと、口蹄疫に関しては、これ以上の対応は無理というぐらいの事をしているが、不運にして、

今まで国際的に通用してきた指針が役に立たないような極めて特異なケースであり、

政治責任を問うのは適当ではない。


以上が明石教授の認識である。


私(JIRO)は、先週、

「10キロ圏の全頭殺処分決定=新たに20万頭、全額補償も―政府、口蹄疫で新対策」←国の対応が遅すぎたのかどうか、何とも言えない。

を書いたが、これはもっぱら法的な観点から書いたので、いささか見当違いのコメントだった。

本日ここに書いた、獣医微生物学の専門家による科学的見解こそ、参考にすべきである。

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コメント

猫野さん、こんばんは。

コメントをありがとうございます(「鬱陶しい」など、とんでもないことでございます)。

おっしゃるとおりでして、本稿を書くに際して参考にした、東京大学大学院農学生命科学研究科、明石博臣教授が、

インタビューにおいて、現在宮崎で流行しているウイルスに関しては、口蹄疫の診断に関して世界で最も権威がある、

国際獣疫事務局(OIE)の口蹄疫国際確定診断センターである、英国の「パーブライト研究所(Pirbright Laboratory)」に

データや試料を送って、判定結果が既に届いているそうで、それによると、今年の始めに香港で流行した口蹄疫ウイルスに

最も型が近いとのこと。 しかしながら、ウイルスがどのように運び込まれたか、に関しては、猫野さんご指摘のとおり、

輸入稲藁にウィルスが付着していた可能性があるほか、鳥が運んできたという仮説も可能だそうです。

口蹄疫ウイルスに鳥は感染しませんが、鳥のくちばしなり、体の一部にウイルスが付着した状態で日本に飛んでくれば、

「海を越えてウイルスが持ち込まれるルート」になり得るわけで、様々な仮説があり、これを突き止められれば、水際で

国内感染を今後防ぐ事も出来るでしょうが、今のところ難しいようです。

ただ、口蹄疫が、「放っておけば1週間から1ヶ月で治る」ことや、感染した家畜の肉を食べても人間には感染しない、という

類の情報は、私のブログなどではなく、マスコミが勉強して、啓蒙して欲しいことだと思いますし、

今日になって農水相が謝っていましたが、本エントリーで述べたとおり、日本は口蹄疫が発生した時の対応として

国際的に定められた手順を踏んでいるのに、広がってしまった特異のケースなのだ、ということを明らかにせずに、

なんとなく、野党自民党の尻馬に乗って、政府の責任云々というのは、メディアの対応として正しくないわけで

(要するに不勉強なんですな)、困った事です。

投稿: JIRO | 2010.05.26 01:07

JIROさん

こんばんは。
いつも鬱陶しくコメントを残し申し訳ありません。

ご存知かもしれませんが、2010年5月23日付の日本経済新聞に「感染が予想される経路」として画像が貼られていました。
「人間や動物がウィルスを運ぶ」と表題がついています。

人間や藁などにウィルスが付着して運ぶ⇒動物に感染して運ぶ⇒ウィルスが付着した人間が動物に接触して感染⇒口蹄疫ウィルス

というものです。

その記事によりますと、

今年に入り香港で発生したウィルスと特徴的な部位の遺伝子が99.22%一致していた。
それでも香港から運ばれて来たと断定することはできない。
しかし、海を越えて持ち込まれてきたという見方を農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所はしているようです。

日本の稲藁自給率はどの程度なのか、輸入稲藁にウィルスが感染していなかったのか気になるところです。

投稿: 猫野 | 2010.05.25 23:13

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